自動車開発用の計測機器を輸入・販売する東陽テクニカは11月28日、同社「テクニカルリサーチラボ」の見学会を開催し、統合試験システム「Driving & Motion Test System(DMTS)」の研究内容について発表した。
DMTSは、車両の挙動解析を可能にするシャーシダイナモ。同社が独占輸入するスウェーデンRototest社のシャシダイナモメーター「ROTOTEST Energy」をベースに、東陽テクニカ独自の機能を追加したものだ。
通常シャーシダイナモと言えば、巨大なローラーの上にタイヤが載るように車を停めて、ローラーを回すことでパワーを計測するものが思い浮かぶが、DMTSはまったく違う方式だ。タイヤをはずして、ホイールハブに計測用の可動式ダイナモを四輪それぞれに装着する「ハブ結合式シャシダイナモメーター」である。
このような形を採ることによって、四輪ごとに細かい計測ができることが特徴で、例えば、エアコンを使うと出力が減る、などといった微妙な変化や、可動式ダイナモにより、ステアリングを切った状態での計測も可能だ。さらには、四輪ごとに路面のミューを再現することができるため、例えば左フロントが氷に載った時に、その他の車輪にどのようにトルクが伝達されるか、などといったことも計測することができる。
DMTSは、東陽テクニカの「輸入商社からソリューションプロバイダーへ」という成長戦略に基づき、2017年1月に設立された同社の技術研究所の成果物としてリリースされるもので、技術研究所の所長には、ホンダF1チームで活躍した木内健雄氏が就任している。
DMTSについて木内氏は、「ラボで限りなく実走状態を再現するもの。パワートレインだけではなくシャーシの評価が可能になるので、シャーシ開発評価部門に向けて提案していきたい」と意気込みを語った。
またDMTSのビジネス展開については、セールスを担当する同社機械制御計測部統括部長の袋晴夫氏から説明がなされた。
「DMTSは、従来のローラータイプとは違い、穴を掘って巨大なローラーを設置するなどのコストが不要で、また四輪すべての計測を行うことができるため、コストメリットがある。1000馬力まで計測可能な大型タイプでも、設置やアフターフォロー含め3.5億円程度。ローラータイプと比較して費用は同程度か、安くなると思う。市場規模としては、新規導入・老朽更新あわせて国内で年間約100セットとみている。その中で、まずは年間5セットの販売を目安としたい。」
また新規市場として、自動運転の車両評価に向けた導入への強い期待をにじませた。
「自動運転車両が、障害物を検知したときに、どのように減速し、どのようにハンドルを切るか、ラボで評価したいというニーズを強く感じている。」とのことだ。