DIATONEの新型車載用スピーカー『DS-G300』が目指したものとは…開発者に訊く

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DIATONE・DS-G300
DIATONE・DS-G300 全 12 枚 拡大写真

今、もっとも注目を集めているカーオーディオ製品の1つである、「DIATONE」の新型車載用スピーカー『DS-G300』。この開発を担当した技術者から話を訊く機会が得られた。当機は、何を目指し、どのような技術で、どんな思いが込められて作られているのか…。

それらをじっくりと伺ってきた。取材に対応いただいたのは、以下のお三方だ。三菱電機株式会社三田製作所 カーマルチメディア製造第二部 設計第三課 仲田 剛さん、三菱電機エンジニアリング株式会社 三田製作所 電装機器技術第一部 CAN技術第三課 グループリーダー 須田隆亮さん、三菱電機エンジニアリング株式会社 三田製作所 電装機器技術第一部 CAN技術第三課 主任技師 近藤誠浩さん、以上の方々に、『DS-G300』のコンセプトからキーとなる技術、完成に至った今の思いまでを、たっぷりとお話しいただいた(以下、敬称略)。

■開発コンセプトは、「“聴いた瞬間に、恋をする。”スピーカー」。

まずはズバリ、『DS-G300』の開発コンセプトからお訊きした。

仲田「2013年1月に発売された『DS-G20』の後継機がそろそろ必要なのではないか、というところがそもそもの発端なのですが、技術と営業とでディスカッションする中で、単なる後継機であるならば作る意味がないという見解で一致し、まずは、“新機軸のまったく新しいスピーカーを作ろう”というところからスタートしています。

同時に、10万円以下の価格帯のスピーカーの中で、最高の製品に仕上げよう、とも話し合われました。

で、何を持って“新機軸”とするのか。これについては営業サイドから、以下のようなコンセプトが要望として挙げられました。“一聴して良さが分かる音、つまりは聴いた瞬間に恋をするようなスピーカーにしてほしい”と」

『DS-G300』のキャッチコピーである、“聴いた瞬間、恋をする。”は、コンセプトそのものだった、というわけだ。

仲田「今回は特に、コンセプトは明確でした。最初から最後までブレることなく、そこに向かって開発を進めていきました。

コンセプトはすんなりと定まったのですが、さてそれをどう設計的に形にすべきか…。続いてはそれについて話し合いました。音楽ソースに収められている情報はすべて出す、つまり“何も足さない、何も引かない”という“DIATONE”の思想から逸脱しないことを前提として、その上でどうするべきなのかを熟考しました」

■“歯切れが良く豊かな低音”、“ボーカル帯域の質の良さ”、“あたたかみのある音”等が目指された。

コンセプトに基づき目指されたのは、具体的にはどのような音だったのだろうか。

近藤「まずは、“低音”の鳴り方がポイントだと考えました。歯切れが良く豊かに低音を鳴らすことが目指されています。そのような低音を、デモボードやクルマのドアに取り付けてすぐに出せるスピーカーにしようと。そして、ボーカル帯域の音質の良さも重要だと考えました。トゥイーターとミッドウーファーの音をできるだけスムーズに繋げることで、それを実現させようと試みました。

また、“あたたかみのある音”にしたいとも考えました。どちらかと言えば“情熱的な音”というイメージです。『DS-G20』や『DS-G500』の音は、クールできっちりした音、というタイプなのですが、『DS-G300』ではそれらとは異なる方向を目指そうと。

須田「また、“ノリの良さ”もキーワードになっています。ぱっと聴いたときに、すぐに音楽に乗れるようにしたいと考えたんです。性能を追求するとそこに辿り付くのですが、歯切れよくリズムを刻めるスピーカーを目指しました」

仲田「ただ、“低音を歯切れよく豊かに鳴らす”ことは特に、簡単ではなかったですね。実をいうと“DIATONE”のスピーカーは、そもそも歯切れが良いんです。ダンピング性能が高く、振動板を素速く動かしピタリと止めることが得意なんですよ。しかしながらその性能が高いがゆえに、余韻や伸びが足りなく感じられるという傾向も、少なからずあったんです。

ハイダンピングを保ったまま量感をどう出していくか。この部分は開発過程において1つのキーポイントになりました。しかし、それが可能であるという確信は当初から持てていました。やりようは必ずあるはずだと考えながら、実際の設計作業をスタートさせました」

■最先端の構造解析技術でシミュレーションを重ね、設計を煮詰めていく。

続いては、目指された音を現実のものにするにあたっての、技術的なポイントをお訊きした。

仲田「技術的なポイントはいくつかありますが、まずは弊社独自の振動板素材、“NCVの進化”を挙げたいですね。“NCV”は今も正常進化を続けています。『DS-G300』に使われている“NCV”は、『DS-G20』が作られたときのものよりも高性能になっていることはもちろん、『DS-G500』、あるいは『DS-SA1000』と比較しても、部分的には優れた点も持ち合わせています。

具体的には、リブの入れ方が新しくなっています。より強度を高めるためにリブを端まで渡してあるのですが、これを可能とするためにリブを裏側から表側に通すという構造を採用しました。解析装置でシミュレーションを重ねて最適な形を模索し、仕上げました」

近藤「三菱電機は社内に最先端の技術研究所があります。 研究所と構造解析を共同で行い、シミュレーションで設計を煮詰めていけるんです。研究所なくしては、ここまでのスピーカーを作り上げることは不可能です。この構造解析技術があることこそが、技術的なポイントと言うこともできるのではないでしょうか」

須田「かつてだったら試作を繰り返して1つ1つ確認していたことを、三菱電機ではシミュレーションして予測できるんです。結果、最初の試作品の完成度がかなり高い。最終的には聴感で細部を煮詰めていくことになるのですが、完成度の高いところからそれを始められるんですよ。ここは強みですね」

仲田「“NCV”についても、他の部分についてもノウハウが積み上げられていますので、こういう数字のときには音はこうなるであろうと予測できる部分も多々あります。最先端の構造解析技術を持っていることと同じくらいに、ノウハウが積み上げられていることも、技術的なポイントの1つです」

■「制約の中でいかにそれを超えた音が出せるか。そこにやり甲斐がある」

最後に、『DS-G300』を完成させての思いをお訊きした。

須田「私は、『DS-G20』からスピーカー開発に携わっているのですが、『DS-G20』が完成した後、ここをこうすればこうなっていたのではないかといろいろと思いを巡らせていたんです。今回『DS-G300』を担当できることになって、考えていたことをいろいろと試すことができました。その意味では、今回はやりやすかったですね。

実をいうと、前回担当した『DS-SA1000』で相当苦労しました。今回の開発は、難易度としては『DS-SA1000』と同様でしたが、壁を越えられたという経験則が、今回に活かされていたのかもしれません」

近藤「私はフレームの構造設計と振動板の構造設計を担当したのですが、もっとも苦労したのは、フレームを6点締結から4点締結に替えたところですね。4点留めでありながらも、6点留めで得られていた強度を超えることを目指しました。フレームのデザイン案を活かしながら、工夫を凝らし、シミュレーションを重ねて、結果、それを達成することができました。フレームの作り込みは特に、かなり追い込めていると思っています」

仲田「価格帯が下がれば下がるほど制約も多くなります。そこに難しさがあるわけですが、私はむしろ、だからこそやり甲斐があると思っています。制約の中でいかにそれを超えた音が出せるか。

『DS-G300』の出来映えには、手応えを感じられています。使って納得していただける音になっていると確信しています。まずは店頭やデモカーでこの音を聴いていただきたいです。そして1人でも多くの方に気に入っていただけたらうれしいですね」

いかがだったろうか。かくして新機軸の音が目指され、多くの関係者の情熱と“DIATONE”ならではの技術力によって完成された『DS-G300』。この音にご興味があれば、ぜひともお近くの“DIATONE”取り扱いショップまでお問い合わせを。

「DIATONE」の新型車載用スピーカー『DS-G300』が目指したものとは…。開発者に訊く。

《太田祥三》

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