【ボルボ XC60 試乗】魅力がじわじわと体に染み込む…木下隆之

試乗記 輸入車
ボルボ XC60 T5 Inscription
ボルボ XC60 T5 Inscription 全 12 枚 拡大写真

世界的販売で見れば、『XC60』はボルボでもっとも売れている車種なのに、モデル末期になって売れ上げを伸ばすという特異なスタイルなのが特徴だ。

【画像全12枚】

一般的には、販売開始直後に世間が騒ぎ出し、初速が高い。その後モデル末期になるに従って注文が減り、慌ててマイナーチェンジといったカンフル剤を注入するか、しびれを切らしてフルモデルチェンジとなる。

だがXC60は、いかにも質実剛健のボルボらしく、じわじわ心のひだに浸透するように、とモデル末期になって販売を伸ばすという。先代XC60は、2009年に6万台だったのに、2016年には16万台になった。そしてフルモデルチェンジ。まだまだ右肩上がりの最中での変身である。

そのためか、エクステリアは先代のイメージを踏襲している。冒険する必要はない。サイドから眺めたプロポーションは、後端がキックアップした前傾姿勢をとることに違いはない。新型の資格的特徴は、サイドに彫刻刀で彫ったかのような深いキャラクターが与えられていることだろう。

それでも、中身は一新している。シャシーは2013年に開発したSPAプラットフォームである。エンジンバリエーションも豊富だ。日本導入時期にズレがあるものの、2リットル直列4気筒ターボ+AWDの「T5」、2リットル直列4気筒スーパー&ターボ+ハイブリッドの「T8」、2リットル直列4気筒スーパー&ターボ+AWDの「T6」、さらには2リットル直列4気筒ディーゼルターボ+AWDの「D4」という豪華な布陣なのである。

ベーシックな「T5」をドライブした印象からすると、実にしっとりした走り味であることが記憶に残った。けしてスポーティではない。かといって鈍重ではない。無個性といってしまえばそれまでだが、逆に言えば、どこにも鼻につく嫌味がなく、穏やかなのだ。エアサス仕様は特に、路面にしっとり吸い付くような、湿度感のある乗り味が好印象だった。

もっとも、ボルボといえば安全のキーワードが浮かぶように、XC60にも徹底した安全技術が注がれている。ミドルSUVとしては圧倒的に進んだ高度運転支援技術が採用されているのだ。自動運転にすぐに移行できそうである。と思って聞いてみると、ボルボは2020年にはボルボ搭乗時の死亡事故をゼロにすると宣言したのだ。その伏線である。

もう一度、改めてドライブを噛み締めてみると、ボルボの魅力が体に染み込んでくる。縦長のモニターは視認性がいいし、効率よく省略されたスイッチ類も操作性がいい。これも安全に寄与するはずだ。

タッチパネルは、手袋をしていても操作できるように赤外線式である。ステアリングヒーターも装備している。衝突安全は、大型動物をも認識するという。まさに北欧のモデルらしさが魅力だ。味わい深いのである。

最後になって気がついた。助手席側のインパネの片隅に、コインよりもっと小さなサイズでスウェーデンの国旗が刻まれていた。シートにもブルーとイエローの国旗が確認できた。ボルボはスウェーデン製であることに誇りを持っている。最初は没個性にそれほど惹かれなかった僕だが、2時間30分ドライブしているうちに、XC60の魅力にじわじわと惹き寄せられていた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

木下隆之| モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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