ispaceは、計画を進める月周回と月着陸の2回のミッションに向けて、アメリカのSpace Exploration Technologies社(以下SpaceX)と打ち上げ契約を締結した。ispaceが26日、発表した。
ispaceは、月周回と月着陸を目指す月面探査プログラムの名称を「HAKUTO-R」に決定致した。ispaceによると、民間による月面探査プログラムは史上初。SpaceXが提供する再使用型ロケット「Falcon 9」にランダー(月着陸船)を搭載して打ち上げる。さらにランダーにローバー(月面探査車)を搭載する。
2020年半ばの月周回ミッションと、2021年半ばの月着陸ミッションの、2回のデモンストレーション・ミッションを行なう。また、月面探査を行う民間企業として、複数回のミッションの打ち上げをSpaceXと締結した世界初の事例でもある。
SpaceXを選択した理由をispace社の袴田武史代表取締役は、総合的判断としながらも、「信頼性が高いこと、コストがやすいこと、そしてプログラム継続の可能性、安定的なロケット供給が可能なことが影響した」とする。
ispaceは、この2回のデモンストレーションを2020年半ば・2021年半ばに実施した後、年間複数回の本格的な商業ミッションを連続して実行する計画だ。現在のプログラムは、ランダーの詳細設計に移行している。2019年第2四半期に詳細設計を完了させ、以降月に向かうランダーフライトモデルの製造を進め、さらに今後月面を探査するローバー開発も並行して行なう計画だ。プロジェクト費用の総額は非公開。
プログラム名「HAKUTO-R」の「HAKUTO」は、日本で古くから月を象徴する動物として親しまれている白い兎(うさぎ)を意味する。ispaceは、人類初の月面探査レースGoogle Lunar XPRIZEに参加し、2017年にファイナリスト5チームに選出されたが、他チームのランダー開発とロケット契約が成立することを前提としたことで、探査機の月輸送ができず、2018年3月の期限をもってレースへの挑戦を終了している。「HAKUTO-R」の「R」はRestart、RebootのRだ。
ispaceによると、Google Lunar XPRIZE終了後もレース参加チームが、月面一番乗りを競っているという。アメリカのAstrobotic、Moon Express、ドイツのPT Scientists、インドのTeamIndus、そしてイスラエルのSpace ILが引き続き民間による月面探査の実現を目指しているそうだ。