【MaaSベンチャー】カスタムパーツはアジアからの強いニーズがある…MiddleField CEO 中山翔太[インタビュー]

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MiddleField CEOの中山翔太氏
MiddleField CEOの中山翔太氏 全 3 枚 拡大写真

モータースポーツを中心に、クルマ・バイクをもっと楽しくするメディア「Motorz」と、国内最大級のカスタムパーツ通販サイト「モタガレ」を運営するMiddleField株式会社。設立してまだ3年足らずのベンチャー企業である。

モビリティがサービス化し、所有から使用へと向かっていくなか、趣味性の強いウェブサービスを展開する同社は、どのような想いで起業し、どのようなロードマップを描いているのか。CEOの中山翔太氏に聞いた。

モビリティビジネスをスマートサービス化し、業界を変えようとするMaaSベンチャーの4人の経営者がその目論見を語ります。詳しくはこちら。

起業の原点


---:御社が運営する2つのウェブサイトについてお聞きします。まず「Motorz」についてですが、これはレースシーンを取材してレポートしているウェブサイトですね。どのようなきっかけで始めたのですか?

中山氏:はい。もともと僕は前職が「LEXUS TEAM SARD」というレーシングチームで働いていたのですが、そのなかで、モータースポーツの熱気を肌で感じていました。

年間で40万人も動員しますし、富士スピードウェイのレースだと10万人も集まるんですよ。「そんなにたくさんの人が集まるレースって凄いな」ということで、レースの世界にのめり込んでいったのですが、ふと気が付くと、ファンの方の顔ぶれが毎年同じなんですよね。若い人があまり来ていなくて、だんだんと平均年齢が上がっている気がしていました。

ですので、若い人に向けて車の楽しさやモータースポーツの楽しさっていうのをまずは伝えていきたいなっていう思いで、会社を立ち上げて仲間を集めてスタートしたのがこのMiddleFieldという会社です。

それで、一番最初に「Motorz」というウェブサイトを始めました。レースなどを中心に追いかけてレポートしたり、レーサーの人に「あなたにとってレースって何ですか?」というインタビューをして紹介していく、そんなメディアです。

そういった活動をしているうちに、(レースやカスタマイズ用の)パーツの入手や販売の課題に気付きました。インターネットでパーツを買おうとしても、「どのパーツが自分の車に付くのかわからない」「買ってみたけれど付かない」というようなことが起きていたのです。その課題を解決しようということで始めたのが「モタガレ」というサイトです。

---:レース業界を出発点に、見つかった様々な課題をオンラインで解決してきたのですね。

中山氏:はい、そうですね。

モタガレについて


---:モタガレは自分のクルマに合うカスタマイズパーツを探せるECサイトですね。

中山氏:はい、そうです。まずトップページから自分の車を検索します。例えば、『86』で検索すると、取り付けられるパーツだけが出てきます。

---:たくさん出てきますね。これらはパーツメーカーが直接出店しているのですか?

中山氏:はい。メーカーと直接契約して出品してもらっています。今ようやく800社くらいに増えてきました。業界全体で2000社くらいなので、これでだいたい業界の半分くらいの数ですね。

---:ここで買った人はどうやってパーツを取り付けるんですか?

中山氏:購入していただいた方には、当社が提携している全国約300店舗の取り付け店のネットワークを紹介しています。300店舗で日本全国をカバーしています。

いまはその都度メールなどでお客様をサポートしていますが、今後はパーツ取り付けの予約システムを作って、オンラインで予約ができるようにしたいと思っています。

---:取り付け店舗は具体的にはどんなお店ですか?パーツショップのようなところですか?

中山氏:パーツショップもありますし、板金屋さんもあります。当社が持っている300店舗のリストは、対応可能なパーツや自動車メーカーをきちんと確認済みですので、ここであれば取り付け可能、という店舗を探すことができます。

---:取り付け店舗から見ると、パーツは持ち込みという形になりますよね?

中山氏:はい。場合によっては持ち込み料金がかかる場合もありますが、それも含めて対応可能であることを確認済みです。

---:純正部品は取り扱っていないんですか?

中山氏:それは扱っていないです。やはり一番ニッチなところからスタートして、コアなユーザーに知ってもらうために、カスタム領域に絞っています。そのうえで、ここ1年間はパーツメーカーをひたすら口説いていくという活動をしていました。

その結果モタガレは、カスタムパーツでは一番商品件数が多いサイトになりました。アマゾンには出店してないけれど、うちだったらやる、と言ってくれるショップも多いです。これからは徐々に、もう少しライトなパーツ、ドリンクホルダーやワイパーブレードなども扱っていきたいですね。

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MaaS時代に向けて


---:MaaSの時代になっていくと、移動手段としての乗り物と、趣味のクルマというように二極化していくと思います。自動車メーカーも、例えばトヨタで言うと、『eパレット』を発表するいっぽうで、GRというスポーツカーブランドを立ち上げています。

中山氏:そういう趣味性の高いクルマはカスタマイズのニーズがあると思います。そういう時代に向けて、内外装も含めていろいろなパーツを取り扱うプラットフォームを今のうちから作っていきたいと考えています。

今後のビジネス展開


---:現時点では、モタガレが御社の事業の中心になっているのですか。

中山氏:そうですね、モタガレがメインになっています。今後はパーツだけでなく、車検も扱っていきたいと思っています。提携工場のネットワークがあるので、日本全国車検の予約ができるようにしたいですね。

ディーラーの車検だけじゃなくて、最寄りの整備工場でも安く車検が受けられるということを知らない人も多いので、モタガレでそういうところを紹介できるようにしたいです。

車を維持する、楽しむうえで知識や経験が要求されるという課題を、モタガレというプラットフォームで解消していきたいと思っています。

---:モタガレはオープンして何年目になりますか?

中山氏:まだ約1年半くらいですね。ページビューも順調に伸びていまして、ユニークユーザー数も50万人ほどになりました。

---:ページビューが伸びると売り上げも伸びる形ですか?

中山氏:そうですね。広告はほとんど出してないのですが、モタガレのなかに当社で制作した記事コンテンツを掲載しているので、その記事をきっかけにサイトに来ていただいたり、パーツを購入してくれるお客さまも増えてきています。

---:モタガレで調べてほかのショップで買う、という人もいそうですね。

中山氏:そうですね。モタガレはメーカーとの約束で定価販売なので、そういう人もいると思います。ただその分僕らはサービスで売っていきたいと思っています。カスタマーサポートや取り付け店の紹介に力を入れていきます。

あとは検索の優位性がありますね。他のサイトでは自分のクルマに合うパーツを探すのにとても苦労するのですが、モタガレでは、車種で検索するだけで適合するパーツがリストアップされます。これは他のサイトには真似できない点です。

---:パーツメーカーや販売店は、オンラインで売るより、自分の店舗に来てもらったほうがありがたい、ということはありませんか?

中山氏:そういうことも言っていられない状況になってきています。お客さまの数がどんどん減っていますし、売れているところと売れていないところの勝ち負けがはっきりしてきていますからね。

海外からの強いニーズ


---:認知が進んでいないブランドにも販売面で貢献することで、業界の底上げをしていこうということですね。

中山氏:そうですね。パーツメーカーはすごい技術を持っているのに、なかには業界の先行きを不安視して諦めムードのような人もいます。けれど、僕らからしたらまだまだチャンスがあるし、何よりもいま、海外からの日本のパーツの需要がすごく高いんです。中古車がどんどんアジアに輸出されているので、日本のパーツが欲しい人がいっぱいいます。

ただ、彼らは買う手段がないので、来年からは、海外へパーツを販売するスキームもやっていこうと考えています。

今後の展望


---:御社が目指すミッションの実現に向けて、山登りで言うといまは何合目くらいでしょうか。

中山氏:そうですね、いまやっと2合目くらいまできた感じです。サービスを始めてパーツメーカーの協力を得られるようになって、やっと2合目かなと。今年中に1500社との提携を目標にしています。

---:優先順位としては、まず品揃えを充実させたいということですか?

中山氏:まずはそうですね。そして次のステップとして、ユーザーを集める段階があると思ってます。それから次のテーマとして動いているのは海外でのパーツ販売ビジネスです。いまはリサーチの段階ですが、パーツメーカーからは「やってくれないか」という問い合わせをいただいており、ぜひやらせてくださいと応えているところです。

ただパーツを売るだけではなくて、パーツの送り先の問題や取り付けの問題もありそうなので、取り付け店舗を現地に作ってしまうことも考えています。アジアの若い人たちで、日本の整備学校に留学していた人が結構いるので、彼らに協力してもらって店舗を出すという構想です。彼らはある程度日本語ができて、日本の車のことも勉強していますので。

モビリティビジネスをスマートサービス化し、業界を変えようとするMaaSベンチャーの4人の経営者がその目論見を語ります。詳しくはこちら。

《Koichi Sato / Kazuya Miura》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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