トヨタ鯉渕常務理事「すべての人が自由に移動できる社会を」---自動運転開発の取り組み

自動車 ビジネス 企業動向
トヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 先進安全先行開発部 常務理事の鯉渕健氏
トヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 先進安全先行開発部 常務理事の鯉渕健氏 全 1 枚 拡大写真

12月5日、一般財団法人日本自動車研究所(JARI)主催の「第5回 自動車機能安全カンファレンス」が開幕した。

自動車業界の機能安全活動の裾野の拡大、および自動運転技術開発の促進を図ることを目的とするもので、テーマは昨年に続き「自動運転に向けた機能安全・セキュリティ技術の最前線」。

基調講演には、トヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 先進安全先行開発部 常務理事の鯉渕健氏が登壇した。講演テーマは、「トヨタの先進安全・自動運転開発技術への取組み」。鯉渕氏は、業界の動向を説明しながら、そのなかでトヨタがどう考え、何を目指しているのかを説明した。

「自動運転によって、安全、自由な移動、物流、新規ビジネスが変化し、モビリティを大きく変える可能性を秘めている。そうしたなかでトヨタが目指すのは、すべての人が安全、スムーズに、自由に移動できる社会を実現するために技術を突き詰めていく」

つづいて鯉渕氏は、運転の知能化の重要性について説明した。

「運転の知能化は3段階ある。最初の段階は、網羅的認識。すべての事象を認識して判断する方法だが、動きを予測しないので、動作が遅い。次の段階は、賢い判断。対象物の振る舞いを予想して対応するもの。周りの車のウインカーの点滅や、道路上の子供の様子を検知して動きを予測するもの。そして自己学習の段階。自動運転を実現するには、初めて遭遇した事象でも危なくないように動かなければならない。それには自己学習が必須だ。自分で学習して賢くなっていく。自動車と言う命を預かるもので安全にやる、という方法論を開発していかなければいけない」

高精度地図データについて、自車位置測位を高精度化するために必要だとした。「GPSの精度だけで自動走行を実現するのは難しい。GPSと自律センサー、3D地図データを組み合わせて高精度に測位する必要がある。そのほかにも空間情報は、道路の構造や交通ルールおよび信号の読み取りに利用する。3D地図データと情報とLiDARで検出した情報とを照合して、障害物検出するのにも利用できる。ただ、3Dの高精度な地図を全国津々浦々作るのはコスト的に不可能だ。いかに(地図データ作成を)自動化するのか、あるいは地図をいかに簡素化するのかということも重要だ」

トヨタの自動運転の開発シナリオについては、「今年の10月に『LS』を発売した。我々は自動運転とは呼んでいない。高度運転支援技術で、いわゆるレベル2に相当するものだ。2020年には、高度な地図を利用した自動運転を作りたい。ETCのゲートを入ってから、ゲートを出るまでの操作をほぼ自動でできることを目指している。合流や分流、レーンチェンジ、追い越しなど」

また開発面では、シミュレーションの活用が重要だとした。「あらゆるシーンを再現し、網羅性を確保することが必要だ。実走行とバーチャル走行を組み合わせ、シミュレーションを活用してあらゆるケースを再現する走行試験を実施する」

最後に鯉渕氏は「我々はこの技術によって、すべての人が自立して移動し、豊かな社会を実現することを目指していきます」と締めくくった。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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