信号が青に変わって加速すると、後続車はあっという間にミラーの中で豆粒になってしまった。この鋭い加速を味わってしまうと、都会でだけ使うのなら軽二輪スクーターはもう250ccである必要がないのかもしれないとさえ思ってしまう。とてもすばしっこいのだ。
スタイルも新しさに満ちあふれている。ロービームでは左右2灯が光り、ハイビームでは中央のライトも点くLEDヘッドライトを持つフロントマスクや、エッジの効いた筋肉質なボディは『TMAX530』らヤマハのスポーツスクーター「マックスシリーズ」ならではの洗練されたデザイン。
サイズ感はシティコミューターとして使うには丁度良く、同社の『マジェスティS』(こちらも排気量155cc)といい、フルモデルチェンジしたばかりのホンダ『PCX150』といい、これからの軽二輪スクーターのスタンダードは150クラスが主流になってもいいのかもしれない。街乗りに限っては……。
各部の質感も高く、フルデジタルの液晶メーターやステッチが施され足着き性を考慮し先端が絞り込まれた形状の2段シートなど所有感も満たされそう。シート下のトランク容量は約24リッターで、フルフェイスヘルメットも収納可能と積載力も充分だ。
そしてアルミ鍛造ピストンとオールアルミ製ダイキャストシリンダーを採用する「BLUE CORE(ブルーコア)」SOHC4バルブエンジンは、6000回転を境に切り替わる可変バルブ機構を持ち、低速では力強いトルク、高回転域では伸びやかなパワーを発揮する。
155ccだから高速道路にも乗れ、首都高など都市高速ならクルマの流れをリードできる。アクセルをワイドオープンすればグングン速度が伸び、都市高速のタイトコーナーも軽快に駆け抜けるから痛快でさえある。
ただし片側3車線ある本格的な高速道路だと、いちばん左をキープというのが現実的だから、高速道路を使って郊外へ頻繁に出掛けるなら250ccスクーターを選ぶべきだろう。マイペースでゆっくり走り続けるなら問題ないが、追い越し車線へは出られそうにない。
その反面、街乗り派には原付2種版(排気量125cc)の『NMAX ABS』も選べるのが嬉しい。車体は同一で、乗り比べしないと30ccダウンも気付かないほどにエンジンも力強い。経済性により優れ、注目度は155より高いかもしれない。
シティ派にジャストサイズで、車体にチープさはまったくない。155か125か用途によって選べばいいし、かつて「マジェスティ」がビッグスクーターブームを牽引したように、今度はNMAXがこのクラスを盛り上げていきそうだ。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。