批判もバネに、「ドルガバ」をまとった新型 クラウン の挑戦…清水和夫

自動車 ニューモデル 新型車
トヨタ クラウン 新型
トヨタ クラウン 新型 全 19 枚 拡大写真

サッカーのW杯が終わって、なんだか寂しい気がする。前評判は高くなかったが、大健闘したサムライ・ニッポンのキャプテンを努めた長谷部選手が帰国後のインタビューで語った言葉が印象的だった。

「無関心なファンが怖かったです。予選を勝ち残るにはあまりにも厳しい組み合わせだったので、決勝に行ける確率は数%もないと厳しい意見がありましたが、実はその厳しさが私たち選手を奮い立たせたのです」

なるほど。批判をバネにしたことで、あの感動を生み出したのだ。

そのW杯開催中、日本代表がグループリーグでセネガル代表と戦った日に、トヨタの事実上のフラッグシップとなる『クラウン』の新型が発表された。

事前に、レクサス『LC』・『LS』のプラットフォームを使うということを知らされていたため、走りへの期待は持っていたが、スタイリングまで刷新して登場した新型クラウンは、想像以上に変貌を遂げていた。

それでも、クラウンといえば、これまで高齢者の高級車と認識されてきた。そこでユーザーの平均年齢を若返させるのが、新型のコンセプト。その若返り作戦の第一弾は一新したスタイリングだ。オッサン臭い保守的でオーソドックスな3ボックススタイルを捨て、4ドアクーペ風のリアスタイルをデザインしたことで、サイドビューは4ドアクーペ風のスタイルに大変身。特に、見事に若返ったクールなリアデザインを見ると、まさかこれがクラウンだとは思わないだろう。バックミラーに映るフロントマスクは紛れもないクラウン顔ではあるが、ダボダボスーツからドルガバ(ドルチェ&ガバーニ)を纏ったクラウンは、若返りに成功したといえよう。

大きく変わったのはデザインだけではない。走りはFRの醍醐味を感じるほどセクシー。最上級の3.5リットルハイブリッドは、私でも「やり過ぎ」と思うほどホットな走りを披露する。常識的には2.5リットルのハイブリッドが主力だろうが、意外にも2リットルターボ(8速トルコンAT)も魅力的だ。

新型で15代目となるクラウン。トヨタの屋台骨を支えてきた、伝統的なモデルゆえに、時代の変化についていくのが大変なようだが、チーフエンジニアの秋山さんとは、先代モデル登場時に激論を交わしたことがある。その時、芯の強いエンジニアと、頑固一徹のトークバトルはドローに終わった気でいるが、批判がバネになるという長谷部選手の言葉を思い出した。

多くの人の意見を受け入れながら、現状新しいチャレンジを続けた結果が出て、新型クラウンの好調なセールスを続けると聞くと、老若男女、クルマ好きもそうでない人も、新型クラウンには無関心ではいられなかったようである。

Start Your Engines
https://www.startyourengines.net/
清水和夫|国際自動車ジャーナリスト

1977年武蔵工業大学電子通信工学卒
1981年からプロのレースドライバーに転向
1988年本格的なジャーナリスト活動開始

日本自動車ジャーナリスト協会会員(AJAJ)
日本科学技術ジャーナリスト会議 会員(JASTJ)
NHK出版「クルマ安全学」「水素燃料電池とはなにか」「ITSの思想」「ディーゼルは地球を救う」など

NEXCO東道路懇談委員・継続中
国土交通省車両安全対策委員・継続中
国家公安委員会速度取締り見なおし検討委員
内閣府SIP自動走行推進委員・継続中
経済産業省・国土交通省 自動走行ビジネス検討会委員
HFCV用容器検討委員会

《清水和夫》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「ミニGSX-R」をスズキがサプライズ発表!? 鈴鹿8耐マシン以上に「サステナブルかもしれない」理由とは
  2. 車検NGの落とし穴!? シート交換で絶対に知っておくべき新ルール~カスタムHOW TO~
  3. “プチカスタム”でサマードライブの楽しさをブーストアップ![特選カーアクセサリー名鑑]
  4. トヨタの大型ピックアップトラックの逆輸入に期待? 新型発表に日本のファンも熱視線
  5. 次期BMW『X5』の車内を激写! メーターパネル廃止、全く新しいパノラミックiDriveディスプレイを搭載
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
ランキングをもっと見る