公益社団法人土木学会は9月25日、2017年度の選奨土木遺産として23件を選定した。鉄道関係ではJR上越線の清水トンネル(群馬県・新潟県)などが選ばれた。
清水トンネルは、群馬県と新潟県の県境にある単線の鉄道トンネル。1922年に着工し、1931年9月の上越線全通にあわせて使用を開始した。全長は9702mで、戦後の1962年に北陸本線の北陸トンネルが開通するまで日本一長い鉄道トンネルだった。トンネルの前後には勾配を緩和するためのループ線も設けられた。川端康成の小説「雪国」の冒頭文「国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた」は、関東から新潟方面に向かう下り列車に乗って清水トンネルを抜けた直後の車窓を記しているとされる。
1967年9月には、全長1万3500mの単線(下り線専用)トンネルの新清水トンネルが開通し、上越線が複線化。これに伴い清水トンネルは上り線専用になり、下り列車は運行されなくなった。新清水トンネルは山岳トンネルとしては珍しい「地下駅」があり、湯檜曽駅と土合駅の下り線ホームがトンネル内に設けられた。
土木学会は「JR上越線清水トンネル関連施設群」と題し、清水トンネルやループ線、新清水トンネルなどを一括して土木遺産に選定した。同学会は「トンネル掘削技術の進歩と貴重なループ線を今に伝え、谷川連峰を貫通して首都圏と日本海側を最短距離で結ぶ貴重な土木遺産」としている。
鉄道関係ではこのほか、東武鉄道の渡良瀬川橋りょう・砥川橋りょう(栃木県・群馬県)や、前河原橋りょう(滋賀県)、竹野川橋りょう・田君川橋りょう(兵庫県)などが選ばれた。