スバル フォレスター 新型、ドライバーモニタリングシステムに注目すべき理由

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スバル フォレスター 新型(北米仕様)
スバル フォレスター 新型(北米仕様) 全 12 枚 拡大写真

スバルは9日、ニューヨークモーターショー2018で発表した新型『フォレスター』北米仕様の日本国内でのお披露目を行った。ここでは新たに搭載されたドライバーモニタリングシステムについて取り上げたい。

今回スバルが発表したシステムは、ダッシュボード中央に設置されたマルチファンクションディスプレイ(MFD)にカメラを仕込み、運転中のドライバーのわき見と居眠りを検知して警告を発してくれるもの。他にも、5名までのドライバーの顔を登録でき、搭乗するときに顔認識をして、シートポジションやドアミラーの位置調整、エアコンの設定、MFDに表示される個人の燃費情報などを自動で切り替えてくれる。

輸入車などにはシートとミラー位置(+チルトステアリング)のメモリ機能を持つものがあるが、フォレスターのドライバーモニタリングシステムは、それ+アルファの機能を顔認識で自動的に行ってくれる。なお、エアコンの設定はドライバーごとの好みをプリセットするのではなく、最後の設定状態を再現。プリセット方式は、天気や季節が変わるごとに調整が必要になるので、前回の使用状態を再現してくれるこの方式のほうが合理的だ。

顔認識には赤外線カメラを使っているので、夜間やサングラスでも問題ない。サングラスは赤外線の透過率が50%あれば認識可能だという。開発段階のテストでは、市販のサングラスの8割以上は問題なかったそうだ。

顔認識は、ドアロックを解除して運転席のドアを開けたときから開始する(イグニッションがOFFでも機能する)。そのまま搭乗すれば認識できるので、特別な動作や時間は必要ない。ドアを閉めると誰を認識したかをMFDに表示し、それぞれのシート位置などを調整し始める。

大衆車ほど、1台を家族で利用する可能性が高いので、シートメモリこそコンパクトカーやミニバンに必要な機能だ。これが北米仕様ながらフォレスターに搭載されたのはうれしい。

ドライバーをカメラで撮影し、運転への集中度、居眠りなどを検知するシステムはすでに実用化されている。乗用車ではまだ珍しいとはいえ、長距離バスやトラック、タクシーなどの運行管理システムでは比較的一般的な機能になっている。フォレスターのドライバーモニタリングシステムの特徴は何だろうか。

まず、カメラは光学式のカメラだけでなく近赤外線カメラを搭載している点を挙げたい。光学式のカメラはMFDの中央。近赤外線カメラはMFDの右(北米仕様:右ハンドルの車なら左になる)に配置される。カメラは広い範囲を撮影するものでドライバーだけでなく助手席の状態も撮影できるようになっている。近赤外線カメラはドライバー方向を集中して撮影する。

わき見の検知は、目、鼻、口の向きを識別することで行う。居眠りは目の開き具合(開眼度)を画像で計測することで行う。これらの計測により、ドライバーの状態を「居眠り」「強い眠気」「わき見」「眠気」の4段階で識別する。いまのところ、音とディスプレイ表示による警告のみで、ドライバーモニタリングシステムが直接アクセル・ブレーキ・ステアリング操作に介入することはない。しかし、アイサイトとは連携しており、例えば眠気やわき見を検知している状態は、アイサイトが発する警告やブレーキ等への介入タイミングを早くするように制御される。

なお、ドライバーモニタリングシステムは、サプライヤーから供給を受けるのではなく、独自設計・独自開発だ。ただし、カメラや画像認識については三菱電機の技術を利用している。三菱電機はモーターやバッテリーの技術だけでなく、V2X、センサー技術、画像認識技術、さらには準天頂衛星による高精度測位システム(QZSS)の技術と高精度3次元マップ処理の技術で先行する隠れたCASE技術サプライヤーだ。スバルの安心・安全には抜かりがない。

フォレスターのドライバーモニタリングシステムにあえて注目したのは、これだけではない。拡張性と将来を見据えたもので、今回の安全運転支援やインテリジェントなユーティリティとしての装備以上の広がりを感じたからだ。

まず、アイサイトとの連携は、自動運転支援から高度な自動運転への進化を強く示唆している。現状で衝突被害軽減ブレーキ(AEB)、レーンキープアシスト(LKA)、アダプティブクルーズコントロール(ACC)などを搭載する車両は少なくないが、これらは積極的な協調制御までは行われていない。ADASの延長であれば、これら個別機能をアドオンしていく形でもよいが、自動運転と呼べるようなシステムでは、複数の機能を統合制御する必要がある。

現在、ADASからレベル3(以上)を目指す車両開発において、必要な機能をまとめてひとつのシステムとして開発するアプローチがある。既存のADASコンポーネントを利用するものの、全体のネットワークや制御システムなどはほぼ新規設計となる。

これに対し、各ADASコンポーネントの自律性が担保され、それらを連携させるアプローチも考えられる。フォレスターのアイサイトとドライバーモニタリングシステムのリンクはこれに近い発想といえる。

どちらのアプローチが優れているかという話ではないが、後者のほうがよりモジュール開発が可能で、システムの冗長性や信頼性が高まる可能性がある。前者はいわば中央集中型の自動運転で、一部の故障が全体のトラブルや停止につながりやすい(そうしない設計も可能だが、通常システムを二重化するなど大掛かりになる)。コンポーネントが分散・自律的に機能していれば、最小限の縮退運転が可能になる。例えば、自動運転全体を制御するECUになんらかのトラブルが発生した場合、前者のアプローチでは自動運転機能全体を停止する必要がある(フルマニュアルに戻す)が、後者はAEBだけは自律できるACCは生きているという状態で済ませることができる。

もっと各論的な部分でいえば、カメラを赤外線と光学の二重構成にしたことは、将来的に防犯や顔認証への発展可能性があるといえる。赤外線カメラによる防犯カメラ、登録ドライバー以外のアクセス制御に応用可能だ。

もちろん、スバルが今後どのようなアプローチでADASや自動運転を進化させていくかはわからない。しかし、あくまでドライバーの存在にこだわり、安全機能の延長として自動運転を考える独自の設計ポリシーを貫くスバルである。ドライバーモニタリングシステムやそれに続く技術が楽しみだ。

《中尾真二》

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