アジアの国々を歩いていると出くわす懐かしい昭和の名車の数々。我々アラ還世代は、子供のころの情景や青春のワンシーンに重なるモデルに出会った時思わず『きゅん』と心がときめいてしまう。今回はそうしたクルマをご紹介したい。
◆トヨタ カローラ30(さんまる)
マレーシア、インドネシア、タイなどで現在も見かけるトヨタの『カローラ』の3代目。1974から5年間の期間であったが、歴代カローラの中で最もたくさん生産され世界各国に輸出もされたモデルである。
ASEAN各国でも日本から部品を輸出しCKD(コンプリート・ノック・ダウン)生産されていた。メーカーが現地生産し販売していたためアフターパーツの入手性も一定時期まで確保されていたため、40年以上経た今でも生き残っていると思われる。K型というOHVのメカニズムを持った商用車にも使える極めて汎用性の高いエンジンを搭載していたのも長持ちの要因。
日本では昭和の後期モータリゼーションを牽引したモデルで、『世界のカローラ』を不動の地位としたモデル。実際の足としての実用用途だけでなくこのデザインが大好きなマニアも多く、レプリカ製造ビジネスもアジアの各地で行われている。
◆トヨタ ランドクルーザー FJ40
現在も各国で見かける『ランクル40』。東南アジアでも愛好家に大人気のモデルであると同時に、インドネシアの火山地帯など観光地ではラフロード小旅行用途で現役として活躍している。このモデルの人気にあやかろうと 『FJクルーザー』というモデルが2000年に入って米国や日本などで発売されたが、一台で生産中止となってしまった。
また、このモデルの後で発売された「ランクル100」が復刻版のレトロモデルとして最近発売されたが、販売量はわずかで風前の灯。世界的にレジェンドと呼べるランクルはやはりこのFJ40でなないだろうか。古くてもオリジナルの方が価値が高い、VWのビートルやBMWになる前のミニのような存在ではないだろうか?
◆トヨタ ハイエース
ジャカルタでこれに遭遇したときは正直びっくり。子供の頃近所の畳屋さんや工務店がこのモデルを使っていた。このモデルもアジアで70年代にCKD生産されていた。この『ハイエース』は現在も個人オーナーの輸送ビジネスに使われていて全くの現役。キャブオーバータイプなので全長に対しスペース効率に優れ、FRのフレーム付きで耐久性も抜群。フレームの上にデッキを載せればピックアップ、ボディを架装すればワンボックスになるという便利なクルマ。
このピックアップはたくさん荷物を積んで何年もオーナーのビジネスに貢献してきたと思われる。1970年代末にインドネシアで生産打ち切りとなった後も、メンテ部品をアフターマーケットから入手しながら、使ってきたのであろう。
日本で初代ハイエースが登場したのは1967年。すでに50年が経っており、その間キャブオーバータイプとすべきか欧州のスタンダードであるセミボンネットタイプとすべきかという議論がトヨタで何度もなされてきたようだが、現在はこのキャブオーバータイプに帰結しているようだ。結果的には長い間世界中で愛され現在も10万台以上販売され保有台数も半端ないモデルといえよう。息の長い隠れたトヨタのベストセラーと言って良いモデルであろう。
三菱 L300
インドネシアで現在も生産されている三菱の『L300』。日本では『デリカ』という名前で、1ボックス市場の昭和の名車の一つ。当時はハイエースと同じくキャブオーバー構造でピックアップとワンボックスの2モデルを持っていたが、現在のデリカは日本ではワンボックスタイプの多人数用途の高級乗用車となってしまった。
ハイエースと同時期に各国で生産されていたが、現在はインドネシアのみで生き残っている。驚くべきことにほとんどデザイン変更をせずに40年近く同じモデルを作り続けている。設計の古さがインドネシアの使用環境に合致しており、トヨタなどの競合がいなくなった後の独占市場となっており、三菱がこれまでインドネシアで大きなプレゼンスを持っていた一ひとつの要因ともなっている。
モデルチェンジで販売を引っ張る乗用車とは異なり、商用車は部品の入手性や販売店のない場所でのサービス性などが重要で『モデルチェンジしないことがバリュー』であることを三菱はよく理解しているようだ。
<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。