アルピーヌのDNAって何ですか?…俊敏性、エレガントなスタイル、そしてドライビングの楽しさ[デザイナーインタビュー]

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アルピーヌデザインダイレクターのアントニー・ヴィラン氏
アルピーヌデザインダイレクターのアントニー・ヴィラン氏 全 13 枚 拡大写真

ルノー・ジャポンが新たにビジネスユニットを設立させ、本国からは2018年にも日本に導入するとアナウンスされているアルピーヌ『A110』。そのデザイナーにA110がいにしえの名車をモチーフにした理由などについて話を聞いた。

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◇A110がいまのデザインをまとったわけ

---:いよいよアルピーヌA110の導入が本格的に日本でも見えてきました。そこでまず初めに伺いたいのは、なぜ、往年のA110をモチーフにして新型を作ったかということです。

アルピーヌデザインダイレクターのアントニー・ヴィラン氏(以下敬称略):1960年代、アルピーヌA110はアイコン的存在でした。レースやラリーにも強く、見た目にはエレガント。パフォーマンスが高く、動きも素晴らしく俊敏であることを、クルマのファンばかりではなく、一般のフランス国民の記憶にも留められていたことから、今回新型でもそのデザインをモチーフとして取り入れたのです。

---:他の選択肢、例えば全く違うブランニューのデザインをまとったクルマは考えられなかったのでしょうか。

ヴィラン:アルピーヌブランドは1995年に幕を閉じ、それ以来新型車は出ていません。そこで我々は今回の復活に際し、伝統を持つ過去と現在、将来を繋ぐ何らかのリンクが必要だと考え、このブランドがかつて持っていたDNAを今世紀に投影するようなものが必要だと思ったのです。

その理由は、アルピーヌというブランドは、フランスではすごく有名で、日本でも知る人ぞ知る存在です。しかし、このブランドを全く知らない国々の方も大勢いるのです。そこで今回、新しいクルマとして出すに際して、過去の伝統やヘリテージがバックボーンにあることを理解してもらいたいと、このデザインを採用したのです。

---:そのアルピーヌのDNAとは何ですか。

ヴィラン:まず軽量であることから来るアジリティ、俊敏な動きが出来ること。次に、フランスらしいエレガントなデザイン、最後はドライビングの楽しみ、この三要素です。

◇ミッドシップだからこそ成立したデザイン

---:さて、新型A110のデザインコンセプトは何ですか。

ヴィラン:一言でいうならばピュアなデザインであるということです。それと、サイドビューから見て、フロントからルーフを通りリアまでワンラインで完結しているという見た目です。

A110は昔からのアイコン的な存在です。そこで、リアウインドウのカーブや、サイドグラフィックスといったところは生かしながら、スポイラーやアクティブなシステムによってクルマのデザインが邪魔されることがないようにしました。実はフラットフロアやディフューザーなどのエアロダイナミクスに関してはかなり苦労しているのです。見た目のシンプルさや流れるようなラインを犠牲にしないようにしていますからね。

エアインテークも、エンジンが必要としているだけの大きさに限定しています。250馬力ぐらいのエンジンなので、それに丁度いいぐらいのエアインテークにして、それ以上のごついものをつけないようにしています。

こういってはなんですが、ドイツ車はごついですし、イタリア車は派手ですよね。そういったところとは違い、フランス車の特徴は、シンプルでエレガント。これこそがアルピーヌのキャラクターとして大切にしているデザインなのです。

---:旧A110はリアエンジンであったのに対し、新型はミッドシップとエンジンの搭載レイアウトが違っています。その点を踏まえながら、当時のイメージを踏襲するには苦労があったと思いますが、いかがでしょう。

ヴィラン:運転する楽しみが一番大事ですので、ミッドシップレイアウトはこのプロジェクトの当初の段階から決まっていました。そこで前後の重量バランスを考えなくてはいけません。ドライバーとクルマの一体感を大事にするために、エンジンはミッドシップに搭載し、燃料タンクとバッテリーをフロントに置くことで重量を最適配分しているのです。

実はあと付けの理由ではあるのですが、スタイリング的にもこのレイアウトは却って良かったのです。昔のフラット4やフラット6などとは違い、現代のエンジンは背が高いので、もし、リアエンジンにして新しいエンジンを後ろに置いてしまったら、リアのボディラインを低くきれいに流すことが出来なかったでしょうね。

---:日本でも昨年、A110プロトタイプが公開されましたが、それ以降生産化によりデザインでの変更点はありますか。

ヴィラン:そのプロトタイプとほとんど変わっていません。

◇今後のアルピーヌはまだ“未定”

---:さて、今回のA110は1960年代にあった、いわば過去のクルマをモチーフにデザインされました。今後もこの考えを継続していくのでしょうか。それとも新たなデザインを求めていくのでしょうか。

ヴィラン:まずはA110を成功させなければいけません。このモデルがうまくいかないとその後の方向性も考えられませんからね。A110が成功したら、どうしようかというアイディアは色々抱えていますし、色々なクルマを作ることは出来ますが、その際にも先ほど述べたDNAをベースとしたクルマ作りをしていきます。が、とにかくA110を成功させないと、その後を論じるのはまだ早いですね。

---:仮に成功したとしましょう。そうしたら『A310』やその他のモデルをモチーフとしたクルマを作っていくのですか。あるいは本当にブランニューの方向性を考えていくのですか。

ヴィラン:まず、いまのタイミングとしてA310は少し違うでしょう。A110のスタイリングの方が、ポテンシャルは高いと思います。また、いままで世に出てきたアルピーヌをひとつひとつしらみつぶしに復刻させるということではなく、A110をベースとした今回登場するのが最初のクルマで、これをベースとして、次なるクルマが出ます。ただし、この次なるクルマがどうなるかはまだ全く決まっていません。

---:いま、SUVはとてもヒットしています。そこで、アルピーヌのSUVをデザイナーとして作ることは出来ますか。

ヴィラン:DNAをきっちり押さえていれば何でも出来ます。軽量でアジリティがありエレガントで、運転が楽しいこと。これを押さえないと単なるものまねになってしまいますから、この三要素を押さえていればどんなクルマでも出来ます。しかし、いまはまだ何も決まっていません。

◇LMP1をデザインしたい

---:あなた自身が将来デザインしてみたいアルピーヌはどういうものですか。

ヴィラン:これまでゲームのグランツーリスモの中でドリームカーのようなことも既に行っていますが、もしここから広がり、ドリームプロジェクトを出来るとするならばLMP1のレースカーをやりたいですね。このグランツーリスモはそれに向けてのひとつのステップであって、最終的にはレースカーをやりたい。

1960年代のルマンに出ていたアルピーヌを好きな人がたくさんいます。いま、LMP2でレースをやっていますが、LMP1向けのレーシングカーを作れたらすごいなと思います。

いま、LMP1に出ているクルマはエンジニアが作るクルマになってしまっています。しかし、1960年代や70年代の古き良き時代のポルシェ『917』やフェラーリ『312』、『P4』、1980年代になってからルマンに参戦してきたマツダなどは本当に美しいクルマたちでした。

いま、そういったスタイリングが先行したクルマはなかなかLMP1のレースでは見ることは出来なくなってしまいました。もちろん、エアロダイナミックの専門家と、技術者たちがクルマを作ってはいけないというつもりはありません。そういった人たちとデザイナーがコラボして、スタイリングを大切にしたクルマをLMP1で走らせることが出来たらいいと思っているのです。

---:最後に、好きなデザインのクルマはありますか。

ヴィラン:マセラティ『A6GCSベルリネッタ』ですね! 1950年代から60年代のピニンファリーナのデザインで、パーフェクトなプロポーションです。レーシングカーではフェラーリ『312P』のルマンに出ていたモデルが、とてもクールでパーファクトです。いまのクルマではポルシェ『911』の最終モデルが一番素敵だと思います。またAMG『GT』もピュアでプロポーションがきれいです。

東京モーターショー2017にはマツダ『VISION COUPE』が出展されていますが、これも好きですね。きれいなプロポーションを純粋に表現しています。

私が好きなクルマには共通項があります。プロポーションが完全で、ごちゃごちゃしておらず一体感のあるピュアなスタイリングです。そうすると何十年経っても古さを感じさせないクルマになるということです。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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