【東京モーターショー2017】ホンダアーバンEVコンセプト…もうひとつの自分の部屋をイメージ[デザイナーインタビュー]

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右から順に本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室1スタジオの照井悠司氏、矢口史浩氏、3スタジオの半澤小百合氏
右から順に本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室1スタジオの照井悠司氏、矢口史浩氏、3スタジオの半澤小百合氏 全 16 枚 拡大写真

ホンダのコンセプトカー、『アーバンEVコンセプト』は、生活や楽しみをさらに自由に拡げることをコンセプトとしたシティコミューターだ。EVならではのパッケージングにより、コンパクトなボディに広々とした居住空間を持たせ、ユーザーに寄り添い、愛着がわくような親しみのあるデザインをまとっている。ホンダではこのコンセプトモデルベースとしたクルマを、欧州の発売に続いて、2020年に日本でも発売する予定だという。

◇愛着のわく、撫でまわしたくなるようなエクステリア

----:早速エクステリアのデザインテーマを教えてください。

本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室1スタジオの照井悠司氏(以下敬称略):親しみやすさです。未来の、人と生活に寄り添うクルマ、電動モビリティというものをクルマ全体のコンセプトとしていますので、愛着や親しみやすさをテーマにしています。

----:それを具体的にクルマに落とし込むためには色々な表現方法があります。具体的にこのクルマではどのように表現しているのでしょうか。

照井:まずはヘッドライトやリアを含めた表情を、愛着のわく、撫でまわしたくなるような(笑)デザインにしています。毎朝顔を合わせたり、降りたときに相棒を見たりするようなときに、どういう形がいいかなという意味を込めて親しみやすさとしました。

もう一方、このクルマはEVなので、電動ならではのトルク感できびきび走るイメージをフォルム全体で表現しています。特に大きさや存在感、タイヤの大きさを含めデザインしました。

----:2009年の東京モーターショーに出展された『EV-N』のときにも近い話を伺ったと思いますが、『N360』を含めて意識はしたのでしょうか。

照井:今回に限らず、これまでのホンダスモールカーの特徴として、走りの楽しさや愛着、親しみやすさに関しては脈々と伝えられてきています。それを当然今回もクルマのコンセプト、テーマに合わせて表現しているのです。

◇親しみやすく、きびきび走る

----:さて、親しみやすさときびきび走る点を具体的にデザインにどのように落とし込んでいるのでしょうか。

照井:親しみやすさでいうと、あまり可愛くなりすぎず、ボテッと重くなりすぎず、タイヤがちゃんと四隅についていて走りそうな形。攻撃的であったり、機械っぽくならないようにしました。

細かい要素で、モダンで古くならないようなあしらい、例えばミラーやサイド下側の黒いパーツなどの細かい部分で鮮度を保ち、新しく見えるようにしています。この黒いパーツは色々トライアンドエラーをしてデザインをしていきました。実は、これがないとお饅頭のように可愛くなりすぎてしまうのです。そこで、もう少し頼もしさも必要だとデザインしていく中で、親しみやすさも含め追求していきました。

----:きびきび走るイメージはいかがでしょう。

照井:少しタイヤを大きく見せることで、走りを表現しています。それと手頃なサイズ、コンパクトなサイズとしながら、台形フォルムによってスタンスの良い走りを表現しています。

----:アーバンEVコンセプトのドアは後ろヒンジが採用されましたが、その理由は何でしょう。

照井:インテリアが部屋のような空間というイメージなので、入るときにどうぞこちらへ、クルマから迎え入れられるような、思わず入りたくなるようなイメージです。

乗降性も含めて、後ろヒンジも改めて価値があるのではないかと思い提案しています。女性を含めてどんな人でも乗ってもらえるような、どんな人にでも似合うようなデザインはエクステリア問わず全体でいえることです。

----:エクステリアデザインについて一言お願いします。

照井:特に顔周りですが、撫でましたくなるような、いい子いい子してあげたくなるようなデザインにしていますので、そういう思いでこのクルマを見てほしいです。

◇気持ち良さがキーワードのインテリア

----:では、インテリアについてはいかがでしょう。

本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室1スタジオの矢口史浩氏(以下敬称略):インテリアは見ての通り、クルマの様子をあまり感じさせないような、まるで自分の部屋のような表現を持たせています。普段家にいるような感覚で、リラックスして運転を楽しんでもらえるような空間を提案しました。

----:特にシート周りは、すごく気持ちの良さそうなデザインになっている印象ですね。

矢口:クルマのシートととして機能は大切なのですが、それを踏まえてまずは気持ち良さそうだとか、座ってみたいと思わせる、少し柔らかい感じを表しています。ソファーをイメージしているのですが、そういったところを感じてもらいたいのです。

----:「気持ち良さ」がキーワードですか。

矢口:そうです。クルマに乗り込むぞ、という意気込みよりは、家の部屋に入り込むような、気持ちが落ち着くような、リラックス出来るような、そういった部分を今回全面的に表現しています。

----:その一方でインパネ周りはしっかりと作り込んでいる印象がありますね。

矢口:はい、例えば家でも液晶のテレビがあったり、テレビボードがあったりします。本当であれば横に観葉植物でも置いて部屋のような感覚にしたかったのですが(笑)。やはり、クルマの情報はしっかりした正確なものを伝えたいので、そういったところはかなりカチッと作り込んでいます。

----:ではインテリアで一番こだわったところはどこでしょう。

矢口:素材にも通じるのですが、ショーカーオリジナルとしてクッションを作りました。これが置いてあることで、かなりクルマの方向性、世界観が変わって見えてきます。そういった細かい部分も含めて全体を見たときに、居心地が良さそうだ、自分の部屋のような、書斎のようなイメージをこのクルマで感じ取ってもらえたら嬉しいです。

----:寝室にはならないようにしなければいけないですね(笑)。

矢口:あはは(笑)。ここで寝ても全然問題はないですよ、よく寝られそうですね。

◇こだわりのシート生地

----:エクステリア、インテリアを含めて、カラーや素材についてお話を聞かせてください。

本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室3スタジオの半澤小百合氏(以下敬称略):はい、まずエクステリアカラーでは、今回はEVなので、ホワイトパールのマットを塗っています。その理由ですが、EVですから充電するという行為が必要になり、時間も給油よりかかりますね。その際に家やそのほかの環境でも、自分の生活に調和するような白を選んでいます。

この白も黄みがかったゴールドのハイライトと、底色に従って青っぽくなっていくように、その辺りも少し変化させて、形に追従するようデザインしました。また少し変化することで生き物のようなイメージも持って作っています。

----:では、インテリアはいかがでしょう。

半澤:インテリアでは、部屋がひとつ増えたようなリビングルームというテーマで作っています。一番こだわったところはフロントのソファーの様なシートです。形状がとてもシンプルなので、素材としても質の高いウールライクの織物の生地を使いました。張りがあり艶っぽさもある生地なので、そういうところが表現出来るように作っています。特にその張りを表現するために、真ん中にステッチを入れたほか、木のトレイなどを配し、ちょっと一服したくなるようなものを少しずつ散りばめてデザインしました。

----:ウールライクのシート生地はすごく触ってみたくなるような感じがします。原価がそれほど高くないのであれば市販車で使うことは考えられませんか。

半澤:それほど高くはないので、いいかなと思いますね。

----:シート生地とブラウンとの内装の組み合わせはとても綺麗だと思いますが、どういうイメージで配色しているのでしょう。

半澤:女性っぽくしようとは実はあまり思っていません。どちらかというとユニセックスで、男性でも女性でも年齢層が高くても低くても、どなたにでも受け入れてもらえるような幅の広い層にアピール出来て、そして、皆がシンプルに良いなと思ってもらえるようなものをチョイスしていきました。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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