HV・EVが燃えたら、かけるのは「水」?「泡」?…ガソリン車とは違う、車両火災の思わぬ危険とは【岩貞るみこの人道車医】

車両火災の現場で消防士たちは、ガソリン車かHV、EVかどうかの判断を迫られる。
車両火災の現場で消防士たちは、ガソリン車かHV、EVかどうかの判断を迫られる。全 4 枚

電動化と車両火災

世界の流れは電動化への道を一直線である。先日のパリサロンでも、「電」という言葉が飛び交っていたようだ(私は国内待機組なので聞こえてきた情報)。

電気自動車を語るときはいつも、どこで充電するんだとか、電気を何で作るのかといった問題が山積だけれど、PHEVなどの電動化だと話は異なる。燃費がよくなって環境に貢献でき、さらに走りがスムーズになるとあれば、電動化への動きはどんどん加速するだろう。

コネクテッドカーの時代を見ても、電動化にはメリットが多い。ACC(前方車両との車間を上手に保ちながらのクルーズコントロール=車速を一定にして走る)も、前方車両とコネクテッドできれば、前方車両がちょいっと加速したときにほぼ時差なく加速体制に入れる。このとき、単なるガソリン車よりも、加速のうまいモーターアシストがあったほうが、圧倒的に有利なのだ。

ただ、電脳化となると、大きなバッテリーが積まれることになる。

そこで気になるのは車両火災である。総務省によると、昨年、2017年の車両火災は3863件。過去にはキャンプ中に焚火の火が燃え移ったというものあるけれど(先日は車内で溶接作業していて全焼した)、走行中に燃えはじめたケースも多い。

車両火災の消火にあたるのは消防隊だ。彼らは車両の火を消すときに水を使わない。ガソリンは水をかけると、逆に燃え広がるため(ガソリンが水より軽いので、水をかけると火が広がるらしい)、泡消火剤を使うのである。一般的な消防車はいつでも対応できるように、泡の溶剤をポリタンクに入れて積んでいる。

ただ、大容量のバッテリーに泡消火剤を使うと感電する。えっ、感電? そう、なんたって、泡はぶくぶくとシャボン玉がつながっている状態なのだ。電気が泡をつたい、ホースを握る消防隊員を感電させる危険性があるのである。これはやばい。

それに、バッテリー火災は、バッテリーの熱を下げない限り火は消えない。つまり、じゃんじゃか水をかけるしかないのである。

かけるべきは、水か、泡消火剤か?

いま、車両火災の現場に到着したときに消防隊員がまずやることは、ふつうのガソリン車か、ハイブリッドカーや電気自動車かどうかの見極めである。たいていの場合は、走行中に火災が起きているため、そばにドライバーがいる。

「運転手さん! これ、どっち! ハイブリッド!?」

消防隊員は、大声で確認作業である。しかし、停車中の出火は、ドライバーがいない。消防隊員は、クルマのまわりに手がかりがないか探しまわることになる。

「探せ! ハイブリッドって書いてある?」

『プリウス』や『リーフ』など、わかりやすいクルマならいいけれど、輸入車になると、ややこしい。火は消さなきゃ、でも、どっちかわからないまま適当に対処して間違えたら、火は消えないわ爆発するかもだわ感電するわで、そりゃもう、現場は命がけなのである。

だったら、わかるようにすればいいじゃん?

ひと目見て、だれでもわかるような印をつければよいのではないだろうか。あとで貼り付けるデザイン性もへったくれもないステッカーではなく、この際、ナンバープレートで分けてしまうのはどうだろう。

ひらがな表記部分を、電動化ゆえに、「電」。初めての漢字採用である。おおう!(感嘆の声)

もしくは、漢字はだめというのであれば、「で」。初めての濁音採用である。おおーう!(さらなる感嘆の声)

と、ひとり盛り上がっている場合ではない。これ、現場は本気で大変なんだから、本気で考えてもらいたい案件なんです、よろしくお願いします。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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