【ボルボ XC60ディーゼル 新型試乗】完全なバーゲンプライスと言って差し支えない…中村孝仁

試乗記 輸入車
ボルボ XC60 D4
ボルボ XC60 D4 全 14 枚 拡大写真

昨年、日本のカーオブザイヤーを獲得し、弟分となる『XC40』は既に2018年分が完売しているという絶好調のボルボ。カーオブザイヤーを獲得した『XC60』に待望のディーゼルが追加された。

このクルマ、正直待望だった。何故なら、よりコンパクトなXC40にはディーゼル版が設定されておらず、何と今後もディーゼルを設定する予定はないというからだ(因みに本国には有るのだが)。そしてボルボでは、今後とも内燃機関のみで動くクルマを削減し、2019年以降は必ずモーターが付く内燃機、即ちそれはハイブリッドを意味するわけだが、そちらにシフトしていくと宣言している。正直ちょっと早まっちゃったんじゃないの?という気がしなくもないが、それがボルボという一度決めたら突っ走る傾向のあるメーカーらしいところかもしれない。

現行ボルボでディーゼルの設定があるのは、上から60シリーズと40シリーズの『V40』まで。日本仕様はいずれも2リットル4気筒ターボディーゼルで、性能的にも差がなかったが、新たにXC60に搭載されたエンジンは少々様相が異なっていた。最大の違いはディーゼル・エクゾースト・フルード(DFE)なる、排ガス対応策が施されたことだ。つまりこれ、簡単に言えば尿素を吹くいわゆるSCRシステムである。ついにボルボもこれを付けた…というわけで、これが付いたからと言って性能は変わらず190ps、400Nmである。ただし、Noxの排出量は最大で90%も下げられるというから、付けるにこしたことはない。

同時に昨年ガソリンモデルがデビューした時は、最上級の「T8」がAWDのみであったのに対し、「T6」/「T5」はAWD、FWD双方の設定があった。しかし、新たに追加されたディーゼルは、インスクリプション、Rデザイン、それにモメンタムのいずれのグレードも、すべてAWDのみとなっているのが大きな特徴である。

とまあ、能書きはそのくらいにして春が終わりを告げ、初夏の装いとなった箱根周辺をこいつでドライブした。ボルボのディーゼルエンジンは車外音こそ大きいものの、一旦室内に入ってしまうとほぼ独特のカラカラ音が届かないほど静かで、快適。ところが今回はその車外音もだいぶ小さめにしてきた印象がある。勿論測ったわけじゃないからあくまで感じた印象だ。そんなわけで、室内は走り出してしまうとそれがディーゼルかガソリンかなどはどうでもよくなる。

ちょいと信じ難いことは、ガソリン仕様の低出力モデルT5(といっても254ps、360Nmの性能を持つ)はともにAWDで、それぞれモメンタムとインスクリプションの設定があるから、ディーゼルモデルと価格の比較をしやすいのだが、D4モメンタムとT5モメンタム、それにD4インスクリプションとT5インスクリプションの値段は全く同じなのである。通常はディーゼル搭載車がより高価になる。マツダの場合30万円高くなるのだが、ボルボは同額。これ、他メーカーと比較して完全なバーゲンプライスと言って差し支えない。ディーゼルファンにとっては本当に有難い価格設定だ。

と再び脱線したが、SCRを追加したところで走り、特にエンジンのピックアップとか、加速感などに変化はなく、相変わらず力強い。2155kgとガソリン車に比べてきっかり50kg重いが、箱根の登り坂をグイグイと加速する。その昔はこの坂を無事に登り切れるかどうかが一つの指標となっていたほどのきつい坂だが、今やそんなことは当然ながら過去の話。その力強さ際立つ。嬉しい誤算だったのはその脚が実に快適でしなやかになっていたことである。

あとで聞いたら僕が乗った試乗車が、唯一ノーマルサスペンションのクルマで、他はオプションのエアサスが装備されていたそうだが、これなら文句なくノーマルサスペンションをチョイスする。何よりボルボの良さは輸入車でしか表現できないお国柄を見事に発揮したインテリアデザインの良さ。これはライバルの追従を許さない、独特の世界観がある。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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