【スズキ SX4 S-クロス 試乗】これがスズキのいわゆるフラッグシップ?それとも…中村孝仁

試乗記 国産車
スズキ SX4 S-クロス
スズキ SX4 S-クロス 全 34 枚 拡大写真

似たような名前の『SX4』と、『SX4 S-クロス』は似て非なるクルマである。SX-4は『スイフト』をベースにイタルデザインのボディをデザインした、SUVとハッチバックのクロスオーバー的モデル。これに対して新しいSX4 S-クロスは、『エスクード』と共用のプラットフォームを使った完全なるSUVである。

そして、エスクードとの違いについてスズキの開発者に尋ねると、SX4 S-クロスは全長でエスクードよりも大きく、(全幅は小さいが)言わばスズキ最大のSUVで、よりファミリーやアーバンユースを意識したモデルであるのに対し、エスクードの方は以前より、ワイルドでオフロードを意識したモデルに仕上げているということだった。

しかしそうは言うものの、今回の変更では幅広の17インチタイヤを装着し、最低地上高を従来より20mm高くしたこともあって、印象的にはエスクードのジャンルであるオフロードを意識したモデルに変貌。さらにフロントフェイスを変更したことで、よりSUVとして、またオフロード系を強く意識したモデルに仕上がっている印象を受け、エスクードとの市場の食い合いを外野の人間であるにもかかわらず、心配するモデルになっている。サイズがこちらの方がデカいなら、フラッグシップモデル?かと思いきや、お値段的にはやはりエスクードの方が高いから、ますます混乱するわけである。

エンジンは従来同様1.6リットル直4の1グレードのみで、6ATのトランスミッションと組み合わされる。この点はエスクードに新たに1.4リットルターボが導入されたことで差別化が出来ているが、1ユーザーとして見た場合は同じようなSUVが2車種ある印象は避けられない。

全長の長い分はリアのラゲッジスペースに充てられていて、リアシートを立てた状態の収納容量は420リットル。対するエスクードは375リットルだから、やはりファミリーユースで荷物を積んで出かける際はSX4 S-クロスに軍配が上がる。もっとも天地方向ではエスクードの方が高いので、リアシートを畳んだ状態にすると容量は逆転するかもしれない。

同じプラットフォームに、同じエンジン、同じトランスミッション、さらにはオールグリップという同じ駆動システムを持っているから、走りの印象もこの両者極めて近い。もっとも今回はFWDモデルをお借りしているので、フルタイム4WDの設定しかないエスクードとは根本的に違う。同時に、それ故にSX-4 S-クロスをチョイスするなら差別化という観点からもFWDが正解のような気がするわけだ。

マイナーチェンジ以前と最大の相違点と言えば、トランスミッションがそれまでのCVTから6ATに変更されたこと。これはアクセルを目いっぱい踏んで加速した時などに顕著な違いを感じる部分で、街中をゆっくり流すようなシーンではそれほど大きな違いはないものの、やはり総じて6ATの印象は節度があってCVTに比べると確実に良い。

4WDモデルとの乗り比べはしていないので、断定的なお話はできないが、ノーズが軽く感じることは間違いなし。それに無用なフリクションもないはずだから、こと走りに関してはFWDモデルの方が軽快なはずである。

タイヤサイズは従来から17インチではあったが、従来の205に対し、今回は215/55R17になった。それによるグリップ力の変化についても旧型との比較が出来ないので断定はできない。少なくとも実用領域でのグリップ力の違いは見いだせないと思う。しかし、乗り心地に悪影響を与えている印象はなく、十分快適なドライブが楽しめる。このセグメントにはホンダ『ヴェゼル』や最近爆発的ヒットになっているトヨタ『C-HR』など強敵が存在し、正直なところ影の薄い存在ではあるが、隠れた名車と呼ぶにふさわしい実力は持っているように思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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