【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、2018年初めから第2世代安全技術展開…出遅れた車線維持アシストも

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トヨタセーフティセンス第2世代版
トヨタセーフティセンス第2世代版 全 5 枚 拡大写真

15年から展開のセーフティセンスは公約達成し、500万台に普及

トヨタ自動車の予防安全技術パッケージである「Toyota Safety Sense(トヨタ セーフティセンス)」が2018年の初めから第2世代に切り替わる。15年から導入してきた最初のシステムが計画通りに展開できたのを受けて進化版につなぐ。

第2世代では、対歩行者などの予防安全性能を向上させるとともに、トヨタが遅れを取っていた自動操舵で車線を維持する技術も導入、自動運転の要素も充実させた。年産1000万台メーカーであるトヨタの新パッケージ展開で、先進安全支援の技術普及が新年から一気に加速していく。

トヨタは15年からトヨタ セーフティセンスの車種展開を始め、“公約”としていた17年末までに日米欧で販売するほぼ全ての乗用車に導入する計画を達成した。累計装着台数はグローバルで約500万台に及んでいる。セーフティセンスを装着した約25万台の『プリウス』を1年間追跡調査したところ、追突事故は約5割低減、さらにペダルの誤操作を防ぐ「インテリジェントクリアランスソナー」も搭載したモデルでは約9割の事故低減効果が確認された。

現行のセーフティセンスは、機能やシステム構成などによって普及タイプの「セーフティセンスC」と中上級モデル向けの「セーフティセンスP」に分かれている。第2世代ではセンサーの構成を現行の「P」と同じ単眼カメラとミリ波レーダーに統一し、同時にセンサーなどの性能向上も図ることで、先行車や歩行者の検知機能を引き上げていく。

第1弾は上級ミニバンに搭載し、「C」と「P」は一本化

これにより、従来は昼間の歩行者にとどまっていた検知を夜間の歩行者と昼間の自転車運転者にも拡げ、衝突回避支援または被害軽減を図る自動ブレーキシステム(トヨタの技術呼称は「プリクラッシュセーフティ(PCS)」)のカバー範囲を広げた。

こうした予防安全技術の充実とともに、自動運転の要素技術である走行車線を維持するための自動操舵技術「レーントレーシングアシスト(LTA)」も新世代版の目玉となる。前方車両を追従するクルーズコントロール使用時に作動するもので、国内業界ではSUBARU(スバル)の「アイサイト」が先陣を切って14年に実用化、その後ホンダの「ホンダセンシング」や日産自動車の「プロパイロット」が同様の実用化を図っている。

モデル数も生産量も膨大なトヨタは、第1段階として事故低減に効果のある技術に絞って幅広い普及を図るという選択をしたため、LTA技術の展開では後手に回った。ただ、3年間でセーフティセンスを500万台規模に普及させたことは、スケールの大きいメーカーならではの成果であり、事故抑止への現実的な貢献として評価したい。

第2世代のセーフティセンスでは、センサーなどの基本仕様は統一される。トヨタによると搭載車種によって「C」と「P」に分けられていたグレードも一本化されるという。最初の搭載モデルは18年の初めに全面改良して発売される上級ミニバンシリーズになる。その後の普及についても、初代のセーフティセンスの時のように「数年内に日米欧のほぼ全ての乗用車に展開していく」(広報部)方針としている。

自動運転の先進テクノロジーを着実に蓄積

第2世代セーフティセンスの原型は、10月に発売した高級ブランドのフラッグシップであるレクサス『LS』の全面改良モデルに「レクサス セーフティシステム+A」というパッケージ技術で採用されている。ただし、新型LSの自動運転の要素技術はLTAだけでなく、日本車では初めて車線変更をサポートする「レーンチェンジアシスト(LCA)」も搭載し、フラッグシップならではの装備となっている。LCAは、ドライバーのウィンカー操作をトリガーに、クルマ側が周辺の道路環境を監視しながら最適のタイミングで、操舵や加減速をすることにより車線変更を支援するものだ。

トヨタは、高速道路のETCゲートの入口から出口までを合流や分岐、追い越し走行などをクルマ側が制御する自動運転システム「ハイウェイメイト」搭載車を20年に商品化すると表明している。「自動運転技術が注目されるものの、私たちは安全を最優先と考えている」(先進技術開発カンパニーの伊勢清貴プレジデント)というのがトヨタのスタンスだが、自動運転分野でも20年に向け、着々と先進テクノロジーを積み上げている。

《池原照雄》

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