【モトグッツィ V7 III レーサー 試乗】ネオクラ?レトロモダン?いいえ、ずっとこれでやってます…青木タカオ

MOTO GUZZI V7 III Racer(モトグッツィ)
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思うことがある。現存するイタリア最古参のオートバイブランド「MOTO GUZZI(モトグッツィ)」が、もっと日本で注目されてもいいのではないだろうか。縦置きVツインという独自のエンジンレイアウトで、「グッツィスタ」と呼ばれる熱烈なファンは世界中に多い。

特に700~900ccくらいのモーターサイクルのバランスの良さが見直されている今、一切ブレることなくこのクラスで勝負してきたメーカーだからこそ言いたい。振り返れば、レーサーレプリカブームもあったし、大排気量スポーツやクルーザーを各社がこぞってリリースしてきた時代もあったが、モトグッツィは堅実に我が道を歩んできた。

モーターサイクルの製造を開始したのは大戦の終わった1920年。エンブレムにはイタリア空軍の紋章でもある、翼を広げた鷹が描かれていた。初の市販車は翌21年に誕生した『8HP Normale』。設立当初よりレースに参戦し、悪路のレースとして知られたタルガ・フローリオに出場し、初優勝の栄冠をこの年すでに手に収めている。新興ブランドながらレースで実力を示し、注目される存在になっていき、『8HP Normale』は24年までで合計2065台が製造された。

強烈すぎる個性、それは“縦置きVツイン”

MOTO GUZZI V7 III Racer(モトグッツィ)
バイクファンになら有名な縦置きVツインは、1965年のミラノショーで発表される。排気量703cc、90度V型2気筒エンジン搭載した『V7』だ。エンジンを縦置きにし、後輪駆動をシャフトドライブにすれば駆動力の回転方向を90度変換するのが1か所で済み効率が良い。

モトグッツィはV字に開く2つのシリンダーを90度にし、向かい合う気筒で発生するそれぞれの1次振動を打ち消し合う効果をもたらしたが、BMWは180度=水平にまで開いて理論上2次振動までもをゼロにするスムーズなエンジンにしたことも付け加えておこう。

スパルタンなほどのレーサースタイル

MOTO GUZZI V7 III Racer(モトグッツィ)
話しは少し逸れたが、『V7』シリーズはなんと今も現役だから驚く。もちろん縦置きVツイン、空冷OHV2バルブのままだ。なかでも伝統的なのが、「レッドフレーム」のニックネームが付けられた1971年の初代『V7 Sport(スポルト)』を再現した『V7 III Racer』で、もうマニアからしてみれば垂涎モノといえる。今なおナナハンのまま、決して大きくなったりしない!

燃料タンクはサテン仕上げのクロームで、レースで活躍した時代を思い起こすセパレートハンドルとストッパー付きシングルシーター、ゼッケンプレートのスタイル。実車を目の当たりにすると、高級感への追求を強く感じ、ナンバープレートはブラシ仕上げのアルミニウム製、ステップはアルミ削り出し、スポークホイールのリムや車名が示されたトップブリッジガードも目を引くばかりだ。

前傾姿勢のライディングポジションで走り出せば、気分が高揚してくる。シートにドカッと座りっぱなしでは車体は言うことを聞いてくれず、アグレシッブにカラダを動かし、シートへの荷重を意識して操作してやった方が自在に操れる。そこにアクセルワークが上手く連動すると、スポーツライディングの楽しさが味わえる。「レーサー」と名乗るだけのことはあって、少し手強いイタリアンスポーツらしさがしっかり個性として存在し、走っているといつまでも飽きない。

貫き通したモノにしかない“本物感”が最大の魅力

MOTO GUZZI V7 III Racer(モトグッツィ)
もちろん、ゆったりストリートを流しているだけでも心地良い。ギヤ音やフィンの共鳴を耳にしつつ、身震いしながら加速するエンジンの“機械らしさ”を楽しむのもいい。現代のバイクのエンジンは「モーターみたいで味気ない」と揶揄されることがあるが、『V7 III Racer』の縦置きVツインはなんと味わい深いことか。

「ネオクラシック」「レトロモダン」といったクラシックテイストのオートバイが各社からリリースされ注目されているが、こちらは1周いや2周も3周も回って、そのままといったところ。言うならばホンモノ。見た目にも存在感は圧倒的だし、冒頭でも書いたように、もうチョット街で見かける機会が増えていいと思う。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

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