「2代目」の特徴は?…京王電鉄の新型車両「5000系」を見る

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9月29日にデビューする「2代目」5000系。先頭部はシャープな形状を採用した。
9月29日にデビューする「2代目」5000系。先頭部はシャープな形状を採用した。 全 50 枚 拡大写真

7月19日に報道公開された、京王電鉄の新型電車「5000系」。京王としては16年ぶりの新型車両であるとともに、5000系としては「2代目」の車両になる。「2代目」は京王初の技術や設備を多数採用しており、「初代」同様に京王を代表する車両になりそうだ。

京王線はかつて、道路に軌道を敷設した区間が多く、架線電圧も路面電車での採用例が多い600Vだった。架線電圧が一般的な都市鉄道と同じ1500Vに引き上げられたのは、1963年8月のこと。この電圧に対応する車両としてデビューしたのが「初代」5000系だった。

京王は架線電圧の引上げと「初代」デビューにあわせ、新宿~東八王子(現在の京王八王子)間の特急運転を開始。これにより大幅なスピードアップを図った。このため、「初代」は京王にとってエポック・メーキングの車両となった。

これに対して「2代目」5000系は、京王が中期経営計画(2015~2017年度年)に盛り込んだ「座席指定列車」に対応した車両として計画された。同社が本格的な座席指定列車の運行を計画したのは、これが初めて。「初代」と同様、京王の鉄道経営の転機となる可能性を秘めている。製造はJR東日本グループの総合車両製作所(J-TREC)が受注した。

■車体はJ-TREC「sustina」を採用

編成構成は、モーター付き6両(2・3・5・6・8・9号車)とモーター無し4両(1・4・7・10号車)。このうち2・3・6・8・9号車に集電装置(パンタグラフ)を設置した。車体は編成両端の先頭部がFRP製で、それ以外の部分はステンレス製。J-TRECのステンレス車両製造技術「sustina」構体を採用し、レーザー溶接により外板の美観向上と車体強度の向上を図った。

先頭車両は約500mm長くし、従来の京王線の車両にはなかった「シャープな正面形状」を採用した。これにより既存車両との違いを明確にしたという。先頭部の形状が変わったことに伴い、乗務員室の機器構成も見直している。正面の色は黒を採用することで「スマートな列車」を表現した。

「スカート」と呼ばれる下部の覆いは、立体的な形状を採用。「京王レッド」と呼ばれるピンクがかった赤色に塗ることで「魅力的なデザイン」にしたという。ライト類はLEDを採用。ヘッドライトとテールライトを囲むように配したライト(装飾灯)も設け、先頭部の「シャープ」なデザインを引き立たせたという。

室内は、京王線の沿線にある高尾山の「木々の深いブラウン」と、「繊維の街」として知られる八王子の絹糸をモチーフにデザイン。これにより「華やかな室内空間」を表現し、「上品さ」を演出したという。室内照明は調光機能付きのLED。座席指定列車運行時は暖色、それ以外の列車で運行する時は白色などというように、利用シーンに応じて車内を照らす色を変えるとしている。床の詰め物は材料を変更し、これにより車内の静粛性を向上した。

■ロング・クロス転換は「楕円」回転

座席は東武鉄道や西武鉄道の着席保証・座席指定通勤列車で運用されている新型電車と同様、ロングシートとクロスシートの両方に転換できる「L/C座席」を横1列につき2+2席配置した。ただし、各車両の端の座席はレール方向の固定式ロングシート(3人がけ)を設置している。クロスシート運用は2018年春に運行を開始する座席指定列車で行い、それ以外の列車はロングシートで運用する。

京王の関係者によると、5000系のL/C座席はコイト電工製で、同社がL/C座席を製作したのは初めて。他社車両のL/C座席は円回転によってロング・クロス転換を行うが、5000系のL/C座席は楕円(だえん)状に回転することで転換速度を高速化したという。L/C・固定ロングともに、ヘッドレストと肘掛けを設置。一人あたりの座席幅は、L/Cが従来車より10mm広い460mm、固定ロングが55mm広い505mmとした。

また、1席につき1口の電源コンセントが設けられた。L/Cは座席の下部、固定ロングは肘掛けの部分にコンセントを設けている。コンセントを使えるのはクロスシート運用時、つまり座席指定列車だけで、ロングシート運用時は固定式ロングも含め、コンセントは使えないようにするという。ドア付近と座席を区分する袖仕切りは大型ガラスを採用した。

このほか、京王初の装備として無料公衆無線LAN、ナノイー搭載の空気清浄機を設置。放送装置は車内アナウンスや座席指定列車使用時の到着前メロディーを聞き取りやすくするため、高音質ステレオ装置を採用した。全車両に設けた車椅子・ベビーカースペースには腰当てを設置した。画面案内装置はドア上のほか天井部にも枕木方向に設置。1両あたりでは28画面になる。枕木方向の案内装置には防犯カメラも設置した。

■車上蓄電池システムで省エネ化

モーターは全閉内扇型の三相誘導モーター、制御装置はSiCハイブリッドモジュールのVVVFインバーター装置を採用した。また、京王の車両としては初めて車上蓄電システムを搭載。ブレーキ時に発生する回生電力を蓄電池に充電し、電車が走行する際の電力として使用することで、使用電力の低減を図った。災害などにより架線からの電気供給が切れた場合も、蓄電池にためた電気で自力走行できるようにした。

列車情報管理装置(K-TIMS)は、都市圏の通勤電車で実績のあるTIMSをベースにした構成。アプリケーション機能の二重化による冗長性を確保した。運転台表示パネルはメーター表示器二つとK-TIMS一つの3画面構成。相互バックパックによる表示機能の冗長性を確保するとともに、乗務員支援機能も充実させた。

「2代目」5000系は、今回公開された編成を含む50両(10両編成5本)が本年度中に順次完成する予定。営業運転は9月29日から始まる予定だが、当面はロングシートで運用される。クロスシートでの運用は、2018年春から運転を開始する座席指定列車で行われる。座席指定列車は、夜間の帰宅時間帯に新宿発~京王八王子行きと新宿発~橋本行きが運行される予定だ。

《草町義和》

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