ウーバー・タクシー解禁を再考すべき理由【藤井真治のフォーカス・オン】

がんじがらめのウーバー

映画『イコライザー2』に見た配車アプリの浸透

働き方改革という観点からウーバー・タクシーを考える

日本で「Uber(ウーバー)」は成立するのか。写真はイメージ
日本で「Uber(ウーバー)」は成立するのか。写真はイメージ全 5 枚

がんじがらめのウーバー

既得権であるタクシー業界と運輸行政によって「白タク」と定義され日本ではモビリティサービス事業に参入すらできなかった配車アプリの「Uber(ウーバー)」。がんじがらめの規制の中で過疎地の特例などを使い色々とビジネスを模索しているが、うまくいかないようだ。

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「人を運ぶ」のが許されないのであれば、「モノを届ける」のはいいだろう。ということでフードデリバリーの「ウーバーイーツ」を始めビジネスは順調のようだ。こちらは既得権もなく担当官庁が口出しする口実も(今のところ)見当たらないため純ビジネスベースで動いている。

ウーバーの発祥地であるアメリカ。現在は後発参入の「Lyft(リフト)」と配車アプリ市場を2分している。ウーバーがスキャンダル問題によって大きくイメージを落としたため、リフトがシェアを伸ばしているようだ。水面下での両者の覇権争いはさておき、配車アプリを使った個人タクシーは完全に人々の生活に溶け込み、モビリティの選択肢のひとつとなっている。

映画『イコライザー2』に見た配車アプリの浸透

ライドシェアサービス「Uber(ウーバー)」(参考画像)ライドシェアサービス「Uber(ウーバー)」(参考画像)
先日、飛行機の中で映画『イコライザー2』を見た。

渋い演技で定評のあるデンゼル・ワシントンが主演のアクション&サスペンス映画である。彼が演じるロバート・マッコールの表の顔は配車アプリを利用した個人タクシーの運転手。裏の顔は元諜報機関の殺し屋で夜な夜な悪いヤツを懲らしめる、というストーリーである。

マッコールが個人タクシーの仕事で使っているのがリフトのアプリ。スマホの配車呼び出しや運転手評価のシーンが出てくる。リフトのイメージカラーはピンク色(現在は少し変わっているが)で、スマホ画面もシンプルでかっこいいデザインだ。映画の中でマッコールは運転をしながらバンクミラー越しの乗車客とも軽い会話でかかわり、彼のまじめで暖かい人間性や個人ドライバーとしてのプロ意識が伝わってくる。

もちろん映画という作り話の世界で、アメリカでリフトやウーバーの運転手が全員マッコールのような運転手ではないだろう。しかしながら、配車アプリのビジネスも何年かの時を経て、運転手が淘汰される仕組みができたのではないか?具体的には乗車客は運転手評価をクリックでき、それが運転手の勤務評定としてデータベースにたまる。高評価の運転手にはインセンティブがある。またリフトは乗客からチップを受け取っていいそうだ。

リフトやウーバー運転手はアメリカ社会の中で様々な人で構成されている。リタイヤしたが社会とのかかわりを持ちたい裕福な初老。空いているちょっとした時間でパート収入を得たい自営業の人たち。仕事を探している若い失業者。就業機会が少ない移民などマッコールと同じくほかに(表の)職業を持たない人も多いだろう。しかし、アプリのお陰で乗客を探す時間が節約でき、顧客評価システムですさんだ気持ちになるのを抑え、自制心とプロ意識で仕事をこなす。少し裕福な老人乗客は喜んでチップを払う。

働き方改革という観点からウーバー・タクシーを考える

日本のタクシー(参考画像)日本のタクシー(参考画像)
翻って日本のタクシー。現実は今も失業者がやる安定的ビジネスと言われている。ただし仕事は夜勤も多く、歩合制でもあるので仕事は大変キツイ。車の稼働効率をベースに運転手の勤務時間が決められているため、ドライバーはそのスケジュール表に従うかたちだ。タクシーの運転手を始めてはみたものの根をあげてやめてしまう人も多いと聞く。タクシー会社のビジネスモデルなのである意味しょうがない。

個人的には最近マナーが随分と良くなったと思うがそれも会社からの締め付けの結果なのかもしれない。タクシー会社も取り仕切る当局や団体の様々な行政指導やルール対応でコストもかかりいろいろと苦しいのではないか。世界的に高いタクシーの料金(シンガポールの2倍から3倍)はこうした理由もあるだろう。

モビリティの担い手はだれか?官とそれによって認可された会社だけでなく、配車アプリによって緩やかに自己統制された個人ドライバーという選択肢もあっていいのではないか?「それとも日本は政府や会社が管理しないと成立しないような悪いヤツがアメリカより多いというのだろうか?

働き方改革という観点からウーバー・タクシーをどうすれば解禁できるか再考する時期に来ているのではないか。

個人主義のアメリカと異なり、何かあればすべてお上の責任にするようなカルチャーの日本では、人命にかかわるモビリティは官が規制をかけないと成り立たないという意見もある。またつらくても会社に属し働きたい人もいるだろう。残念ながらモビリティの担い手は「個人」で自己責任ビジネスで良いとの発想は日本にはない。

日本社会におけるMaaSの限界は既に見えているようだ。

<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。

《藤井真治》

藤井真治

株式会社APスターコンサルティング CEO。35年間自動車メーカーでアジア地域の事業企画やマーケティング業務に従事。インドネシアや香港の現地法人トップの経験も活かし、2013年よりアジア進出企業や事業拡大を目指す日系企業の戦略コンサルティング活動を展開。守備範囲は自動車産業とモビリティの川上から川下まで全ての領域。著書に『アセアンにおける日系企業のダイナミズム』(共著)。現在インドネシアジャカルタ在住で、趣味はスキューバダイビングと山登り。仕事のスタイルは自動車メーカーのカルチャーである「現地現物現実」主義がベース。プライベートライフは 「シン・やんちゃジジイ」を標榜。

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