エルフ EVはバッテリー交換式にも対応・自動運転プロトも公開…いすゞ商品技術説明会

いすゞのEV戦略

エルフ EVは保冷車と塵芥車

新型エルフのADASをベースに自動運転トラックを開発

いすゞ商品技術説明会
いすゞ商品技術説明会全 14 枚

23日、いすゞ自動車は、改良新型エルフに搭載されるCASE技術に関する商品技術説明会を開催した。注目は100%電動化された「エルフ EV」とステレオカメラによる対歩行者AEBS。また、ADAS機能とコネクテッド機能を組み合わせた自動運転トラックのプロトタイプも公開された。

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いすゞのEV戦略

いすゞでは、CO2削減など環境対応技術について、Well to Wheelと「トンキロ」を重視した戦略をとっている。商用トラック・バスの場合、積載量と走行距離あたりのCO2排出量で考えると、(大量の荷物を運び、長距離を走る)大型車のほうが小型トラックより環境性能は高くなる。この考え方で、当面のEV戦略は小型トラック(GVW:4.5トンクラス)をターゲットとしている。中型(GVW:14.5トンクラス)以上はまだディーゼルのほうがトンキロによるCO2排出量が少ない。つまりEV化のメリットが少ないという考え方だ。

その上で、商用車としてのEVの条件として、充電時間・航続距離・積載量などがディーゼルエンジンと同等であり、イニシャル・ランニングコストともに優位であることを挙げる。具体的には、GVW(積載量を含んだ車両重量)7.5トン以下。1充電の航続距離が100km。充電時間(稼働しない時間)が10時間程度とれる。かどうかが目安となる。なお、充電方式は用途、架装によって普通充電、高出力充電(急速充電)、交換式などのバリエーションが想定される。

エルフ EVは保冷車と塵芥車

このコンセプトのもと、いすゞでは今年度中を目安にエルフ EVのモニター走行を実施する予定だ。技術説明会で実車(暫定仕様)が公開されたのは、保冷カーゴが架装された冷凍バンとごみ収集機を架装した塵芥車だ。塵芥車については、2019年にJFEエンジニアリングの実証試験に使用される予定だという。

冷凍バンはホイールベース間のフレーム左右に80kWh(40kWh×2)のバッテリーが搭載され、普通充電と急速充電(チャデモも可)に対応する。航続距離は100km以上としている。塵芥車はキャビンとゴミ収集機の間に40kWh交換式バッテリーを搭載する。交換式なので車載状態での充電には対応していないが、自動脱着可能な充電ステーションで3分ほどで充電済みのバッテリーに交換できる。こちらの航続距離は50km以上を目指す。

保冷機、塵芥車のゲートなど架装部分の電力も搭載バッテリーから供給する。回生ブレーキは3段階の切り替えが可能。排気ブレーキのように使うことができる。走行デモを行った車両はステアリングのパドルで回生ブレーキの強さを切り替える方式だった。

新型エルフのADASをベースに自動運転トラックを開発

新型エルフは、衝突軽減ブレーキや車線逸脱警報など、主だったADAS機能が標準搭載される。衝突軽減ブレーキは、ダッシュボード付近(フロント部正面の中央付近)のステレオカメラによって制御される仕様だ。トラックの場合、ルームミラー付近などフロントウィンドウ上部だと、遠くの見通しは効くが、近くの子どもなどを見落とす可能性がある。エルフなどの小型トラックは低速で市街地を走ることが多いので、ウィンドウ下側、ダッシュボード付近にカメラを取り付けた。乗用車では主流になりつつある単眼ではなくステレオカメラにしたのは、歩行者や自転車、先行する車両などを立体的に認識するためだという。

いすゞでは、この技術をさらに発展させ、右折時の横断歩行者も検知する自動ブレーキを開発中だ。右折時、対向車両ばかりに気を取られていると、曲がり始めに右からわたってくる歩行者を見落とすことがある。これをLiDARやレーダーなどを利用して検知する。

また、ドライバーの異常を検知し、緊急停止、路肩退避を自動的に行うシステム(DESS:車線内停止・路肩退避)も開発中だという。カメラでドライバーの状態を確認し、居眠りや気絶などを検知したら、まず車内に警報を発し、車外へもクラクションなどで異常を伝える。右車線走行中で車線変更ができないときは車線内に自動停止。車線変更が可能なら自動で車線を寄せて、さらに路肩に停止させる。いすゞは「MIMAMORI」という運行管理テレマティクスサービスを提供している。これと連動すれば、異常時に緊急通報も自動的に行える。

いすゞ自動車、いすゞ中央研究所と共同で、高度な自動運転技術の研究開発も進んでいる。プログラムマップクルーズ(PMC)は、GNSS(GPS)と地図データによる自動運転機能だ。スタート、ゴール、速度などを指定すると、発進から移動・停止まで自動で行う。全車速車間クルーズ(FACC)は車速ゼロから、オートクルーズ、前車追従、車間距離維持、渋滞等の停止、発進を行う。自動レーンチェンジ(GNSSと地図データを利用)、連キープ自動操舵(カメラによる車線認識と自動操舵)など合わせて自動運転トラックを開発している。

この自動運転カーはプロトタイプが展示されたが、写真撮影不可とのこと。概観はほぼ普通のエルフだが、車体の四隅にLiDARセンサー。フロント中央にはミリ波レーダー、LiDAR、ダッシュボードのステレオカメラ、フロントウィンド上部には単眼カメラ、後方中央にもレーダーらしきセンサーが確認できた。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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