【メルセデスベンツ Aクラス 海外試乗】トータルパッケージとして巧妙に考えられた快作…島下泰久

試乗記 輸入車
メルセデスベンツ Aクラス(A200)
メルセデスベンツ Aクラス(A200) 全 31 枚 拡大写真

新型メルセデスベンツ『Aクラス』の一番の目玉が、「MBUX(メルセデスベンツ ユーザーエクスペリエンス)」と名付けられた最新のユーザーインターフェイスだ。ダッシュボードには2枚の超薄型10.25インチスクリーンが並べられ、表示の多様なカスタマイズやスマホ感覚での操作が可能。そしてハイライトが「Hey Mercedes」の声で起動する、AIを活用した音声入力機能である。

特徴は、人間の自然な発話を理解すること。たとえば「寒いな」と言えば室内温度を上げ、「明日はサングラスが必要?」と聞けば、明日の天気が表示されるといった具合に、コンシェルジュと会話するようにして、様々な機能を呼び出すことができる。ボタンを押してダイヤルを回してクリックして次の階層に行って…というのは、もはや不要。ベタな言い方だが、まさに未来的感覚にあふれていて、これ目当てに乗りたくなるだけの魅力がある。

メルセデスベンツ Aクラス(A200)

今回はこれらのやり取りを英語で行なったが、もちろん日本語にも対応するのでご心配なく。但し、日本仕様も起動は「Hey Mercedes」になる模様。同乗者が居る車内でいきなりこうして呼びかけるのは、最初はちょっと抵抗というか、照れくささを感じるかもしれない。

クルマとしての基本性能も大幅に底上げされた。カッチリとしたボディに、しなやかな乗り心地、クラスの水準を超えた静粛性によって、これまで不満だった走りが劇的に進化。遂に“本物のメルセデスになった”という感慨を抱いた。特に可変ダンピング機構付きの快適性は、『Cクラス』をも脅かすほどだと言っていい。フットワークも上々。しっとりと上質なステアリングフィール、しなやかなのにキビキビとしたレスポンスは、コーナーの連続する場面を待ち遠しく思わせる。

メルセデスベンツ Aクラス(A200)

但し、リアサスペンションはグレードやタイヤサイズによってトーションビームとマルチリンクを使い分けており、試乗できたのはマルチリンク仕様だけだった。トーションビーム仕様の出来映えは、興味が募るところだ。

エンジンはA200が新開発の1.4リットルターボ、A250が2リットルターボとなる。いずれもピックアップに優れ、7速DCTとの組み合わせで、小気味良い走りを楽しませてくれる。特にA200は、排気量ダウンにも関わらず現行モデルより、むしろ扱いやすさが増していたのが印象的だった。これも不満だった燃費も、改善が期待できそうである。

メルセデスベンツ Aクラス(A200)

最先端のユーザーインターフェイスや、鮮度高いデザインで理屈抜きに「乗ってみたい」という気にさせて、実際にステアリングを握れば、その質高いスポーティさで「離れられない」と思わせる。新型Aクラスは、単に1台のクルマとして良くできているというだけでなく、それを楽しみ味わってもらうための舞台装置作り、すなわちこの時代にクルマに乗る意味や価値の提案まで含めて、トータルパッケージとして実に巧妙に考えられた快作と言っていい。まさに今のメルセデスベンツの強みがフルに活かされた1台。この総合力の高さに、セグメントのベンチマークの座を奪う可能性すら感じさせるのだ。

メルセデスベンツ Aクラス(A200)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島下泰久|AJAJ会員・モータージャーナリスト
1972年神奈川県生まれ。専門誌契約スタッフを経て1996年よりフリーランスに。走行性能だけでなく先進環境・安全技術、ブランド論、運転等々クルマを取り巻くあらゆる社会事象を守備範囲とした執筆活動のほか、エコ&セーフティドライブをテーマにした講演も行う。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。近著に「極楽ハイブリッド運転術」「極楽ガソリンダイエット」(いずれも二玄社刊)がある。

《島下泰久》

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