スバル、米国頼みの1本足経営に潜む不安

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スバルの吉永泰之社長
スバルの吉永泰之社長 全 4 枚 拡大写真
SUBARU(スバル)が5月11日に発表した2018年3月期の連結決算は、無資格検査問題などもあり増収減益だったが、新車の販売は相変わらず好調で6期連続過去最高を記録した。

グローバル販売台数は前期に比べて2.4%増の106.7万台で、その内訳は日本16.3万台、米国67万1000台、カナダ5万7000台、欧州4万8000台、豪州5万8000台、中国2万7000台、その他4万5000台となっている。実に62.8%を米国で販売しているのだ。しかも、米国の生産拠点SIAの生産台数が約35万台なので、30万台以上を日本から輸出している。

今期は米国での販売比率がさらに上がり、64.2%になる。これは夏にSUVの新モデル『アセント』、秋に5代目『フォレスター』を投入するためで、70万7000台に増えると見ている。まさしくスバルは米国頼みの1本足経営と言ってよく、為替と日米貿易不均衡のリスクがさらに強まってくる。

吉永社長もそのことは十分承知しており、「常に気にしている。ただ1個1個のことに過度に反応しないほうがいいと思っているので、そのときの状況を見ながらわれわれができることをやっていく以外にないと考えている」と述べ、米国で新たに工場を建設することは考えていないそうだ。

「われわれとしては、SIAという工場の能力を20万台から最近になって40万台にまで伸ばしているので、努力を一生懸命しているつもりだ。ただ、それでも不均衡だという指摘を受けると思っている。しかし、われわれの体力ではもう一つ工場をつくるのは厳しい」と吉永社長は話す。

それはSIAの歴史を考えれば当然かもしれない。1987年に設立されたSIAは当初、生産台数が上がらず、合弁相手のいすゞ自動車に助けられていた。しかし、そのいすゞが2002年にSIAから撤退。いすゞ分のラインが丸々空いてしまったのだ。文字通り糊口を凌ぐ思いでSIAをやりくりし、05年にトヨタ自動車との業務提携によって『カムリ』を生産できるようになり、やっと窮地を脱した。

SIAがフル生産状態になって利益を生み出すようになったのはほんの5年ぐらい前なのだ。もしスバルが調子に乗って新工場を建設し、それが失敗したら、“一家心中”と言った事態を招きかねないのだ。

「どうしてもなんとかしなければならないとなった場合には、SIAという工場をさらに発展させることができるかどうか考えていくことになる。しかし、米国は好景気なので、ほとんど完全雇用の状態になっている。現地ではこれ以上雇用はできないと言われていて、非常に難しい判断になると思う」と吉永社長は頭を抱える。

7月には中村知美新社長のもとで次期中期経営ビジョンが発表されることになっており、今後のスバルについてどのような方針が示されるか要注目だ。

《山田清志》

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