【ボルボ XC60】困難の末に生まれたこのクルマは最も満足感のあるクルマでもある…ボルボデザインVP

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ボルボXC60
ボルボXC60 全 24 枚 拡大写真

日本カーオブザイヤー2017-2018を受賞したボルボ『XC60』は、コンセプトカーの『コンセプトXC』をベースに、極力そのデザインを生かすべく、開発されたという。

◇コンセプトXCから生まれたXC60

ボルボ独自のプラットフォーム、SPAの開発に乗り出した時、開発陣は「自分達のルーツに立ち返り、スカンジナビアンデザインとは何かを見つめ直すと同時に、お客様が何を求めているかということをもう一度考え直した」とは、ボルボデザインバイスプレジデントのジョナサン・ディズリー氏の弁。

そして、「オーソリティ、アクティビティ、クリエイティビティの3つのキーワードを見つけた」という。「我々のユーザーは地位のある方々で、法律家や医者、パイロットなどのオーソリティ。そして、アートや音楽、様々なライフスタイルを楽しみ、デザインにとても造詣の深い、つまりクリエイティブな方々だった」と分析。更に、「アウトドア、スキー、ウォータースポーツ、 ハイキングなどを楽しまれる方々がたくさんいた」と述べる。

そこでこの3つのコンセプトワードをもとに「オーソリティを『コンセプトクーペ』のデザインに表し、クリエイティビティに関しては『コンセプトES』として紹介。そして、 アクティビティは『コンセプト XC』として表現した」と説明し、このコンセプトXCからXC60が生まれたとした。

◇スポーティでダイナミックなエクステリア

ボルボが新型のXC60を開発する際、「プロポーションに軸足を置いた。クルマの車幅、スタンスなどから、ダイナミックでパワフルな佇まいを実現しようと思った」とディズリー氏。『XC90』との比較でも、「XC90はより高く、エレガントで荘厳だ。一方、XC60はスポーティで敏捷でダイナミック、クールな仕上がりだ」と明確に差別化していることを強調する。

また、サイドビューのシルエットでは、「初代モデルをショルダー部などで彷彿とさせながらも、ドア下部に削り込みを入れることで、デザインのハイライトがより下に来て、プロポーションが引き締まり、デザイン的にノイズを加えることなく、シャープなイメージを作った」という。

リアスタイルでは、「筋骨隆々とした豊満なフェンダーの張り出しがある。それによってホイールから上でよりダイナミックな雰囲気が出ているので、クルマが静止している時でもそうは感じられるだろう」とした。

SPAプラットフォームによって実現した、ボルボが提唱する高級感、エレガントさを醸し出すテクニック、ダッシュtoアクスルの距離は、XC60においても大きくとられている。これは、Aピラーの付け根からフロントホイールの中心までの距離を長くとることで醸し出す雰囲気を指している。ディズリー氏は、「これによってXC60もプレミアムカーセグメントに属するものになった。フードが長くなり高級感が生まれ、プレミアムカーセグメントに十分対応するデザインだ」と述べた。

◇スウェーデンの旗がポイント

インテリアについてディズリー氏は、「世界最高のもの」と自負する。「最初にこのデザインを作った時、私の息子はまだ3歳で、いろいろなおもちゃを持っていた。それをどこに入れるかを考え、SPAプラットフォームのテクノロジーを上手く利用して、座席の下など空いている部分におもちゃなどを入れられるようにした」とエピソードを披露。

また細部のフィニッシュまでこだわり抜いたことも強調。「流木をイメージした木目のデコレーション(加飾パネル)の長さだ。端から端まで全部木製で、これは本当に難しかった」と振り返る。その理由は、金属とプラスチック、そして木の膨張係数がそれぞれで違うことだった。

「この3つがくっつくと、そこに小さなギャップが開いてしまったりする。これをどうしたらいいかと1年かけて考えた」とその困難性を語る。その解決策は、「スウェーデンの国旗状のエンブレムを入れることで、膨張係数の違いをここで吸収することにしたのだ。0.5ミリぐらいの幅があるのだが、お客様から見るとここに3つの材料の交差があるとは見えないだろう」とした。

もうひとつ、「この自然のような流木のデザインを使いたいと最初にいわれた時に、いったいどこでそんな木が見つかるのかと思った一方、このゴージャスで自然な美しいスカンジナビアの木目をクルマの中に実現したいとも思った」とディズリー氏。この流木のデザインは「スウェーデン、イェーテボリの北東部にゴットランドというビーチがあり、そこの古いサマーハウスの木がまさにこういった感じで、ゴージャスで自然の美しさを体現している。その細かいところまで今回表現することが出来た」と満足そうだ。

◇本当に大変だった

最後に、XC 60をデザインするにあたって最初に考えたことについてディズリー氏は、「5年前には3つのコンセプトカーが全部出来上がった。しかし、コンセプトカーで素晴らしくても最終的に実現出来なかったという例はたくさんある。このコンセプトカー群は、世界中で賞をもらったので、絶対に実現させるべく、当時のデザイン担当上級副社長であったトーマス・インゲンラート(現ポールスターCEO)と話した。これを実現するのはものすごく大変だったし、こんなに大変だと思ったらやらなかったかもしれない。私が今まで手掛けた中で本当に一番難しかった。しかし一番達成感のある、満足感のあるクルマでもある」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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