近江鉄道の電気機関車「無償譲渡」も検討…解体予定の10両

鉄道 企業動向
彦根駅構内に留置されている電気機関車群(2012年12月撮影)。12月5日に順次解体の方針が発表されていた。
彦根駅構内に留置されている電気機関車群(2012年12月撮影)。12月5日に順次解体の方針が発表されていた。 全 2 枚 拡大写真

近江鉄道(滋賀県)は12月8日、かつて貨物輸送で使用し、このほど解体の方針が決まった電気機関車10両について、申し出があれば無償で譲渡する考えを明らかにした。

近江鉄道は西武グループの鉄道・バス会社。米原~貴生川間など計59.5kmの鉄道路線を運営している。同社は戦後の1948年、砂利・セメントを運ぶ貨物列車の輸送力強化を目的に電気機関車を導入。トラックへの切替に伴い1988年までに貨物輸送を廃止したが、電気機関車は解体されることなく彦根駅(彦根市)構内に留置されてきた。

同駅構内には現在、ED31形5両(ED311~ED315)とED14形4両(ED141~ED144)、ロコ1100形1両(ロコ1101)の電気機関車が留置されている。近江鉄道は12月5日、「老朽化に伴い当社では継続的な保存が困難」とし、電気機関車を順次解体すると発表。解体開始前の12月16日に電気機関車を展示するなどのイベントを開催する予定だ。

近江鉄道の広報担当者によると、まずED31形3両(ED311・ED312・ED315)を12月中に解体する予定。残り7両も2018年以降、順次解体する方針だ。その一方で「引き取りたいという申し出があれば、解体を中止して譲り渡すことも検討する。その場合、機関車は無償で譲渡するが、輸送費は別途負担して欲しい」などと話した。

■「輸入から国産へ」転換期の姿伝える

ED31形は1923年、伊那電気鉄道(現在のJR飯田線の一部)のデキ1形として6両が新造された電気機関車。製造メーカーは芝浦製作所と石川島造船所で、凸型の車体を採用している。伊那電気鉄道の国有化後は国鉄が使い続け、1952年にはED31形に改称。1956年までに全車引退したが、5両が西武鉄道と近江鉄道に譲渡された。その後、西武鉄道に譲渡された車両も近江鉄道に移った。

ED14形は1926年に国鉄が導入した電気機関車。米国ゼネラル・エレクトリック(GE)が製造した輸入機で、箱形車体の両端にデッキを設けているのが特徴だ。東海道本線や中央本線、仙山線などで主に貨物列車をけん引した後、1962年以降に近江鉄道が4両を譲り受けた。

ロコ1101は1930年、阪和電気鉄道(現在のJR阪和線)が導入した日本車輌製造製の電気機関車。ED31形と同じ凸型車体を採用している。後に南海電気鉄道と国鉄を経て1951年に近江鉄道が譲り受けた。

日本の電気機関車は、明治から大正にかけて海外メーカーからの輸入で導入されていたが、ED31形・ED14形・ロコ1101が製造された大正末期~昭和初期の頃から国産機が導入されるようになった。近江鉄道の電気機関車は、輸入機から国産機へシフトしていく時代の姿を今に伝える貴重な車両といえる。

近江鉄道の広報担当者は「個人や企業、団体は問わないが、引き取り手がいなければ解体するだけなので、きちんと保存していただける方にお渡しできればと思う」などと話している。

《草町義和》

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