【ダイハツ ミライース 新型】クラスで5番目くらいの人をどうやって目立たせるか‥‥エクステリアデザイナーインタビュー

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ダイハツ ミライース デザインスケッチ
ダイハツ ミライース デザインスケッチ 全 23 枚 拡大写真

ダイハツ『ミライース』がフルモデルチェンジし、2代目に進化した。そのエクステリアデザインは、先代よりも安全・安心感を強調し、フロント部分をしっかりと見せるようにしたほか、Cピラー周りにも特徴を持たせている。そこで、担当デザイナーにそのポイントを聞いた。

【画像全23枚】

◇社内での温度差に驚き

---:最初にミライースのデザインを担当することが決定した際、どんなことを考えましたか。

ダイハツ工業デザイン部デザイン室主任の上畑顕雄氏(以下敬称略):実は、ミライースの立ち位置が社内でも温度差があるなと感じていました。

先代ミライースは“第三のエコカー”といってかなり市場を牽引してきましたので、ミライースというクルマは先進感が一番の売りだろうという人がいました。一方で、ミライースは低価格で低燃費という裾野を広げるようなクルマだという人もいる。人によって受け止め方が全く異なっていると感じていたのです。なので、次のミライースはどうなるべきだろうとすごく考えました。

先代ミライースはリーマンショックの後、震災もあり世の中がエコブームに流れていたタイミングに上手くマッチして登場しました。しかし今の時代、“エコカー”というキーワードだけではなかなか市場を牽引出来ません。市場ではもう少し強さや安心も求めているので、そこを表現したいと思ったのです。

あるときデザイナー同士でブレストしていて、こんな話が出ました。ミライースが学校の生徒だとしたら、クラスで何番目くらいにいるんだろう。一番の優等生ではないですが、かといって落ちこぼれでもない。ではどれくらいの立ち位置にいて、どのように学級の皆に認められているのか。ミライースはクラスで5番目ぐらい。すごく賢くもないが、でも先生にはある程度信頼されて、友達も多いという子かなという意見にまとまりました。

その人があるとき転校して来て、皆が「何々?」と興味津々で振り向いて目立っていましたが、徐々に学校に馴染んで進級して次いくにつれ、普通の人になっていったというイメージです。そこでもう一度目立つにはどうしよう。夏休みに金髪にするのは違いますし、すごく真面目で、優等生もいる中でどう目立たせるかを考えたのです。

◇安心を意識したデザイン

---:それでは、新型ミライースのデザインで意識したことは何でしょう。

上畑:低燃費&低価格を柱に、今回は「安心」というところをかなり意識して開発しました。軽自動車で特にネガティブに思われていることのひとつに、ぶつかったら不安だというものがあります。そこでデザインとしては、フードの最先端を出来るだけ前まで持っていくことでフードを長く見せ、クルマとしてのシルエットをしっかり感じさせることで、安心感につなげたいという思いでデザインしています。

先代ミライースは少し丸いイメージがありましたが、時代の進化もありますので、新型ではよりしっかり力強く見えるように、ショルダーラインをしっかり出すことで、がっちり見えるようにデザインしました。

---:先代のデザインはすっきりしたイメージがありましたが、そういうところが逆に弱さに見られていたということでしょうか。

上畑:いえ、そうではありません。その時代はそれで良かったのですが、時代が進化して周りのクルマも大きくなりました。そういうところを踏まえてしっかり見せたいと考えたのです。

今回の特徴としては、Cピラーからリアウインドウにかけて、空力の効果も見込んで少し絞り込んでいます。その部分を上手く使って、リアフェンダーをしっかり張り出させることでスタンスを良く見えるようにしました。

---:新型では先代よりも顔つきが鋭くなったように見えますね。

上畑:LEDヘッドランプを採用しましたので、それをどうやって新しく見せるかということを考えました。今回のLEDヘッドランプは、真ん中に基板が一枚入っていて上下に別れており、LEDヘッドランプを使いつつも、安く抑えています。そういった処理を上手く見せようとしています。

確かに顔つきに関しては、社内でもきついという声もありましたが、例えば『フィット』や『アクア』など少しキリッとした顔つきのクルマであっても、女性も普通に乗っていますので、このくらいのデザインでも時代にマッチしていると判断しました。

基本的にパッケージングはほとんど変わっていませんので、どう進化を見せるか。そういう点で今回のLEDヘッドランプは相当顔つきには影響を及ぼしています。

---:さて、安心を感じさせるデザインということですが、そのためには色々なやり方があると思います。先ほどお話のあった以外で何か工夫をされたところはありますか。

上畑:今回特にこだわったのは、ドアのプレスラインをすごくシャープにして、強く見せていることです。ドアの厚みでも安心や安全は当然感じられますので、ドア周りのサーフェスや、小さいRを作るために、生産技術部門に最初から関与してもらい、作り上げました。どうしても軽自動車というのは薄く“ぺらっ”と見えがちなので、どうしたら厚みが感じられるのか、トライアンドエラーをしながら作り上げました。

◇お気に入りはリアビュー

---:このクルマのお気に入りのビューがあれば教えてください。

上畑:リアビューが気に入っています。先ほどお話しました空力の絞り込みもありますが、それ以外に、先代のバックドアは鉄板が1枚でウインドウの左右にボディ色が入っていました。そのことから商用車のように見られていたのです。

そこで今回は左右に黒のパーツを入れています。実際はガラスを絞っていて左右方向が狭くなっているのですが、視覚的には逆にワイドで広がって見せています。リアコンビの光らせ方も先代はJラインだけでしたが、今回は上側も光らせて幅広く感じさせるようにしています。

とにかくリアフェンダーのショルダー部分はこだわりがありましたので、なんとか実現したかった。今までの軽自動車では見られないシルエットだと思います。

---:苦労したことはありましたか。

上畑:はい、パッケージングが基本的に変わらないので、どう一新したように見せるかに苦労しました。例えば全高を上げるとか下げるとか、Aピラーを立てるなどが可能であれば、変化した見せ方はいっぱいあります。しかし今回は、基本的に人が座るポジションから全高、Aピラーの位置などほとんど変わっていません。そういったことを踏まえ、どう新しく見せるかということに一番苦労しました。

具体的には、Cピラー周りのボリュームもそうですし、ルーフのピーク位置を変えたのも効果が出ていると思います。先代のミライースのルーフラインピークはBピラーあたりで、結果として丸みを帯びた形状に見せていました。しかし今回はルーフラインを伸びやかに見せたかったので、ピーク位置を前に出してドライバーの頭あたりにして、そこから後ろを長く見せるようにしています。更に、先代にはなかったスポイラーも効果的に使っています。

またベルトラインのウェッジを少し弱めました。後ろを下げ、前側をわずかに上げることで、若干ですがベルトライン自体も上がっています。これにより、全体のつながりをより長く強調しているのです。こういったことで、全体のシルエットを大きく変えて見せているのです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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