JR東日本会見に県の関係者「そんなこと考えていたのか?」…信越線15時間半閉じ込め

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11日夜~12日午前中、大雪によって430人がとじこめられた信越線444M列車
11日夜~12日午前中、大雪によって430人がとじこめられた信越線444M列車 全 3 枚 拡大写真

信越本線上り線、新潟発長岡行き444M列車が、乗客430人を乗せたまま、雪の中で15時間半に渡って立ち往生した件で19日、JR東日本新潟支社の今井政人支社長らが会見を行った。

乗客を長時間閉じ込めることになったことについて今井氏は「430人全体をみていた。これからは一部分でも救済するということを考えている」と、謝罪した。

会見を聞いていた新潟県の関係者は、その発言に疑問を投げかけた。「そんなことを考えていたのか」。

JR東日本に対する地元の視線は厳しい。それというのも、同社は代替輸送のチャンスを、自らことごとく潰していたからだ。

444M列車が、東光寺駅~帯織駅で豪雪の安全確認のため停止したのは11日18時56分。除雪後に運行を再開したものの、土江踏切手前で雪を抱き、自力運行ができなくなった。

JR東日本は代替輸送を試みる。社内規程では30分以上の輸送障害が続くと見込まれる場合の、乗客の救済計画や除雪計画を定める。当初、この計画に沿って手続きを進めていたが「バス乗務員の手配が付かなかったことや、雪による視界不良があったので断念」(新潟支社広報室)した。

次の救済の機会は、12日2時30分頃のことだ。新潟県がJR東日本に対して「三条市から乗客救済の提案がある」と伝えた時だ。16日に会見を行った三条市の国定勇人市長によるとこうだ。

「JRさんと関係を持っているのは新潟県なので、そちらを通して2つの提案をした。一つは避難所の開設、もう一つは代替バスの運行をしましょうか、というもの。(JRさんの反応は?) ご推察の通りです」

三条市が提案したのは、マイクロバスによるピストン輸送だった。バスの定員は10人程度。避難所というのは輸送のための中継地点のことで、駅の待合室を利用した避難所で、送迎の間、一時避難をしてもらうという構想だった。

JR東日本は「バスの用意はありがたいが、搬送の順番で混乱することが想定される」と回答した。

新潟県によるマイクロバス代替輸送申入れには前段があった。三条市消防がJR東日本に対して「救急車も現場に近づくことができた。脱水症状の乗客も出ているようだが」と、救助の手助けを申し入れたのだ。それに対してJR東日本は「水や非常食は配布を考えている」と答えた。

JR東日本は自治体などによる救済を明確に断ったわけではないが、同社はこうしたやり取りを続けた後、自ら連絡をすることはなかった。単独での乗客救済にこだわったのだ。

11日19時過ぎに代替輸送を断念したJR東日本は、すぐに除雪車で線路を啓開する方法に切り替えた。運転不能になっている444M列車を救出に向かったのは、長岡車両センターから出発した除雪車だった。

11日22時30分頃には、除雪をしながら444M列車に近づくことを決めていたが、除雪が完了したのは、翌12日朝9時30分頃、11時間経過後だ。さらに444M列車が動けるようになるには、除雪車が側線に退避するのを待たなければならなかった。

除雪作業は、列車近くまで乗用車で迎えに来た家族に一部の乗客を引き渡すため、3回中断した。同社は12日3時30分頃に、人1人が列車から出られるだけの除雪路を開いていた。迎えがあった乗客は、そうして帰路に着くことができた。ただ、除雪車が走ると「乗客を降ろすことはできない」(新潟支社広報室)。乗客を降ろした結果、除雪の時間はさらに伸びた。

新潟県の申入れを受け入れていれば、乗客の開放が早まったのは確かだ。いっぽう、乗客を搬出する間、除雪作業はできないので運行再開は遅れることになる。新潟支社に考え方を聞いた。「最寄りの踏切までは500メートルほどあった。列車は田んぼの中を走っているので、用水路もあった。積雪の夜道を歩くことになると危険を伴う。車内には暖房も電気もトイレもある」。

JR東日本が会見を行ったのと同じ19日、米山隆一新潟県知事は、同社の対応をこう評した。

「状況を判断するのはJR東日本で、県や市はオプションの情報を提供してJR東日本をバックアップすることになる。今回、それらのオプションを利用していただけたかどうかというと、そうではないと思う。県も連携を作っておくべきだった」。

《中島みなみ》

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