【東京モーターショー2017】マツダ、次世代車両構造技術を確立…クルマ全体で最適化追求

自動車 ニューモデル モーターショー
マツダ次世代車両構造技術 スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー
マツダ次世代車両構造技術 スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー 全 6 枚 拡大写真

マツダはスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーと名付けた次世代車両構造技術を確立し、10月27日に開幕する東京モーターショーで世界初公開するコンセプトモデルに採用し、出展する。

スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーの開発を手がけたマツダ車両開発本部プラットフォーム主査の京免章氏は「従来のプラットフォームとかトップハットとか、そのようなユニットやシステムの概念を越え、クルマ全体で最適化や理想機能を考えることに進化させたもの」と語る。

京免氏によればこれまでは「人馬一体の走りの実現に向け、ライダーであるヒトについては力の入らない自然な状態にヒトを座らせるドライビングポジションを研究し、そして馬であるクルマについてはそれぞれのシステムにおいて機械としてドライバーの意図に合う最適化、例えばステアリング操作に対するクルマのリニアな応答性など個々のシステム、ユニットで追求してきた」という。

これに対し次世代の車両構造技術ビークル・アーキテクチャー開発では「個々のユニットの進化という従来の軸に加えて、人間の能力を生かすという軸を設定して、これを極めることによって、ドライバーまたは同乗者が人間として本来持つ自身の能力を最大限発揮できるクルマとの一体化に注力した。人が座るシートから、ボディ、シャシー、タイヤまでを有機的な連携をもって開発した」と京免氏は振り返る。

その実現にあたってまず着目したのが「日頃無意識に当たり前のように行っている歩行」と京免氏は明かす。というのも「歩行の状態は人間が最も快適で疲れない、そして様々なトラブルにも即座に対応できる状態であり、最も安全、安心な状態といえる」からだ。

さらに「この基本の状態を維持するための肝は、歩行中どんな時でも骨盤が立ちそして脊柱がSの字のカーブを維持していること、そして脚から伝わる路面からの反力を下肢が滑らかに骨盤に伝えて、さらに骨盤自体が規則的にかつ連続的に滑らかに動いていることだ」と分析。

その上で「クルマにおける理想の状態とは何か、それは歩行時と同じように本来人間が持っているバランス保持能力を発揮できる状態を造ることと言い換えることができる。具体的には乗車時においても脊柱がS字カーブを保つよう骨盤を立てて着座できるようにし、その上で人間の脚の代わりにクルマが路面の力を骨盤に滑らかに伝えるようにすべきと考えた」と京免氏は述べた。

人間のバランス保持能力を最大限発揮させるために開発陣は「バネ上と一体で動くシート、力の伝達を遅れなくするボディ、バネ下からの入力を滑らかにするシャシー」に取り組んだ。このうちシートでは「人間の骨盤を立てて、脊柱がSの字カーブを維持できるようにした。具体的には胸郭重心をしっかり包み込む形状、硬さとすることで脊柱のS字を維持するとともに、クッションにおいてもシートバック腰椎部分も含めて骨盤を包む形状でサポートするようにした」という。

またボディは「従来から上下左右の中心に環状構造をとり剛性を高めてきたが、4輪対角剛性を向上させるという視点から上下左右だけでなく、前後方向にも骨格をつないで多方向に環状構造を配置した。フロントやリアのダンパー取り付け部、リアドアの開口部など力の流れを解析しながら効果的に骨格を配置した結果、フロントの入力からリアの対角への入力の遅れ時間が30%短縮されており、4輪対角同士が遅れなく力を伝達するようになった」としている。

さらにシャシーでは「従来、バネ上に伝わる力の大きさを軽減するという考え方で設計してきたが、新たにバネ上に伝わる力を時間軸で滑らかにするという考え方を採り入れて、各部品の機能配分を再設計した」と京免氏は解説する。

京免氏は「タイヤからサスペンション、ボディ、シートまで人間中心思想で全体最適視点で見直すことで、歩行時と同じように人間の持つバランス保持能力を発揮できるようになった」としているが、材料の進化もそれを支えている。

そのひとつが高張力鋼板(ハイテン材)の積極採用だ。スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーでは1.8GPaのハイテン材をバンパービームなどに使用し、軽量化、高強度の両立を図っている。ハイテン材の積極採用となるとコストも気になるところだが、逆にハイテンにすることで板厚が薄くなりコストはそれほど増えないとのことだ。

また振動エネルギーを熱エネルギーに変換する接着剤をクロスメンバーなどに使うことで振動の減衰に寄与しているという。

マツダはスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーおよび圧縮着火制御技術を採用したガソリンエンジンのスカイアクティブXを採用したコンパクトハッチバックモデルを東京モーターショー2017で初公開する。

《小松哲也》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
  2. BEVを2年間所有した、“リアルな”ランニングコストを大公開
  3. 日産の新型セダン『N7』、発売50日で受注2万台を突破
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  5. VW『ゴルフGTI』50年の歴史で最強、325馬力の「EDITION 50」発表
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  3. コンチネンタル、EVモーター用の新センサー技術開発…精密な温度測定可能に
  4. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  5. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
ランキングをもっと見る