【ボルボ XC60ディーゼル 新型試乗】重量級ボディとディーゼルの相性はかなりいい…井元康一郎

試乗記 輸入車
ボルボ XC60 D4 Inscription
ボルボ XC60 D4 Inscription 全 28 枚 拡大写真

ボルボ XC60 D4 インスクリプション


ボルボ『XC60』は昨年10月に日本での販売が開始されたばかりの新鋭SUVで、日本カーオブザイヤー2017-2018大賞、ワールドカーオブザイヤー2018大賞をはじめ、世界で賞を総なめにしている。

実物を見ると、上位のラージクラスSUV『XC90』のイメージを踏襲するいかにもラグジュアリーなインテリア、強いテンションを感じさせるエクステリアなど、新世代ボルボの意匠性や質感が体現されており、高級SUVとしての存在感は抜群。それでいてメルセデスベンツ『GLC』やBMW『X5』より抑制的な価格であることから、欧州ではプレミアムミッドサイズSUV分野のマーケットリーダーの地位を堅持。アメリカ、日本などボルボがあまり強くなかった市場でも販売は好調に推移している。

【画像全28枚】

試乗車は換気機能付きナッパレザーシートやドリフトウッド(流木)パネル、人工皮革ダッシュボードなど豪華装備が盛りだくさんの上位グレード「D4 インスクリプション」。エアサス、グラストップ、B&Wプレミアムサウンドシステムなど高価な追加装備も盛られており、トータル800万円にならんとする高級仕様だった。

試乗ルートは伊豆・箱根周遊で、大まかな道路比率は市街地1、地方道3、山岳路6。路面ドライ、最高気温31度、1名乗車、エアコンAUTO。
ツーリングではエアサスをスポーツにしておくのがハンドリング、乗り心地ともベストであろうと思われた。

ガソリン車のデビュー時から変わった足回り


XC60ディーゼルは至極滑らかな走行感と高い静粛性、そしてほどほどに良いアジリティを持つ、堂々たるプレミアムミッドサイズSUVに仕上がっていた。

昨年のデビュー当時は、クルマの情感やハンドリングについては文句なしに素晴らしい半面、乗り心地はエアサス、カーボンサスともにハーシュネスが強めという弱点も持っていた。コンパクトSUVの『XC40 T5 R-DESIGN』がハンドリングと乗り心地について見事なまでの両立ぶりを示していたのに触れたときは「豪奢さはともかく乗り味については完全に下克上だな」とすら思ったくらいだった。

ところが、今回乗ったD4はデビュー当初とシャシーのセッティングがガラリと変わっており、ショックアブゾーバーの油圧感が何とも滑らかな、重量級SUVらしい乗り心地になっていた。それでも乗り心地とハンドリングのバランスでは相変わらずXC40 R-DEIGNに軍配を上げたくなるが、車重を生かしたクルーズ感の良さが出てきたことで、豪華さやボディサイズ以外でもXC60を積極的に選ぶ意味が出てきたような気がした。
タイヤはミシュラン「LATITUDE Sport 3」で、サイズは235/55R19。
ボルボはシャシーセッティングについてわりと柔軟に変更を加えるほうで、コンパクトモデルでも現行『V40』がサスペンションが固すぎるという評価を受けるや、短期間でしなやかなセッティングの仕様に変えたりしていた。ガソリンモデルも同様のセッティングに変わっているとすれば、XC60は高所得者層が500kmないしそれ以上の長距離を安楽に移動するためのツールとしてうってつけのモデルに仕上がったと言ってよさそうだった。

前述のように試乗車にはエアサスが装備されており、サスペンションの固さを変えることができる。伊豆スカイラインやそこから伊東に下りる急峻なワインディングロードでセッティングを変えてみたが、エアスプリングやショックアブゾーバーのレート設定は一番固い「SPORT」にしておくのが良さそうに思えた。その状態で乗り心地は全然悪くなく、気持ちの良い滑らかさで、ハンドリングもリニア。むしろコンフォート設定のほうが過剰に柔らかく、ふわつきが強めという印象だった。こちらは市街地で使うといいだろう。
エンジン縦置きのようなロングノーズフォルム。ホイールベースのほぼ中央にドライバーが着座するポイントがあり、クルマとの一体感は高い。

ディーゼル感ありありと


最高出力140kW(190ps)、最大トルク400Nmを発生する2リットル直4ターボディーゼルとアイシン製8速ATという組み合わせのパワートレインは、1.8トン台のボディを軽やかに走らせるのに十分な能力を持ち合わせていた。箱根ターンパイクの急登区間もスロットルペダルを軽く踏むだけでぐいぐいと速度を上げて登っていくことができた。

ターボディーゼルモデルは回転限界が低いため、普通はガソリンより最終減速比を上げてエンジン回転数を落とすものなのだが、XC60はATのギア比、ファイナルギア比ともガソリンモデルと共通。もちろん燃費はガソリンよりはいいのだが、セッティングは燃費志向ではなく完全な加速重視。それがスペックから受ける印象を大きく超える速力を示した要因のようであった。オンボードコンピュータ上の燃費値は12.8km/リットルと、半分以上を山岳路で過ごしたことを考慮すると十分にアクセプタブルであった。

同じ走り方をした場合、ガソリンモデルに対する燃費のアドバンテージは3~4割ほどのアドバンテージになりそう。今回は平地をクルーズする機会がなかったが、瞬間燃費計の動きを見るに、ロングランなら16km/リットル程度は行くであろうと思われた。XC60ディーゼルの燃料タンク容量は60リットルと、このクラスとしては若干キャパシティが小さい。もっとも、ボルボは欧州車の例に漏れず、タンク本体の容量に含まれない給油配管に入る燃料の量がかなりの量にのぼるので、無給油での航続距離は1000kmくらいは十分に期待できるだろう。

静粛性も十分に高く、登り急勾配でもエンジン音は遠くからコロロロロ…という音が聞こえるだけ。ただし、プレミアムセグメントの商品開発競争は激しく、先般テストドライブする機会があったメルセデスベンツ『CLS220d』の最新鋭ターボディーゼルがどことなくV8っぽい唸りを上げるようなサウンドチューニングがなされていたのに比べると、音質のディーゼル感は目立った。さらなる改良に期待したいところである。一方、ロードノイズは今日のプレミアムセグメントSUVの標準をしっかりクリアする素晴らしさであった。

「玉にキズ」は価格だけ


エレガントさと硬質感という相反するファクターを非常に上手い形で両立させた内外装の仕立てはXC60のハイライトだが、その点はターボディーゼルも何ら変わることがなかった。試乗車はグラストップ装備だったため、採光性も非常に良かった。前述のように静粛性が全般的に高いことも手伝って、車内の雰囲気はコージー。後席の広さ、荷室容量も十分だ。

最近のボルボ車ではおなじみとなった感のあるオプションのB&Wのプレミアムサウンドシステムは、サラウンド効果にこだわったというだけあって、小音量でも音楽がよく耳に入る素晴らしい仕上がりだった。が、インスクリプションの場合、標準で結構ハイグレードなハーマンカードンのオーディオが着くので、それでも十分なのではないかとも思われた。

このようにプレミアムセグメントSUVとして素晴らしい商品性を身につけたXC60ターボディーゼルだが、玉にキズなのは価格。最高出力187kW(254ps)を発生する「T5」ガソリンモデルに対して税込み30万円高い。T5は本拠地ヨーロッパでもT6に次ぐプレミアムエンジンで、かなり高価なものだ。そのT5とこれだけの価格差をつけるのであれば、173kW(235ps)の「D5」を持ってきてほしかったところ。さもなくばD4とT5を同額にするか。現状ではバリューフォーマネーにこだわるなら断然T5である。

とはいえ、XC60のような重量級ボディと低中回転域での粘りが抜群で航続距離も長いターボディーゼルは非常に相性のいい組み合わせ。そのディーゼルが追加されたのは、ロングラン派のカスタマーにとっては朗報であろう。
伊豆スカイラインより相模湾を眺める。
■5つ星評価(プレミアムミッドサイズSUV基準)
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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