ホンダ CR-V 新型、エクステリアは肉体改造[デザイナーインタビュー]

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ホンダCR-V新型
ホンダCR-V新型 全 8 枚 拡大写真

ホンダから5世代目となる『CR-V』が発表された。そのデザインコンセプトは“モダンファンクショナルダイナミック”であるという。そこで今回、そのコンセプトになった経緯や、デザインの特徴等について、エクステリアデザイナーに話を聞いた。

■白いシャツでも格好良いイメージ

----:5代目CR-Vのデザインコンセプトはモダンファンクショナルダイナミックというものだそうですが、この意図は何なのでしょう。

本田技術研究所四輪R&Dセンターデザイン室1スタジオ研究員の村上渉氏(以下敬称略):最初に開発するにあたって考えたことは、昔に比べるとSUVのライバルがたくさん増えてきており、また我々にも『ヴェゼル』という優秀な弟ができましたので、CR-Vの存在が薄れつつあるのではないかということでした。昔はSUVのオリジンであり、一番輝いていた存在だったCR-Vでしたので、もっと輝かせないとだめかなということです。

ライバルと比べてみると、CR-Vは代を追うごとにだんだんと乗用車っぽくなりすぎてないか、SUVらしさか少し薄くなってないかと感じたのです。どうせSUVを買うのであれば力強いデザインを皆さん求めているのではないか。そこで目指す方向、ベクトルはその方向で進むべきなのかなと考えました。


そこでプロポーションを良くしました。つまりは骨格改造をしたのです。ホイールベースも初めて伸ばし、タイヤの直径もクラスで一番大きなタイヤサイズにもしました。これはデザインスケッチでよく見られる四隅にタイヤを配置し、そこに大径タイヤを履かせたイメージです。

さらに寸法も片側15mmずつデザイン代としてもらって、そのままフェンダーやショルダーのボリュームとして使いました。その結果、骨格が筋肉質になり遠くから見てもプロポーションが良くなったと思えるようになったのです。例えていえば、柄物のシャツで格好良いといっているのではなく、普通に白いシャツを着ていても格好良いということを目指したのです。つまり骨格が格好良いので変なことをしなくてもいいということです。

----:確かにそういう意味では無駄なキャラクターラインなどは入っていませんね。

村上:アメリカなどでは初代のCR-Vを未だに乗っている人をたくさんいまして、長く使ってもらえています。このクルマもプロポーションが良いという普遍的な価値観を持たせましたので、10年、20年乗ってもらってもこのクルマは格好良いなといってもらえるような、そういうデザインを目指しています。


■骨格改造して力強く、SUVらしく

----:村上さんが最初にCR-Vのエクステリアデザインの担当になったとき、どう思いましたか。

村上:実はCR-Vというクルマは、ホンダでは珍しく一度も失敗した例がないのです。だいたい3代目でガラッと変えたりすることが多くて……。なので相当プレッシャーが大きかったですね。ホンダの収益の屋台骨にもなっていますのでかなりプレッシャーはありました。もちろんそういうモデルをやらせてもらう喜びもありますし、グローバルで売られているクルマですから、世界中で自分のやったデザインが見られるというのはすごく光栄なことでもあります。また、皆さんを喜ばせたいという気持ちでもっと格好良くしてやろうと思っていました。

----:具体的に5代目CR-Vをどういうデザインにしようと思いましたか。

村上:今までにない力強さをプラスしていきたいと思いました。そのために骨格改造させてくれといったのです。ちょっとプロテインを飲んでどうこうではなく、しっかりとビルドアップさせてくれ、そうしたら変なシャツはいらないからと(笑)。なので、かなりタイヤを大きくしたり、全幅をデザインのためにもらうなどはなかなかできないことですけど、受け入れてもらえました。

通常ですと、大きくしたのなら室内を広くとなりがちですが、そうはしなかったのです。元々室内は十分に広いという評価をされていましたので、先代よりもさらに広くする必要が本当にあるのかという議論をして、その結果、確かにデザインで使った方が、SUVとしてはいいのではないかということになったのです。後は遠くから見たときの骨格が肉体改造されたものになっているかどうかが一番重要なところでしたね。


----:特にその骨格改造したデザインでこだわったところはどこですか。

村上:ドアの厚み感です。ショルダーを見せるデザインにしました。ショルダーから下のキャラクターラインまでの間の面で、あまり撫で肩にせずに筋肉の力強い豊かな張りを見せています。

----:そのキャラクターラインもリアのフェンダーあたりで消していますね。

村上:はい。そういうフェードアウトするようなものも、人間で例えるなら、腕などの筋がすっと消えるようなものと一緒で、真面目に全部通しているのではなく、出てきたり、生えてきたり、消えたりといった美しさを入れているのです。

■3つのCR-Vらしさ

----:その一方で、CR-Vらしさも取り入れる必要があるかと思います。

村上:それは最初から思っていたところで、CR-Vはなんぞやというところから根本的に考えました。

これまでのCR-Vのイメージを継承しているところが3つあります。ひとつは高い位置にあるリアコンビです。これは他のメーカーが真似したくてもできないような位置に配しています、ボルボは例外ですが。これはSUVとして小石が跳ねても割れにくい位置にしているのです。

それからブレーキを踏んだときに周りからきちんとブレーキを踏んだことがわかる視認性が良いという意味で上の位置になっているのです。これは是非とも継承したいこととしてスケッチの段階からやっていました。


次はウィンドウグラフィックスです。これもCR-Vの3代目くらいから採用している、後ろに行くに従って狭くなっていくデザインです。それも6ライトのところが三角形になっているというのがCR-Vっぽいウィンドウグラフィックです。今回は3列シート車があるので、3列目乗員の目線の高さで視界がベストなところを探し、ピークの位置を決めています。その結果、リアコンビとウィンドウグラフィックスの関係で、これがCR-Vだと一目でわかるようになっています。

そしてタフに使える要素と、街乗りの洗練された要素が同じぐらいのボリュームでミックスするというのがCR-Vの良いところでありコンセプトですので、新型ではバンパーやドアの下を黒くしています。これはプロテクション機能で、これも初代からずっと継承しているものです。昨今SUVにおいてもボディ色にするクルマが多いのですが、ここだけはCR-Vの伝統と機能として継承したいと採用しました。

よく例に出すのですが、Gショックは黒のままですよね。たまにモディファイして色が塗られたものも出て来ますが結局は黒が格好良いとなります。それと同じようにCR-Vがずっとやってきたところは他がどうであれCR-Vの道を行こうと、それが格好良いと思っている人はいっぱいいるのですから。

実際にアメリカなどで、安いグレードでドアハンドルが黒だったりスチールホイールの仕様を見てもすごく格好良く見えますし、道具として、“ギア感”がすごくありますよね。ちょっと流行っているからボディ色に塗ろうという声もいっぱいありますが、CR-Vのタフさみたいなところの象徴の黒いバンパーやガーニッシュなどは、CR-Vの伝統として守りたいと黒のままにしています。


----:この黒に関しては、SUVらしさやCR-Vらしさと共にボディカラーとのマッチングも良いように思います。さらにそこにメッキモールも入っていますので、すごくクルマが締まっても見えますね。かつちょっと上級というところも感じさせているようにも思います。

村上:さっき白いTシャツという例を出しましたが、シンプルすぎてしまうと安っぽくも感じてしまいます。その解決の方法としてショルダーのところで立体感を持たせるなどで格好良く見せたり、クロームなどをぐるっと回してちょっとしたアクセサリーを白いTシャツにつけるようなイメージを取り入れました。それなりの車格もあり、高額な商品なのでちゃんと上級感も出しています。

■3列に見えないスタイリッシュなSUV

----:そのほかにエクステリアでこだわったところはどこかありますか。

村上:今回3列シート仕様がありますので、普通に作っていくとリア周りはユーティリティを考えて四角くなってしまいます。しかし決してお客様はミニバン的なものを欲しいわけではないのです。そこでリア周りは少し寝かせて3列に見えないようなデザインにすることに注力しました。元々、3列は欲しいがミニバンはちょっと、というお客様はたくさんいると思います。そういう人がSUVの3列、マツダ『CX-8』を含めて購入されていますので、基本はスタイリッシュなものがSUVの良いところなのかなと考えています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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