ボッシュによるスマートモビリティ社会への探求…ワイヤレス充電、データマイニング

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ボッシュのレニンゲン研究センター
ボッシュのレニンゲン研究センター 全 33 枚 拡大写真

ボッシュは、グローバルのメディアを招いたプレスツアーを開催。ドイツにあるレニンゲン研究センターを公開した。

同センターは、2015年10月に開所。フォルクマル・デナーCEOが「ボッシュ版のスタンフォード」と位置づける、先進研究開発の場だ。電気工学、機械工学、コンピューター科学、分析、化学、物理学、生物学、マイクロシステム技術など、さまざまな分野の科学技術研究者が集結し、現在1400人の職員が働く。オープンセレモニーには独メルケル首相も訪れている。

敷地内にはメインビルに加え、10棟の研究施設が備わる。建物は通路で繋がれ、移動を容易にし互いに交流が活発に行えるよう配慮された設計。西側には化学・物理学の技術研究・分析施設、東側にはコンポーネントシステム、製造、モビリティ、ビークルワークショップなどがある。新規研究分野は着々と増えており、現在建設中のエリアもあった。案内する施設担当者は「常に変化しているキャンパス」と話す。

スマートモビリティチャージの可能性

ビークルダイナミクス研究棟では、Eモビリティのワイヤレス充電に関する開発が行われている。ケーブルを使用せずに充電を行い、EU地域のEVの充電をいかに簡略化するかを研究・開発している場所だ。

開発に使用されていたのはBMWの『i3』。インダクションプレートが床と車両のアンダーボディに設置されており、非接触充電を行う。15cmほどのずれが生じていても充電可能だが、センサーを搭載しているため、どのくらい車両を動かせばいいかはディスプレイでドライバーに知らせてくれるという。自動運転車、カーシェアリングカーでも使用できるよう、汎用可能な機構を搭載している。プレートは7kWのエネルギーを送電することが可能で、重さは約7kgだ。

充電中は、2枚のプレートの間に熱と電磁波が発生するため、センサーによって車体下に猫などの動物が入ってしまった場合、感知してスイッチをオフにするよう設定されている。もちろん乗車している人間にも害はないよう配慮されていおり、例えばペースメーカーを使用している人でも問題ないという。

開発担当者のフィリップ・シューマン氏によれば、「充電はモビリティとエネルギーの世界の接合点。このシステムはチャージ系統を安定させることに貢献する。電力需要の低い時間帯、太陽電力余剰の際、夜間の電気料金が安価な時間帯などを選び、充電を行う機能を持たせることも可能だ」とのこと。

気になるのはコストだが、「車両側のコンポーネントは、オンボードケーブル使用時の価格帯と比較可能な範囲になると考えている。インフラ全体の試算は、まだ開発段階なので現時点では行っていない」(シューマン氏)という。量産車に搭載する計画はまだないが、例えばメルセデスベンツ『Sクラス』のような高級車のオプションとして、年内か来年には市場に投入する見込み。「2030年にはこのようなシステムがメインストリームになると考えているので、いずれコンパクトカーにも展開されるだろう」(シューマン氏)。

まずは、家庭用(自宅ガレージでの充電)での普及からスタートし、その後公共インフラにも展開したい考えだ。また、同システムは電力エネルギーを双方向に移動させることが可能なため、家庭用パワーステーションとしての利用も期待される。

データマイニング活用で効率化

レニンゲン研究センターでは、ビックデータを活用したデータマイニングの研究も進められている。昨年は、リペアショップやコネクテッドカーなどから計10万TBもの情報が集まった。

プレゼンテーションでスクリーンに映し出されたのは、21メガピクセルの画像。これはボッシュの自動車技術(赤い点)とOEM(青い点)の情報からなるデータインタラクティブのパワーウォールだ。とあるパーツでトラブルが起こると、どのOEMに影響を与えるかが関連付けられている。このようなデータを利用することにより、過去実績に基づく予測、類似点の発見、構造分析を行うことが容易になる。

データの分類と推移によって、機能の依存性を分析し、障害を発生しやすいケースを振り分けることも可能だ。データマイニングによる予測メンテナンスを行うことで、現場での目視確認作業の負担を軽くしたり、故障を未然に防いだりする。“どのようなボッシュ製品が使用されており、現場で何が起きているか”をモニタリングしているため、開発の効率化や車両の安全性にも貢献しているという。ロードプロファイルによって、車両の特徴を分析し、パーツにかかる負荷を把握することもできる。必要であれば、異なるパーツを使用するなどの応用もきく。

データは安全性を保った上で、独自のシステムにより研究開発に途上にあるものに関しては機密性を持たせ、一方で透明性のあるオープンな状態も両立させているという。

協力:ボッシュ

《吉田 瑶子》

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