より上質にと少しやり過ぎた…駆動系開発責任者談【ホンダ ゴールドウイング 新型】

モーターサイクル 新型車
新型ゴールドウイング駆動系開発責任者、藤本靖司さん。
新型ゴールドウイング駆動系開発責任者、藤本靖司さん。 全 18 枚 拡大写真

「新しいゴールドウイングでは、第三世代7速DCTを新開発しました」(藤本さん)

東京モーターショーで発表され、来春新発売する新型ホンダ『ゴールドウイング』は、シームレスなシフトチェンジとダイレクトな駆動力を両立する7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を新採用。11月28日、ホンダ青山本社で開催した技術発表会で、駆動系開発責任者の藤本靖司さんにお話しをうかがった。

「長距離ツアラーとして高速巡航を考慮し、燃費や静粛性をさらに向上させるため7速化を図るとともに、手元のスイッチで操作できる微速前後進機能“ウォーキングモード”を追加し、さらにフラッグシップモデルに相応しく変速時の質感を大幅に向上しました」(藤本さん)

DCTは、ライダーをクラッチ操作と変速操作から解放し、加速やコーナリング、ブレーキなどファンライドに直結する車体操作に、より集中できることに寄与する。ホンダはこの考えに基づき、DCT適用モデルを増やしながら、その走りが楽しめるフィールドを広げてきた。

「現在では高いライディングスキルを持つお客様からも《スポーツバイクはマニュアルトランスミッションでなければならないという先入観を払拭できた》と評価をいただくなど、DCTのもたらす走りの楽しさ、充実感は高い評価とともにFun市場に広がりつつあります」(藤本さん)

DCTは2010年の『VFR1200F』に世界初搭載され、システムが確立されてきた。第二世代は12年の『NC700シリーズ』から用いられ、16年に発売した『CRF1000L アフリカツイン』ではDCT搭載車を選ぶ比率は約半分に迫っている。

使う人、使う場所が拡大してきたDCTもいよいよ第三世代となるが、今回のDCTではコンパクトにリバース機構が組み込まれた微速前後進機能「ウォーキングモード」を新たに追加した。

「従来のゴールドウイングでは、モーター駆動による電動リバースのみの機能であったため、車両の切り返し時には、R→N→Lowの操作を繰り返す必要がありました。これに対し第三世代DCTでは、エンジン駆動力と電子制御クラッチを使うことで、左手ハンドルスイッチのプラスボタン、マイナスボタンだけで微速前後進を可能とし、切り返しや駐車場などでの低速での取り回しがよりスマートにおこなえます」(藤本さん)

ウォーキングモードを実現した新構造により、リバースアイドルシャフトが不要になることに加え、従来の電動リバースに付随する補器類を廃止。また高強度材の採用とギヤ歯型の最適設計により歯幅の最小化を図った。これらの軽量コンパクト化によって、従来の5速マニュアルトランスミッションに対し、エンジン単体で約3.8kgの軽量化に貢献している。

「また、第三世代DCTの変速ギヤレシオは、低速側をクロスレシオ(ギヤ比を近づける)とすることで、変速時のエンジン回転数変化および駆動力変化の低減により変速ショックを低減させています。高速側は逆にワイドレシオとすることで、高速巡航時のエンジン回転数を低く抑え、従来モデルに対し大幅に静粛性を向上させています。各速度域での快適性が上がったのです」(藤本さん)

変速時の音の原因を探り、シフトフォーク両端やマスターアームに緩衝を目的としたダンパーラバーを追加。クラッチとメインシャフト間にはトルクを吸収するスプリングダンパーを設け、変速時にドグクラッチが勘合する際の音も低減した。

「少々やり過ぎた感がありますが、ここまでやらなくてはフラッグシップモデルであるゴールドウイングに相応しい上質な変速フィールは達成できないと考えました」(藤本さん)

こうしてシフトチェンジ時の質感を高め、緩急自在の7速化も果たし、取り回しに便利なウォーキングモードも追加した新型ゴールドウイングのDCT。ハイウェイクルージングで、駐車場での取り回しで、早く試してみたい。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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