【スバル フォレスター 新型試乗】上級車の趣持つも、電動化への早急な取り組みが不可欠…御堀直嗣

試乗記 国産車
スバル・フォレスター新型
スバル・フォレスター新型 全 12 枚 拡大写真

新型『フォレスター』は、SUV(スポーツ多目的車)とはいえ、前型に比べ乗用車としての乗り味が大きく進歩したことを感じた。X‐MODEによる優れた悪路走破性を備えるとはいえ、日常的には市街地で利用される機会が多く、また休暇で出掛ける際にも高速道路など舗装路を長距離移動するはずで、そうした際の快適性が大幅に進化した。

走りが滑らかで、心地よい。そのうえ、タイヤが路面をしっかりとらえている様子が伝わり、なおかつ車体上屋(シャシーより上の居住空間)の動きが小さく安定していて、走行中の姿勢変化に対し安心が高く、乗員にとって快適な乗り心地である。プレミアムSUVとは自ら語っていないが、上級車の趣を持つ。

一方、動力性能については物足りなさもあった。排気量2.5リットルの直噴ガソリンエンジンは、一度回転数が落ちたときに毎分2500回転あたりでトルクの谷のような応答の鈍さを感じることがあった。それなりの排気量を確保しているとはいえ、水平対向であるが故のショートストロークエンジンでなければならない苦しい側面ではないだろうか。

新たに加えられたe‐BOXERは、走り出しで若干モーター走行が可能だが、加速させていると間もなくエンジンが始動する。その際、モーターが摩擦損失を感じさせない力の出し方であるのに対し、エンジンが始動したとたん摩擦損失による抵抗を感じ、アクセルペダルをより深く踏み込む必要がある。その抵抗感は、他社の直列4気筒エンジンより大きく感じられ、いっそのことメルセデスベンツの直列6気筒+ISGのように、モーター走行無しでエンジン出力にモーター出力を重ねていく活用の仕方が向いているのではないかと思った。

特設の悪路でX‐MODEを使う試乗もしたが、こちらは文句ない走破性であり、その際、前方を映し出すカメラ映像が進路を確認できることに役立つのはありがたかった。

操縦安定性や乗り心地では大きな進歩を実感させた新型フォレスターだが、パワーユニットはもはや時代に遅れた感があり、電動化への早急な取り組みが不可欠と思わせた。すでに時代は動き、電動化し諸性能を高めればよいのではなく、成熟し感性に優れた電動車両が求められている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★
フットワーク:★★★★
おススメ度:★★★

御堀直嗣|フリーランス・ライター
玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

《御堀直嗣》

御堀直嗣

御堀直嗣|フリーランス・ライター 玉川大学工学部卒業。1988~89年FL500参戦。90~91年FJ1600参戦(優勝1回)。94年からフリーランスライターとなる。著書は、『知らなきゃヤバイ!電気自動車は市場をつくれるか』『ハイブリッドカーのしくみがよくわかる本』『電気自動車は日本を救う』『クルマはなぜ走るのか』『電気自動車が加速する!』『クルマ創りの挑戦者たち』『メルセデスの魂』『未来カー・新型プリウス』『高性能タイヤ理論』『図解エコフレンドリーカー』『燃料電池のすべてが面白いほどわかる本』『ホンダトップトークス』『快走・電気自動車レーシング』『タイヤの科学』『ホンダF1エンジン・究極を目指して』『ポルシェへの頂上作戦・高性能タイヤ開発ストーリー』など20冊。

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