生きるか死ぬか、「車外放出」を防ぐシートベルトの重要性【岩貞るみこの人道車医】

全席シートベルトの着用は義務化されたが、未着用による痛ましい事故はなくならない(写真はイメージ)
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事故に遭う確率はゼロではない

【車外放出】先日、乗車中の幼児が死亡する交通事故が起きた。クルマ同士が交差点でぶつかり、一台が横転したはずみに、幼児が車外に放出されるという痛ましい事故である。報道によると、車内にチャイルドシートは見当たらなかったとのこと。ほかの乗員は骨折~軽傷だったときくと、なおさら、チャイルドシートを使っていなかったことが悔やまれる。

「私は安全運転ですから」
「事故は起こしませんよ」

これまで何度も耳にした言葉だ。でも、いくら自分が交通ルールを守っていても、交通社会では、いつどこからクルマが突っ込んでくるかわからない。

私がドクターヘリの取材をしていたころも、傷ついた幼児が何人も運ばれてきた。車内にいたこどもたちである。そして、事故の状況を確認すると、運転していた保護者に過失はほとんどなく、対向車がはみ出して来たり、交差点で突っ込んできたりというものばかりだった。

だれだって、事故に遭う確率はゼロではないのである。

車内の安全技術は進み、衝突安全ボディやエアバッグ、シートベルトの三点セットで、死亡に至る怪我は減少した。警察庁のデータを見ても、2017年の死亡者数3694名のうち、乗車中は半数以下。以前は乗車中のほうが多かったことを考えると、車内はかなり安全になってきたことがわかる。

自動車メーカーの衝突安全系の人たちは、ほんとにマジメで、粛々とがんばっている感が強い。今は事故を未然に防ぐ自動運転技術がきらびやかな脚光を浴びているけれど、日々の暮らしを守っているのは、こうした一見地味な衝突安全領域の研究者だよなあと、しみじみ思うのである。

車外放出は、起こる

ただ、こんなにがんばって研究開発して採用されているのに(つまりは車両価格に含まれている)、使わないユーザーが多いのは嘆かわしいことだ。そもそもシートベルトひとつ、まともに使えている人が少ないのである。

たるませておなかの上あたりでいい加減に絞めるわ、一般道では後部座席はしない人が多いわ。ちゃんと腰骨の上と鎖骨の上を通すようにして、たるみをなくしてシートベルトを使えば、いざというときの事故でも怪我する確率がぐーっと低くなるというのに、もったいない。メルセデスベンツやアウディ、BMWは、運転する前にシートベルトが自動できゅーっと巻き上げられてたるみをとる機能がついているけれど、人が手でちょいっと持ち上げればタダだ。こんなに安く安全性が向上することはほかにないんじゃないかって思うんだけど。

それに、シートベルトやチャイルドシートを使えば、車外放出だって食い止められる。高速道路で全者着用を義務化して罰則が適用されたのも、事故のときに車外放出させないためだ。高速道路は速度が高い分、衝突の衝撃で乗員が外に放り出される確率が高い。後部座席の窓は、接着剤でついているだけなので、スピンして遠心力がかかれば、人なんてあっという間に窓をはずして外に放り出されることになる。

合わせガラスで割れにくいというフロントウィンドーだって、人間の体重がそれなりの速度でぶつかれば、簡単に突き破る。以前、消防学校で交通事故を想定した訓練を見せてもらったけれど、乗員はクルマの前で倒れている状況だった。フロントウィンドーが割れていることを見極めて、歩行者だったか乗員だったか見極めさせるシナリオである。そして、そのくらい車外放出が、一般道の事故現場で多いということである。確認すると、フロントウィンドーを突き破るのは、前席の乗員だけではなく、後席から吹っ飛んでくる人もとても多いらしい。そうか、最近のクルマ、屋根が高くて車内空間が広いもんね。

生きるか死ぬかはクルマについている安全装置をいかに活用するかにかかっている。自分の身、そして家族の安全は自分たちで守りましょうね。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

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