アジアシリーズは最もレースを楽しんでいる…ランボルギーニモータースポーツ責任者【インタビュー】

モータースポーツ/エンタメ モータースポーツ
ランボルギーニ・スーパートロフェオのアジアシリーズ第4戦
ランボルギーニ・スーパートロフェオのアジアシリーズ第4戦 全 8 枚 拡大写真

アウトモビリ・ランボルギーニ・ジャパンは8月19日から20日にかけて、ワンメイクレース、ランボルギーニ・スーパートロフェオのアジアシリーズ第4戦を富士スピードウェイにて開催。当日は本国よりモータースポーツ部門責任者も来日したので、同社のモータースポーツ活動についての現状等について話を聞いた。

アウトモビリ・ランボルギーニS.p.Aモータースポーツ部門責任者のジョルジュオ・サンナ氏は1996年よりモーターレース界でキャリアをスタート。2010年と2012年にはイタリアGT選手権で準優勝、2011年に総合優勝を果たす。2001年より2月よりランボルギーニの研究開発部門でチーフテストドライバーを務め、多くのモデルを生み出してきた。2015年よりモータースポーツ部門責任者に就任。

◇アジア、北米、欧州のシリーズ戦の特徴

----:現在ランボルギーニ・スーパートロフェオはアジアシリーズのほかに、北米と欧州で開催されています。それぞれの地域での参加しているドライバーやチームの特徴や傾向があれば教えてください。

サンナ氏(以下敬称略):地域によって違いはあります。ヨーロッパシリーズは勝つことにフォーカスしており、ドライバー同士のライバル意識が非常に高く、とにかく勝ちたい、絶対優勝したいという意気込みで皆さん出場していますので、プレッシャーも強いと思います。レースに対して楽しみの要素は少なく、何が何でも勝つぞという特徴です。

一方アメリカのシリーズはもう少しフレンドリーで、ドライバーやチーム同士で情報を共有したりしており、ヨーロッパ程プレッシャー強くはないでしょう。

そして、アジアシリーズは皆さん本当に楽しんでやっていることがよくわかります。ジェントルマンドライバーも多く、モータースポーツが本当に好きで楽しんでおり、例え最後尾であったとしても、それはそれで凄く楽しんで走っているということが伝わってきます。

そういった様子が顕著に表れているのがポディウムのシーンです。ポディウムに上がったドライバー同士で冗談を言い合ったりと、凄く楽しそうに盛り上がっているので、その楽しさが我々にも伝わってくるほどです。こういった差は文化の違いのほかに、レースに対するノウハウのレベルの違いに起因することだと思います。

◇アジアシリーズ、日本で2戦開催しているわけ

----:アジアシリーズでは昨シーズンから日本でのレースが2本組まれていますが、それは何故でしょう。

サンナ:理由はシンプルです。日本市場は成長をしているとともに、ランボルギーニにとって最も重要な市場の一つなのです。だから2戦行っています。

日本からも多くのお客様チーム、そしてドライバーがランボルギーニを選んでレースに参戦してもらっています。また、19日にはレースの前に40台以上のランボルギーニが富士スピードウェイ本コースをパレードランしました。それを見ると日本には本当にファンの方が多いと感じます。単に乗ってもらっているお客様だけではなく、ブランドを愛してくださっている方が多いのだなと感じました。

そういった市場に対して、きちんと投資をするのは当然のことです。従って2戦、日本で開催することが出来たのはとても嬉しく思っているのです。

----:例えばもう1戦増やしてスーパートロフェオジャパンの様なアイデアはありませんか。

サンナ氏:今の時点ではその予定はありません。しかし、日本シリーズを開催するだけのポテンシャルは十分にあると考えています。

我々の販売台数も増えており、同時に毎年お客様も増えていますので、今の時点でそういった計画はありませんが、絶対ということはありません。環境が揃って数字がついてくればそういった可能性もなくはないと思います。

----:さて今回、アジアシリーズでは20台エントリーを集めました。この成功の原因は何でしょう。

サンナ氏:今回初めてアジアシリーズにもヨーロッパのチームやドライバーを招聘していると同時に、若手のドライバーも多く参戦しています。その中にはランボルギーニの若手ドライバー養成プログラム出身者が多くいます。国籍を見るとアジアだけではなくほかの国出身ドライバーもいますので、チャンピオンシップ自体に良い刺激になっているでしょう。その結果、シリーズ全体のクオリティやイメージも上がり、評価も高まると考えています。

また、もともとはヨーロッパのプロドライバーが参戦することによって、アジアのドライバーや若手のドライバーに、良いお手本になると考えていました。しかし結果を見るとアジアチームが上位を占めていたりするので、アジアでも凄く腕の良いドライバー、プロのチームが育ってきてたと実感しています。そして、ヨーロッパとアジアのチームやドライバーがお互いに切磋琢磨することによって、良い方向にシリーズ自体が成長していってほしいと願っています。

更にアジアには素晴らしい設備の整ったサーキットがたくさんありますので、若手ドライバーには今まで自分が走ったことのないところで経験を積むことが出来るので、凄く良い機会になっています。

◇中東シリーズが新たにスタート

----:今年からランボルギーニスーパートロフェオシリーズ戦に中東が加わりました。この理由はカスタマーがこの地域に多いということなのでしょうか。

サンナ氏:中東は戦略的市場という位置づけです。もちろん市販車の販売面では非常に大事な市場ですが、それだけではなくモータースポーツの面でも凄くポテンショがあると考えています。しかし、中東出身のドライバーはあまりレースの経験がありません。きちんとサーキットは揃っているのですが、自分たちにノウハウがないのです。従って我々は戦略的に中東に投資を行い、そこのレースにヨーロッパやアジアのチーム、時には北米からチームを招聘。中東でレースを行うことにより、ノウハウのない中東の人たちに対して、レースのやり方を教えるという意味合いも持っています。

今年の初めに、初めて開催をしたのですが、次のチャンピオンシップには是非出ると何人かの中東のドライバーからコミットメントをもらっています。

----:スーパートロフェオの2018年シリーズでのニュースを教えてください。

サンナ氏:現在いずれの地域も上手く開催出来ていますので、現状からスケジュール等の変更はありません。我々からは現在開催しているサーキット以外でのレースも提案するのですが、F1と同じサーキットで開催するというプレステージ性の高さもあり、今のままでいいという声が大きく、なかなか変え難いのが状況です。

----:マシンやレギュレーションに関しては基本的に今年と大きく変わらないのですね。

サンナ氏:レギュレーションに関しては今年と全く同じで違いはありませんが、マシンに関しては重要なニュースを9月頃にお届け出来るでしょう。

◇若手を育てて将来有望なドライバーへ

----:ランボルギーニでは、若手のレーサーを育成するフォーミュラジュニアプログラムなどが日本でも活動しています。これについてもう少し詳細を教えてください。

サンナ氏:3年前からこのプログラムは日本でも行っています。元F1ドライバーのヴィンセンツォ・ソスピリが実行しており、 F4レースでドライバーをセレクションし、スーパートロフェオシリーズに送り込んでいます。そこで選ばれたドライバーは日本を含むアジア人やブラジル人、ヨーロッパのドライバーもおり、若手の育成として良い機会になっています。

----:キッズカートプログラムも行ってるようですが、これも日本でやっているのでしょうか。

サンナ氏:いえ、このプログラムはイタリアベースになっており、そのために我々はチームを持っています。5回ワールドチャンピオンになったダニエル・ロッシを引き抜き、彼がジュニアチームのスカウト、ドライバーセレクションを行い、彼が作ったチームで主にヨーロッパとワールドチャンピオンシップで戦っています。

このカートプログラムは主に子供が対象です。もちろん才能のある若者をセレクションするという意味合いもありますが、それだけではなく、スクアドラコルセのブランドやプログラム自体を若いドライバーの間にプロモーションするという意味合いもあるのです。

子供が最初にカートを始める時に、将来プロになりたいと夢を持ってカートの世界に入ってくるでしょう。もちろんF1への憧れもあると思いますが、F1だけではなく、ランボルギーニでもこういうキャリアが積めるということを、早い時期に理解させたいと考えているのです。ランボルギーニでもキャリアが積めるんだということを小さい時に知っておけば、将来GTで戦うようになった時に、ランボルギーニで走るという選択肢も出てくると思うのです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る