日本の特撮との違い…映画『パワーレンジャー』坂本浩一監督【インタビュー】

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映画「パワーレンジャー」坂本浩一監督インタビュー 「日本の特撮との違いを楽しんでほしい」
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アメリカのスーパーヒーロー映画『パワーレンジャー』が、満を持して日本に上陸。7月15日より全国ロードショーを開始する。
『パワーレンジャー』とは、日本の「スーパー戦隊シリーズ」をアメリカでローカライズして制作されたTVドラマシリーズ。1993年に第1作『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』が放送され、以降日本の「スーパー戦隊シリーズ」に準拠して現在に至るまでシリーズを継続している。今回の映画は第1作のストーリーをベースに構成。3DCGを駆使した画面作りで、大人も楽しめる一作となっている。

アメリカ現地で『パワーレンジャー』シリーズに初期から携わり、近年は日本でも多方面に活躍しているのが坂本浩一監督だ。『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009年)で日本の監督デビューを果たし、以後は『仮面ライダーフォーゼ』(2011年)、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013年)など、数多くの作品を手がける。『パワーレンジャー』シリーズの監督経験も豊富な坂本氏の眼には、今回の映画がどのように映ったのだろうか。映画の楽しみ方はもちろんのこと、坂本監督の作品作りに対する思いや展望について、お話を伺った。
[取材・構成=奥村ひとみ]


映画『パワーレンジャー』
2017年7月15日(土)全国ロードショー
http://www.power-rangers.jp

■オリジナル要素の取捨選択

――最初に『パワーレンジャー』が劇場版としてリブートされると聞いた時、率直にどう思われましたか?

坂本浩一監督(以下、坂本)
「とうとうこの日がきたか!」と思いましたね。『パワーレンジャー』は、1993年にアメリカで放送を開始してから早い段階で2度ほど、映画版が制作されました。その後も映画を作る話は上がっていましたが、次のタイミングは『パワーレンジャー』が親子二世代で楽しめるキャラクターになる頃がいいんじゃないかと言われていて。僕がアメリカで作品に関わっていた頃からその話はあったので、『パワーレンジャー』が二世代キャラになるまで続けられたらいいねというのは目標のひとつでした。

――たしかに最初のシリーズを楽しんでいた子どもたちが、ちょうど親世代になっている折ですね。

坂本
思い返すと僕らが『パワーレンジャー』を始めた頃は制作費がものすごく少なかったですし、「一体誰が見るんだ?」と言われていました。それがフタを開けてみると社会的現象になるくらいの大ヒットになり、時を経て大規模な映画が作れるメジャーブランドになったと思うと感慨深いです。その分、僕も年を取ったなぁと思いますが(笑)。

――映画をご覧になっていかがでしたか?

坂本
いい意味でアメリカナイズされていると思いました。基本的な流れは、チームワークで悪と戦うという日本のスーパー戦隊の定番を受け継いでいるのですが、本作はチームになるまでの過程に重きを置いています。葛藤しながらも周りと協和を取り、自覚を持ってヒーローになっていくというジュブナイルなドラマが深く描かれているのは、ヒーロー作品としては斬新な切り口です。アメリカにはMARVELやDCを代表としたヒーロー映画がたくさんありますが、『パワーレンジャー』ならではの色がきちんと出ていて新鮮に見られました。

――坂本監督が「すごい!」と思ったシーンを教えてください。

坂本
やっぱりゾードンがいる基地の中の描写ですね。TVシリーズの時は予算の都合で、基地は黒い布を貼って豆電球を付けただけのものでしたし、ゾードンの顔は役者を使わず、頭を剃ったスタッフの顔をはめ込んでいたんです。それが本作ではフルCGで壁の中を動き回り、表情もとても豊かになっています。アルファ5にしても、当時はコスチュームだけ作ってそれを動かしていましたが、立派と言うのもおかしな話ですが、とても豪華に表現されていて感激しました。基地のシーンを最初に見た時、「基地の中ってこうだったんだ!」と思いましたね(笑)。昔の『パワーレンジャー』を知っている人はそういう視点でも楽しめると思います。

――TVシリーズへのリスペクトを感じた場面はありましたか?

坂本
映画の中で、TV版『パワーレンジャー』の主題歌である「GO GO POWER RANGERS」が使われています。合体ロボが出動する時に流れるのが定番で、アメリカ人なら誰でも知っているくらいポピュラーな曲です。この曲がかかるというのはオリジナルへのリスペクトというか、今回リブートするうえで元祖のいいところを受け継ぎながら、今のティーンエイジャーにどう訴えかけるかというところでの取捨選択だと思いました。

――なるほど。ビジュアル面やドラマ性からしても、今回の映画のターゲット層はTV版よりも上の年齢層ですからね。

坂本
たとえばスーパー戦隊の名物のひとつに“名乗り”がありますが、これは普通のアメリカ人の感覚からすると、おかしな空間にしか見えないんです。実際に僕も「この時、敵は何をやっているの?」とよく質問を受けました。子どもの場合は“eye candy”といって、要するに「カッコよければ楽しく見てもらえます」ということで理解してもらったんですけど、今回の映画でTV版をリスペクトしすぎては、逆に観客はどう見ていいのか分からなくなると思うんです。きちんと元祖の要素を残しながらも、観客がリアリティを感じられるように作品をうまくまとめているな、という気がしました。

■子どもたちの憧れのアイコンを作りたい

――アメリカには既に、MARVELやDCに代表されるスーパーヒーローが多数存在しますが、パワーレンジャー独自の魅力とは何だと思いますか?

坂本
一番に挙げられる点は、5人のチームワークを描いているところですね。パワーレンジャーがアメリカの地に降り立った当時は、ヒーローは単体という例が多かったですから、そこは新鮮なポイントだったと思います。またTV版の第1作はハイスクールが舞台だったので、どこにでもいるような、つまりは自分もなれそうな気がするヒーローというのも親近感を持ってもらえたところでしょう。それからもうひとつ、アクションシーンの演出に格闘技やアクロバットを取り入れたのが、アメリカの子どもたちの憧れを作ったのだと思います。『パワーレンジャー』はもともとマーシャルアーツ(武芸)の魅力を押し出す方針だったので、キャスティングの段階で本当に格闘技や体操ができる俳優を集めました。実際、シリーズ放送後にはアメリカの格闘技人口がすごく増えて、最近アメリカで若手のスタントマンと話した時も「パワーレンジャーを見て格闘技を始めた」と言う子がいましたね。

――『パワーレンジャー』はアメリカ格闘技ブームの火付け役でもあったんですね。

坂本
少なからずアメリカ社会へ影響を与えたと思います。近年の日本は、空手や格闘技を習っている子どもがそんなに多くないようです。でも僕らの世代が恵まれていたのは、子どもの頃にジャッキー・チェンや真田広之さんのような、憧れのアクションスターがたくさんいたんですよ。今の日本では特撮ヒーローはあくまで子ども向けのコンテンツで、憧れる対象とはちょっと違うところにあると思います。もちろん子どもたちは「カッコいい」と感じていますが、それは子どもの時分の通過点に過ぎないと位置付けです。アクションに通じる格闘技や体操は、やっぱり憧れる存在がいて始めるものなので、今の日本にそのような憧れの対象になるアクションスターがいないのは厳しい所ですね。僕らが作っていかなければならないと思います。

――ご自身が監督される作品には、子どもたちの憧れのアイコンを作る思いが込められているのでしょうか?

坂本
もちろんです。僕が今この仕事をしているのも、9歳の頃にジャッキー・チェンの映画を見たのがきっかけですからね。僕の作品を見て、「将来こんなことをやってみたい」と思ってもらいたいものです。この年齢になってくると、次世代へ伝えていくという役目も多少感じるようになってきます。見た人に何かしらの影響を与えられる作品であり、かつこの業界の次に繋がっていくものであれば、と考えながら作品作りに取り組んでいます。

――坂本監督が特撮作品を作る時、演出面ではどういったところで“特撮らしさ”を意識されますか?

坂本
大事なのはメリハリで、僕はいつも作品をリズムで考えています。単調なシーンが続かないように、名乗りや爆破など頭の中でシークエンスのリズムを組み立てて、子どもたちが最後まで楽しく見られるかどうかを計算しています。子どもに限らず、人間は何を見るにせよ単調なものだと飽きてしまうので、視覚からも聴覚からもテンポを作って刺激を与えられるようにと考えていますね。

――視覚や聴覚からテンポを変えるというのは、具体的にはどのような演出ですか?

坂本
コミックブック原作の作品だと、画面の色のコントラストを効かしたりエッジを持ち上げたりというかたちで、視覚から世界を作っていく手法があります。非現実的な世界が舞台になる場合は、見た目で「こういう世界観です」と提示をしたほうが、見る人もすんなり入ってこられると思うんですよ。視聴者は「なんか違うなぁ」と思った時点で気持ちが逸れてしまうので、作品の世界にグッと捕まえるためにも色味から調整するのは僕の好きなやり方ですね。たとえば『仮面ライダーフォーゼ』は登場人物が着る学生服がすごく青いんですが、その他の部分も極端に強調するといった工夫を散りばめて、「この世界観ならアリ」と無意識下で納得してもらえるようにしていました。

――盛りだくさんにお話し頂きありがとうございました! 最後に映画『パワーレンジャー』の魅力を教えてください。

坂本
違う国、違う文化で生きている人たちが、同じ作品を消化する時の楽しみ方の違いが表れています。日本で生まれたスーパー戦隊がどんなふうにアメリカナイズされたか、楽しみにしていてください。「日本の特撮とここが違う」ということではなくて、逆にその違いを楽しんで見てほしいなと思います。

映画「パワーレンジャー」坂本浩一監督インタビュー 「日本の特撮との違いを楽しんでほしい」

《奥村ひとみ》

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