ZFの高度運転支援システム、公道デモで体験…自動運転への橋渡し【Vision Zero Days Japan】

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ZFの高度運転支援システムのプロトタイプを実装したテストカーを試乗
ZFの高度運転支援システムのプロトタイプを実装したテストカーを試乗 全 22 枚 拡大写真

ドイツの部品世界大手ZFの日本法人が、11月初旬「Vision Zero Days Japan」を開催した。ハイライトのひとつは、自動運転への橋渡しとなる高度運転支援システムのプロトタイプを実装したテストカーを持ち込んでの公道デモンストレーションだった。

用意されたテストカーはルノー『エスパス』とオペル『インシグニア』。エスパスのほうは現在使われているカメラと前方レーダーを組み合わせたZF製のオールインワンシステムを応用した簡易型。インシグニアはカメラと前方レーダーに加えてコーナーレーダーも装備され、より高度な自律走行を可能にしたことが売りだ。どちらも自動車専用道路での使用が前提で、市街地には対応していない。

試乗区間はまずはエスパスに乗る。高速クルーズ時に提供される機能はアダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストが統合された市販車と基本的に同じで、単一車線を前方監視しながら平和にクルーズする。

もっとも、テストカーと言うからには次世代のものが入れられている。ベルトドライブ式の操舵システムである。現時点では自律走行のステアリング制御は操舵トルクのコントロールによって行われている。それに対しエスパスは高精度な舵角センシング&制御によってステアリングの操作量を決定する仕組み。

ZF関係者は「走行ラインをより高精度に取れるようになった。オペル インシグニアのほうが自動運転のスペック自体は高いが、運転が上手に感じられるのはルノー エスパスのほうだと思う」と語る。その言葉どおり、エスパスは車線の真ん中をぴったりと、しかも舵角の修正をほとんど感じさせない滑らかさでクルーズした。

車内にはシステムが計測した車線情報が表示されるディスプレイが備わっており、車両が車線中央からどのくらいずれたかがリアルタイムでわかるようになっていた。試乗コースの新東名は路面状況が良いこともあってか、ズレはほとんど1cm台までで収まっていた。数値が0.75などと出ていたため、「これはcm単位ですか?」と思わず確認のために訊いたほどであった。

途中、工事区間もあったが、エスパスは難なくその区間を乗り越えた。興味深かったのはインターチェンジを出るとき。そこでは工事が行われ、流出路の2車線のうち1車線が規制ていたのだが、運転支援システムはスピードを落としつつ工事のパイロンを大きく避け、白いゼブラの部分を踏んで通過させるという判断と制御を行ったのだ。

工事中は作業する人がそこにいたりするものということで、ある程度の距離を取る。またゼブラ部分を踏むことは道路交通法上違反ではない。見たのはこの1箇所だけだが、そういう運転をやってのけたのは自律走行技術の進歩を如実に感じさせられるところであった。

帰路は複数車線にまたがってのアダプティブクルーズを行えるシステムを搭載したオペル インシグニア。こちらは前のクルマの速度が設定車速よりも遅いときには周囲を確認しながら自動で車線変更し、追い越してくれる。エスパスとはまた異なる試験用ディスプレイがついており、両隣が車線変更できる状況か否かを判断している様子が映し出されていた。

インシグニアで面白かったのは、クルマにより多くの操作を任せたときの人間の心理がドライビングポリシーに反映されていたこと。たとえば大型車の追い越し、追い抜きのときは、自動的に乗用車相手よりも相手車両との距離を大きく取る。そのほうが乗員に緊張を与えないことがわかっているからだという。

この2車とも、まだ連続した手放し走行を許容するものではない。今回の試乗ではそういうシーンはなかったが、システムが路面や周囲の状況を失探したときは、ドライバーに操作が渡されるという点も現在出回っている運転支援システムと同じだ。

だが、事故防止や疲労軽減などの点で先進安全システムの重要性は今後も高まっていくのは確実であろうし、それに対するサプライヤー側のソリューション提供の準備が相当進んでいることもまた確かだと実感されたテストドライブであった。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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