予測誤差を見越したHMIで不安をなくす…エスディーテック CTO 鈴木啓高氏【インタビュー】

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予測誤差を見越したHMIで不安をなくす…エスディーテック CTO 鈴木啓高氏【インタビュー】
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HMI(Human Machine Interface)は、コネクテッド、自動運転といった次世代カーにとって重要な技術のひとつだ。技術的に自動運転が可能だったとしても、人間が操作しにくかったり信頼できなかったりすれば社会はそれを受け入れない。

AIや制御技術の革新が進む中、次世代カーのインターフェイスはどのように考えればいいのか。エスディーテック 取締役副社長 CTO 鈴木啓高氏に聞いた。鈴木氏は、慶應義塾大学理学部で人工知能(当時はニューラルネットワーク)を研究し、仕事では音楽情報処理(楽曲データからジャンル分け)、携帯電話向け3Dレンダリングエンジンの研究開発などのキャリアを重ねていた。10年ほど前から人とかかわる部分の研究に興味を持ち、自動車のHMIが大きなテーマとなったという。

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―業界では現在レベル3、もしくはレベル4の自動運転に注目が集まっています。自動運転技術が発展する中、HMIの領域ではどのような議論がなされているのでしょうか。

2017年前半の議論では、運転制御のハンドオーバーをどのようにするか、どのように伝えるかがひとつのトピックになっていました。ドライバーに違和感なく、安全に制御を引き継ぎ、戻すための操作、注意喚起の方法と必要な技術についての議論が活発でした。機械学習を使った適応型HMIといった技術が研究されました。

しかし、現在はハンドオーバーや注意喚起以前の問題として、そもそも車が勝手に動いてくれるということに対する不安や抵抗感をいかになくすか、という点が重要だと考えています。自動運転を安全にする技術は日々進化していますが、人々にアンケートを取ると、「自動運転は信用しきれない」といったネガティブな意見が少なからず寄せられます。

この不安をなくすのは、機能安全の技術だけでは難しく、HMIが担う部分が大きいのです。おそらく、制御の切り替えや自動運転中のインターフェイスに加えて、普段なにもないときの運転操作やインタラクションを考える必要があります。自動車HMIをがらりと変える必要があるかもしれません。

―そこで取り組んでいるHMIは、具体的に車のどこまでが含まれるのでしょうか。

基本的にはコックピット全般ということになります。メーターやディスプレイまわり、香りやLEDリボンによるアンビエント効果といった技術があります。他にもシートを振動させるインターフェイス、助手席や後席とのインタラクションも考えることもあります。

UXという広い意味では、ペダルやスイッチの操作・配置、車に乗る前のスマートフォンなどとの連携、移動というサービスとして考えたHMIもあるのですが、あまり広げすぎると概念的な話から抜け出しにくくなるので、コックピットまわりが主な対象です。

―完全な無人走行が可能なレベル5では、HMIの設計は根本的に変わってくる可能性があると思います。現状のレベル2、3という正常進化の流れとレベル4、5のHMIは違うものになるのでしょうか。

たしかにレベル4、5では、車の設計や着眼点そのものを変える必要がでてくるかもしれません。しかし、現実的にはレベル4でもドライバーの存在は必要です。おそらく、現在の自動運転カーのアプローチと無人カーのアプローチの2つがあって、両者の混ざり具合がグラデーションを作るように変わっていくのではないかと思います。

―不安を取り除くという点については、どのように考えていますか。

自動車のHMIでは、ある操作に対して車が反応しているというフィードバックが重要です。こういう意図をもってこの操作をしたのだから、それに応じた動きをしてくれる。スイッチ、レバー、ペダル、ハンドルが、ランプ、音、振動その他が、車が操作に反応していること(していないこと)がわかれば、ドライバーは安心できます。このとき不安に思うのは、予測誤差があるときです。止まっているエスカレーターを歩くとき、最初の数歩が(変則的な段差のため)とても違和感がありますよね。これと同じで、自分が予測した反応と違った動きを車がするから不安になるわけです。

こういった不安の解消にHMIでできることはなにか、ということを考えています。さきほど自動運転していないときのインタラクションも必要という話をしましたが、たとえば、今車はなにを見ていて(カメラやセンサー情報)、なにを認識しているか、どういう状態にあるかを表示したり伝えたりすれば、なぜ車がこのような反応をするのかが理解しやすくなるかもしれません。

もう少し突っ込んだ話では、車はこう動こうとしているということを伝えることで、HMIの情報によってドライバーの意識を制御できないかと考えています。意識や反応を不安のない方向に誘導することもHMIの重要な役割です。

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《中尾真二》

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