【インタビュー】“空気を読む”AIを目指す…ホンダ AI研究開発グループ 安井裕司氏

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AIを搭載したホンダの電気自動車コンセプトNeuV(東京モーターショー2017)
AIを搭載したホンダの電気自動車コンセプトNeuV(東京モーターショー2017) 全 8 枚 拡大写真

自動運転の実現に向けたAI技術を読み解くため、業界のキーパーソンに各社の取り組みについて話を聞いた。第1回目となる今回は、本田技術研究所 四輪R&Dセンター 統合制御開発室 ADブロック 自動運転用AI研究開発グループ グループリーダの安井裕司氏。

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ホンダはパーソナルカーの自動運転を目指す


---:ホンダは2025年に自動運転レベル4の技術的な確立を目指すという発表がありました。

安井裕司氏(以下敬称略):はい。私達はパーソナルカーレベル4自動運転という言い方をしています。当社の場合は、レベル4モードだけを持った車というのは2025年には想定していません。高精度地図データがないエリアも多いと思われるので、多くの場合でレベル3になるのが2025年ということです。

一般道や郊外で地図が無いところもありますので、そういったエリアでは、状況に応じてここはレベル2で行きます、ここはレベル3で行けます、とユーザーと対話しながら走る、というのがパーソナルカーレベル4自動運転です。

---:高速道路ではレベル3ということでしょうか。

安井:ホンダとしてレベル3の高速道路全域は難しいであろうと考えます。全天候対応もやっていきたいと思っているので、その辺が厳しいだろうということです。

高精度地図データの重要性


---:高精度地図は自動運転には欠かせない要素になるのでしょうか。

安井:レーザーレンジファインダーでポイントクラウド(点群)を取得して、それを高精度地図と照合して自車位置を測定することがかなり楽になりますね。

また地図があれば、前もってどう走るということを計算して、走行軌道を地図上に乗せておくことができます。そうなると、見えないレールのある路面電車のような状態になりますので、あとは自動ブレーキやレーンキープなどのADAS技術を利用して、見えないレールの上を走って行き、障害物があったら止まる、あるいは車線変更して回避するという非常にシンプルな話になります。そうなるとレベル4の信頼性を維持しやすくなります。

本田技術研究所 自動運転用AI研究開発グループ グループリーダの安井裕司氏。

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人の動きを予測するAI


---:安井さんの専門領域である自動運転のAI開発については、どのような状況でしょうか。

安井:当社の場合は、(カメラやレーダーなどの)センサーのデータから物を認識して、人間と道路の関係がどうなっているかという交通シーンを理解して、さらに将来の行動を予測して、車が自分で自分の意思を決める。止まるのか、徐行で行けば大丈夫なのか、進路変更をすれば行けるのか、といった判断をする。この一連のシーンすべてにAIを利用します。

---:AI開発に際して、課題になっている点はあるのでしょうか。

安井:AIの開発は、データを集めるのが大変だとよく言われるのですが、もう少し効率良くできるのでは、という感触を感じています。今まではとにかくデータがたくさんあれば良い、という話だったのですが、データを効率良く取って学習する、という方法が出てきていますね。

---:それはシミュレーション技術を活用するということでしょうか。

安井:そういう面もありますし、CGの技術も活用できるのではと思います。異業種コラボレーションですが、ゲームの世界には素晴らしい技術があるので、CGを利用して効率良くできるので。

ただ一方で、まだまだ課題はあります。例えばシーン理解の部分です。人間は簡単にシーンを理解しますよね。例えば歩道から路肩に一歩下りた人間がいたら、この人は横断しそうだと理解する。

でもAIは、歩道から一歩はみ出して人がいる、ということしか理解できないんです。それが何を意味しているかという意味付けができないのです。

---:その人の意思や狙いが分からない、ということですね。

安井:そうなんです。車同士でもありますよね。ウィンカーを点灯してはいないが、なんとなく近寄ってきて曲がってきそうだ、と分かりますよね。

それから、アルゴリズムの信頼性ですね。深層ニューラルネットワークをだんだん解析できて学習も効率良くできそうという雰囲気はあるのですが、何百というパラメーターが収まったネットワークですので、未知の値が入った時におかしな答えを出さない、ということをどうやって保証するのかという点は難しいです。

消費電力は増すばかり


---:AIの消費電力が問題になっていますが、やはり消費電力の高いGPUを使わざるを得ないのでしょうか。FPGAという選択肢もありますが。

安井:FPGAの可能性もあると思います。その辺はまだ勝負がついてないと思ってます。GPUの方が今はまだパフォーマンスが優れていると言われていますが、ネットワークを小さくする技術はどんどん進化していますから、レベル3になった時にどうなっているのか。FPGAの進化もまたあるでしょうし、まだまだ分からないのかなと思っています。

---:消費電力の問題は、自動車メーカーにとって大きな問題になってきますか?

安井:なりますね。安心・安全ももちろん非常に重要な課題ですが、燃費規制はどんどん厳しくなってきていますし、CO2もすごく重要な課題になっています。

せっかくパワートレインのエンジニアが頑張っても、エネルギーをバンバン使っちゃうと怒られますよね。私はもともとパワートレインの制御をやっていましたので、お前何やってんだよ、燃費はどうしてくれるんだって言われちゃいますね。EVになるとダイレクトに電力ですから、距離に関わってきますからね。自動運転ができても走れる距離が短くなったら、本当にバッテリーのエンジニアに怒られますよね。

---:でもこのままだと、それも冗談にならないくらい電力を使ってしまうということですよね。

安井:そうですね、どのくらいかということは申し上げられませんが、どうしても悪くはなります。ただお客さまからすれば、やはり少ないエネルギーで長く走れるというのは重要なファクターであることも認識しています。

ホンダAI 進化の方向


---:ホンダの認知・判断・行動のAIには、どのようなアドバンテージがあるのでしょうか。

安井:ひとつはシーン理解ですね。この分野は最先端の研究でもほとんど論文が出ていないのですが、ホンダのシステムはそこにチャレンジしています。

最先端のAIを使っても、道路の構造と、人と人の干渉、信号などを考慮した人の動きの予測はまだまだ難しいのですが、ホンダが持っているモデルベースの制御技術、ロバスト制御などを深層ニューラルネットワークと組み合わせることによって、詳細に人の動きを予測できるようにしていきたいですね。

---:いわゆる、空気を読む技術というべきものでしょうか。

安井:空気を読むことはまだできないのですが、空気を読む一歩手前ですね。

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《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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