古くから東海道を旅する者にとって、東の箱根と並び、西の鈴鹿峠は難所だったようである。
時代は移り、自動車での移動では、名神高速道路や、新名神高速道路が整備。国道1号線で鈴鹿越えをするという人はもう多くないのかもしれない。しかし、伊勢志摩路への道を分ける亀山から、琵琶湖のほとり草津へ通じるこの道は、信楽なども近く、日本の長閑な懐かしい風景や、旧宿場町の雰囲気もところどころに残されており、ドライブにおススメのコースである。
亀山から鈴鹿峠を越えて少し降りてきたところに「道の駅あいの土山」はある。近畿地方、滋賀県の道の駅としては第一号だそうだ。今では道の駅の数も増え、新しい道の駅に比べると規模は小さいが、地元の産物を紹介し販売したりするお店や、地元の風土を知ることができる資料が置いてあったりと、通りがかっただけでも地域を感じることができる。
ところで「あいの土山」の「あい」とは何を意味するのか。山間の「あい」だとか藍染の「あい」だとか、鮎がなまって「あい」になった、といった諸説が紹介されている。
このあたりは土山茶の茶所である。また滋賀県は米の産地として近江米で有名だ。あいの土山はそんな近江米と土山茶が楽しめる道の駅だ。
高速道路のサービスエリアなどにもある、ボタンを押すとお茶が出てくるサーバーのお茶がその「土山茶」なのだ。サーバーのお茶では味の違いはそんなに分からないかもしれない、と思いつつ一口飲むと、旨味がしっかり感じられ、普及しているサーバー用のお茶とはものが違うことにたちまち気づかされた。
食堂で出されるご飯は近江米だそうだが、早朝、食堂が開く前に立ち寄った筆者は、先に開店していた売店で近江米のおむすびを発見。土山茶とこのおむすびで朝ご飯とした。笹にくるまれたシンプルな塩むすびは小ぶりなものが三つ入っている。案配とは塩梅であって塩加減のことが語源の一つだそうだが、この塩むすびの「あんばい」もなかなか。もっちりとたかれたごはんと、噛むほどに米そのものが持つ甘みを存分に味わうことができる。
外のベンチでその土地のお茶とごはんだけの朝ごはんを食べると、昔の旅人も、ここを通るときにこんなものを食べたのだろうか、と思う。風土に触れるばかりではなく、歴史に思いを馳せる。こういうふれあいこそがクルマでの旅の魅力ではないだろうか。