駅裏、裏路地、高架下といえば、知る人ぞ知るうまいものが連なる穴場というイメージだ。今やそれが、新たなライフスタイルを提案するファッション・スポットに変わりつつある。
東急電鉄池上線、五反田駅~大崎広小路駅。建設から90年が経過し、耐震補強工事で長らく集うこともなかった駅間270メートルの高架下が、同社の「いい街、いい電車プロジェクト」で、新たなランドマークとしてよみがえった。何が今までの高架下とは違うのか。
シンボルとなる「STYLE-B(スタイル ビー)をたずねた。黒い格子のガラス張りの外観。高架下なのに店内が明るいのは、天井の開口部分からトップライトを取り入れているからだ。透明の網ガラスごしに通過列車を仰ぎ見ることができる。大崎広小路駅に向かってV字型に上下線の感覚が開いていく構造を利用した、五反田高架下だけのポイントを含むデザインは、広島県尾道市のサイクル・トラベルスポットを手掛けた若き建築家、谷尻誠氏と吉田愛氏が手掛けた。
「STYLE-B(スタイル ビー)」の店内で体験できるのは、自転車を中心にした生活。品川区が整備した新たな自転車専用道に面したブロックと、その奥に道路を挟んだ五反田駅寄りブロックの2つの区画で、自転車に関する異なる体験を可能にしている。
表通りに面した商品展示エリアは、ロサンゼルスで2010年に誕生したブランド「PURE CYCLE」を国内唯一扱う。用意されたイートインスペースは約20席。専門店「DOUGHUT PLANT(ドーナツプラント)」のカラフルなドーナツや、「旬八青果店」が作るお弁当などを味わうことができる。
もう1つの「STYLE-B」は、愛車整備や修理を任せられるピットエリアと、通勤などで自転車を利用するサイクリストが24時間いつでも使える会員制エリアで構成される。ピットエリアには、サイクリストあこがれの工具「PARK TOOL」が並び、ピット丸ごと時間レンタルも、近日スタートする予定で、2つのピットが用意されている。会員制エリアは、ゆったりと落ち着いたスポーツクラブのような空間。高価な愛車も安心して止められる駐輪施設と、着替えのできるロッカーやシャワーブースがある。また、商品展示エリアとピット・会員制の間には、近所の住人が利用できる大型のコインランドリーが用意されている。
つまり、暑い夏も寒い冬も「STYLE-B」を起点に自転車通勤。着替えて気分転換、次のライフステージへと移り変わることができるのだ。
13日にはこの「STYLE-B」のほかにも4店舗が開業。東急高架下初の醸造所を併設したクラフトビールバーや醸造所のビールを堪能できる熟成肉の店など、あわせて5店がオープンする。
「ただの飲食店ではない。楽しさや驚きを体験できる、人を呼び込む新たなシンボルにしたい」(都市創造本部・嶝俊輔氏)