立ちゴケしないバイク「ホンダよりも先に」…ヤマハ日高新社長インタビュー

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2018年1月1日付で新社長に就任するヤマハ発動機 日高祥博氏
2018年1月1日付で新社長に就任するヤマハ発動機 日高祥博氏 全 16 枚 拡大写真

ヤマハ発動機の社長に2018年1月1日付けで就任する日高祥博(※高は“はしごだか”)取締役上席執行役員はこのほど報道各社とのグループインタビューに応じ、自律的に前進する技術の活用で、いわゆる「立ちゴケ」しない2輪車の早期実用化に意欲を示した。

----:11月の社長交代会見で、ヤマハ発動機を次のステージに成長させていくと抱負を語っていましたが、ひと回り大きなヤマハ実現に向けた道筋は

日高取締役(以下:敬称略):売上高2兆円というのは既存事業のそれぞれの延長線上で、数年以内に達成しないといけない目標だと認識している。その先の3兆円に向けての伸びシロとしては、まず2輪を始めとするモビリティが現在、1兆円以上ある。ここはもうちょっと頑張ればプラス3000億~4000億円というのが期待できる。

マリン(船外機、ボートなど)は2018年に売上高3000億円という中期経営計画目標が射程圏内に入っている。ここも頑張れば5000億円が狙えるのではないかと考えている。モビリティとマリンの2つでおそらく2兆円くらいの規模感はいける。

一番の課題はロボティクスで、全体の売上高1兆6000億円強の中で、まだ1000億円そこそこの事業にとどまっている。だが、省人化や、スマートファクトリーなど色々な可能性があると思っている。現在の1000億円の水準を単に1500億円にするというよりは、3000億円、4000億円、5000億円という形で育てていけるように投資を今やっておかないと、すぐには効いてこないだろうと考えている。

モビリティやマリンは、2018年は今取り組んでいることの延長線上で取り組むが、ロボティクスは、それよりもレベルもスピードも上げて、リソース投入を増やして取り組んでいく必要があると考えている。
ヤマハ コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市)
----:4輪開発プロジェクトの進捗と事業化の可能性について

日高:研究開発は続けている。ヤマハは、モビリティの新しい価値を提案するのを得意としてきた会社。逆にそういうことをきちんとやっていかないと、ポジションを維持していくのが難しい面もある。モビリティの可能性を考えていくと、ひとつの出口として4輪は当然あるだろうと思って取り組んでいる。

ただトヨタやホンダ、日産がやっているような自動車をうちが造っても勝てないことはわかっている。ヤマハらしい4輪とは何か、違いが出せるのか。数百億円規模で、投資が少なくて済む、さらにヤマハらしいキビキビした走り(を実現する)、そういった車体構造のアイディアは出ている。それが成立するかどうかというのを今、研究している段階。それがモノになれば是非「どうですかみなさん」と披露したいが、まだちょっと時間がかかる。

----:4輪の世界では電動化への動きが加速していますが、2輪の電動化対応は

日高:電動バイク『E-ビーノ』を出しているが、(実走行で)航続距離20kmちょっとというのが実力値で、三重苦に陥っている。ひとつは遅い。最高速を上げると電池がさらに早く切れてしまうので遅くなってしまう。また毎日充電、場合によっては1日2回しなければいけないということで面倒がある。3つめは、E-ビーノとガソリンのビーノは同じ値段で売っていること。本来ならコストが高い分は、お客様に負担して頂かないとやっていけないが、今は数が少ないので同じ(値段)で頑張っている。

それでもE-ビーノを選んで頂けるお客様は非常にレアだと認識しており、機能性、利便性、コストを考えると電動化がすぐに広がるとは思えない。ただ各国の規制が強まれば、待ったなし。すぐに出せるようにと、とにかく開発のスピードを上げている。今は原付1種クラスだけだが、原付2種クラスも含めて電動の商品はローンチしていく。
ヤマハの電動バイク「E-ビーノ」
----:2018年1月に米ラスベガスで開催されるCES(コンシューマーエレクトロニクスショー)に初出展しますが、その狙いは

日高:ヤマハは色々な事業をやっているが、例えばAI(人工知能)であるとか自動運転、それから制御といった技術は、ヤマハの中だけでやっていてもなかなか広がっていかない、スピードも上がらない。ましてやすべての研究センターが(本社がある静岡県)磐田市近辺にあるので、外との接点が非常に少ないとも認識している。

CESには世界中からビジネス機会を探っているベンチャーや、色々なアイディアを持った人が来る。そこにうちはこんなことを考えている、こんなことを研究しているということを出すことによって、おそらく色々な接点が日本だけでなくグローバルで得られるのではないか。そこから提携であるとか、場合によっては資本参加、M&Aであるとか、様々な可能性も含めて、ヤマハの技術が実用化に向けてもっとスピードが上がるのではないか、というのが大きなCES出展への期待だ。

----:ヤマハが考えるモビリティの未来の姿は

日高:ヤマハのゴルフカートは実は電磁誘導といって、地面に埋設した誘導線からの磁力を感知して設定されたルートを自動走行する仕組みで、もう数十年もやってきている。当初は横転したり、誘導線から外れていってしまうなどの問題があったが、今は技術的には成熟期にあって問題なく無人で運転できる。安全も確保されている唯一の無人のモビリティだと思っている。

このゴルフカートを使って過疎の村とか道の駅をつないでいくような自動運転の実証実験がもう始まっている。安全が確保されている電磁誘導でやりながら、産業用ロボット事業で手がけているビジョンセンサーを使った自動運転の実験もおこなっている。こうした延長線上で社会貢献やビジネスにつながっていく可能性があるものが出てくるのではないかと楽しみにしている。
自律走行が可能なAI搭載バイク、ヤマハ「モトロイド」(東京モーターショー2017)
----:モビリティの中でもヤマハの柱である2輪の「次のあり方」とは

日高:わかりやすくいえば、「転ばない」ものをやはり目指していきたい。というのも、「立ちゴケ」というのが一番悲しいオートバイの傷付け方で、東京モーターショーに出品した『MOTOROiD(モトロイド)』(AI技術を搭載し、2輪のみで自立したり、自律走行が可能なコンセプトモデル)の技術がものになって、跨って「さぁいくぞ」というところまではオートバイが勝手にやっていきながら、ある程度スピードがついたら(自律機能が)フェードアウトして、自分が運転していく、というようなことができたら無駄な転倒(事故)がなくなる。

そういう技術を是非実用化して欲しいと、技術陣に発破をかけている。なかなかすぐに実用化できるわけではないが、ホンダも研究しているので「ホンダより先に出せ、絶対に負けるな」といっている。
ヤマハ発動機 日高祥博 新社長
日高祥博氏 略歴
1987年 4月 入社
2010年 7月 Yamaha Motor Corporation, U.S.A. バイスプレジデント
2017年 3月 取締役上席執行役員企画・財務本部長
2018年 1月1日付 代表取締役社長 社長執行役員

《小松哲也》

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