【オートモビルカウンシル2017】プリウス 20周年はトヨタEVシフトの節目か

自動車 ビジネス 企業動向
会場に展示中のガスタービンと電気モーターによるハイブリッド車(1977年)
会場に展示中のガスタービンと電気モーターによるハイブリッド車(1977年) 全 10 枚 拡大写真

トヨタは幕張メッセで開催されている「オートモビルカウンシル2017」のプレスカンファレンスで、同社の内山田竹志取締役会長が、『プリウス』開発20周年を迎えてのトークセッションを、自動車評論家の山口京一氏をゲストに迎えて行った。

内山田会長は「1997年に21世紀の車を作ろうと始まったプリウスのプロジェクトは、エンジンとモーターを搭載するという無駄にも見えるコンセプトに内部でも反対意見はあった。しかし月販1000台を目標に発売を初代プリウスを発売したら、すぐに増産となった。環境性能で車を買うというスタイルはむしろユーザーが作ったものだと思う。」と口火を切る。

山口氏は「プリウス発売後のロスアンゼルスモーターショーでは、メーカーのブースとは別に、来場したオーナーたちが勝手にプリウスの展示を始め、出発地から会場までの燃費やガソリン消費をアピールしていた。内山田氏は、プリウスの発表のとき多くの専門家や業界関係者を前に『私はgeekやnard(オタクや変わり者)と言われてもよい』と発言していたが、プリウスの価値はユーザーが先に理解していたのだと思う」と返す。

内山田会長によれば、この「geekやnardでもいい」という言葉は自分がオリジナルではないそうだ。評論家たちの「プリウスなんかに乗るのはgeekだ」という発言に対するあるオーナーの声だったそうだ。そのオーナーは「それでも私は誇りに思う」とも述べていたという。

山口氏の「プリウスは新しい文化、というより文明を作ったといえる。作っただけでなく進化もしている。創業社長は自動織機という世界でも希少な機械を発明し、技術を海外にライセンスした資金で自動車を開発した。トヨタには新しい技術を生み出すDNAがあるように思うが」という質問に、内山田会長は、「ブレークスルーとチャレンジは常に行っている。初代プリウスはご存知のように製品としては赤字の状態で販売を開始したが、4代目までにコストダウンと性能強化を進め、現在の原価は当時の1/4までになっている。技術で国や社会に貢献するという想いはみんなが持っている」と答えた。

これからのクルマづくりについて内山田会長は、まず若手を育てていることを強調した。20代の優秀なエンジニアが育っており、織機、ガソリン車、ハイブリッド、燃料電池という技術の流れは続くとし「自動車の次が人工知能なのか何かはわからないが、これからは若い世代に任せ、電動化も見据えたプリウスを超える車を作ってほしいと思っている」と語る。

トヨタのハイブリッド車は累計で1000万台を突破したという。5代目プリウスの開発については決まっていないそうだが、プロジェクト20周年を迎えた年のプレスカンファレンスで「プリウスを超えるクルマ」という発言は、開発を指揮した内山田会長としては、ハイブリッド車の節目を自覚し、区切りをつけたようにも思える。

ぶら下がりでは「EV化の波の加速を強く感じている」とも述べている。折しも、カンファレンス当日の8月4日はトヨタがマツダへの出資が報じられている。EVを共同で開発するための提携ともいわれているものだ。トヨタのEVシフトはすでに始まっている。

《中尾真二》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 元世界王者レイニー、34年ぶりのラグナセカを特別なヤマハ『XSR900 GP』で駆け抜ける
  2. ポルシェデザインのタワマンは最高72億5000万円、アジア初バンコクの物件が日本発売へ
  3. 劇的に流麗! アウディ『Q3スポーツバック』新型に備えよ
  4. タイプRとホンダウイング、ホンダ公認の保冷ボトルホルダー2種が登場…夏のドライブやツーリングのお供に
  5. レクサスの新境地を開くか...『ES』に「スポーツクロス」導入の噂
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  3. リチウムイオン電池の寿命を2倍に、矢崎総業、バインダフリー電極材料を開発
  4. トヨタや京大、全固体フッ化物イオン電池開発…従来比2倍超の容量達成
  5. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
ランキングをもっと見る