【オートモビルカウンシル2017】ワゴンの歴史とクラシックガレージ…ボルボ

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ボルボ850TR
ボルボ850TR 全 19 枚 拡大写真

ボルボ・カー・ジャパンは8月4日から開催されているオートモビルカウンシル2017に出展。『V90』の限定車「V90 90thアニバーサリーエディション」が初公開されたほか、クラシック・ボルボのメンテナンス部門“クラシックガレージ”が手掛けた販売車両が展示されている。

◇ボルボ社創業90周年を記念した限定車

現在ボルボは“ビジョン2020”と称し、新しいボルボ車に搭乗中の交通事故による死亡者や、重症者を2020年までにゼロにする活動を訴求している。「ボルボは今年創業90年を迎えた。1927年に『OV4(愛称ヤコブ)』が誕生。それ以来3点式シートベルトを始めとして、自動車の安全性向上に大きな貢献を果たしてきた。安全なクルマ作りに対するボルボの理想がビジョン2020そのものなのだ」とは、ボルボ・カー・ジャパン代表取締役社長の木村隆之氏の弁。

そのビジョン2020を具現化した最初のモデルが昨年日本市場に導入した『XC90』であり、今年2月に導入した『S90』、V90、『V90クロスカントリー』である。「これらの90シリーズは2020年においても新型車に置き換わることなく販売が続けられるクルマであるから、その最初として登場した」という。

その90シリーズ初となる限定車が、ボルボ社創業90周年を記念したV90 90thアニバーサリーエディションである。「V90 T5 モメンタム」をベースに、クリスタルホワイトパールのボディと、内装はマルーンブラウンを採用。後席まで広がるパノラマガラスサンルーフに加え、フロントシートにはベンチレーション機能を加えたバーコレーテッドナッパレザーを特別に装備している。

北極圏に近い過酷な環境で育つ貴重なバーチウッドをドア部とインパネ部にあしらうとともに、V90のエクステリアを象徴的に引き締める新デザインの18インチアルミホイールを採用するなど、より上級な装備を備えている。価格は690万円で、90台限定で発売が開始された。

木村氏は、「これまでボルボに乗り続けてくれた方々にも、これからボルボにお乗りいただく方にも満足してもらえる限定車だと確信している」とコメントした。

◇ボルボワゴンの歴史

ボルボワゴンが初めて世に登場したのは1953年の『デュエット』だ。その後、『アマゾン』のワゴンモデルや『145』を経て、日本に初めて導入されたのは『240ワゴン』である。この240はセダンとワゴンを合わせて世界で268万台が製造され、その台数はボルボがこれまで生産して来たモデルの中では最量販となる。

また、240シリーズはモータースポーツでも活躍したモデルで、ヨーロッパツーリングカーチャンピオンを始め、富士スピードウェイで開催されたインターテックに出場し圧勝。「ボルボらしいスクエアなフォルムとパフォーマンスのギャップから、フライングブリック(空飛ぶレンガ)の愛称で親しまれた」と木村氏。

そしてそれまでのFRからFFへの転換を図ったモデルが、「日本でも一世を風靡した『850』シリーズだ。日本では発売と同時に大成功を収め、ワゴンブームを牽引したモデルといっても過言ではない」。その後850ワゴンは英国ツーリングカー選手権、BTCCでも活躍し、フライングブリックの復活と話題になった。

続いて1993年に発売された『960』シリーズは、エンジン、プラットフォーム共にボルボが自社開発した当時最後のモデルで、6気筒エンジンを搭載し、「快適性、安全性、スペースやユーティリティを求めるお客様から高く評価された一台だ」と振り返る。

そしてその960の誕生から20年の時を経て、新設計のプラットフォーム、パワートレインと共にボルボが自社開発したモデルとして90シリーズが発売になったのだ。

因みにこの90シリーズのリアサスペンションには、「グラスファイバー複合素材を使った最新のリーフスプリングを採用しているが、960も同様の構成を採用していた。スウェーデンの技術者が、スペース効率、重量、操安性や乗り心地のバランスを吟味した結果 、同じ結論に至ったのだと思う」とした。

木村氏は、「ワゴンの歴史に代表されるボルボがクルマ作りにおいて大切にするものは、あなたの大切にしているライフスタイルであり、恋人や大切な友人、そして家族だ。あなたにとって大切な人やものであるからこそ、より上質、プレミアムなものを提供していきたいと考える」と話す。そして、「ボルボブランドストラテジーである、デザインド アラウンド ユーは、ボルボの設計の中心が人であり、クルマ作りにおいて、運転する人だけではなく、あなたの大切な人やものを守るということを表現している」と語った。

◇新車販売にも影響するクラシックガレージ

昨年のオートモビルカウンシル2016で発表されたクラシックガレージは、「大好評で、大変多くのお客様から問い合わせをいただいており、皆様の大切な思い出がたくさん詰まったクルマたちが次々と再生している。今回はクラシックガレージのブースに美しく蘇ったボルボ車の販売も行っている」と木村氏はいう。初日の4日にはさっそく240の商談が成立していた。それ以外に販売車両は9台が展示されている。

ボルボ・カー・ジャパン広報部の長瀬雅紀氏は、今回クラシックガレージで販売している車両は、「自社で下取って再販するクルマだが、それ以外にクラシックガレージに入庫し、お客様の予算や要望に応じてレストアしてお戻しするクルマも多い」という。

クラシックガレージマネージャーの阿部昭男氏によると、お客様の要望に応じてレストアした車両は「これまでにおよそ10台だ」という。現在、「1959年の『PV544』が最も古いが、部品供給もあり、それらのパーツはどんどんメーカーが生産している」とし、メンテナンスに関しても問題ないと話す。

また、地方からも入庫があり、「現在遠くからは仙台からも来ていただいている」という。

現在クラシックガレージは、ボルボ・カー東名横浜に専用で2ピット保有している。長瀬氏によると、「地方のディーラーでもマニュアルがあるので可能だが、当時のクルマのことが分かっているメカニックがいるかどうかがポイント。そういうメカニックと会話を楽しみながら、お客様の満足度を高めていくこともこのクラシックガレージの意図のひとつ。そこで現在は30年以上ボルボをメンテナンスしてきているメカニックがいる東名横浜でスタートした」と説明。

また、新車販売にも影響が出ているという。「新車購入後保有期間は3年から5年で乗り換えるオーナーが多く、20年、30年乗るオーナーの方はごくわずかではある」と長瀬氏。しかし、「購入時は3年で乗り換えようとは思わず、ずっと乗ろうと思って購入しているので、このクルマを15年乗ってもきちんとメンテナンスしてくれるという安心感が、新車を買うユーザーにも影響を及ぼしているようだ」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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