インサイト&プリウス、2大ハイブリッドカーの歩みを紐解く…HV創生期から現在まで

インサイト&プリウス、2大ハイブリッドカーの歩みを紐解く…HV創生期から現在まで
インサイト&プリウス、2大ハイブリッドカーの歩みを紐解く…HV創生期から現在まで全 12 枚

「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズでトヨタ『プリウス』がデビューしたのは1997年のこと。世界初の量産ハイブリッドカーであるプリウスの登場で、ハイブリッドカーの時代が幕を開けたのだ。

昨今はニュースでも「電動化」や「電動車」という言葉が多く使われるが、プリウス登場以前は動力源としてモーターが組み込まれたクルマといえば少量が作られる電気自動車程度しかなかった。つまり、プリウスはハイブリッドカーの先駆けであると同時に、大量生産される電動車のパイオニアでもある。その登場が自動車史に与えた影響は大きく、とても意味のあることだった。

そんなプリウスのデビューから2年後の1999年11月に発売されたのが、ホンダ初の量産ハイブリッドカーである『インサイト』。燃費は初代プリウス前期型の28.0km/Lを超え、当時のガソリンエンジン搭載車としては世界最高となる35km/L(10・15モード)に到達し、驚かせた。

異なるクルマ作りのアプローチ

こうして世界に先駆けたトヨタとホンダのハイブリッドカーだが、印象的だったのは「量産ハイブリッドカー」という枠では同じだが、クルマ作りのアプローチは全く異なったことだ。

プリウスはあくまでもファミリーセダンの未来形の提案であり、車体は小さな4ドアセダン。全高が高いのも特徴で、着座位置を高くすることで小さな車体ながら十分な居住性を確保する革新的なパッケージングも象徴的だった。

トヨタ・プリウス(初代)トヨタ・プリウス(初代)

一方でインサイトは、いうなれば究極の燃費スペシャルである。全高を1355mmに抑えたスポーツカーのようなシルエットのボディは見るからに空力のいいデザインで、居住性よりも燃費を低下させる大きな要因となる空気抵抗を軽減するパッケージングだった。そのため室内は広くなく、2人乗り。こちらは「どれだけ燃費をよくできるか」というホンダの挑戦的な車両だったのである。

車体構造も特殊だった。車体は量産車としては異例のアルミで作られていて、フロントフェンダーなどの外板には樹脂も採用して徹底した軽量化を実施。軽さも燃費を大きく左右するからだ。余談だが、コストのかかるアルミボディは一般的には1000万円級以上の車両だけに採用されるのに210万円という価格は信じられない安さだった。

パッケージングにも素材や構造にも凝った初代インサイトは、まるで走りの性能を最重視したスポーツカーのようなストイックさ。初代インサイトもまた、初代プリウスと同様に自動車史に残るエポックメイキングなクルマだったのだ。

ホンダ インサイト 初代ホンダ インサイト 初代

ハイブリッドを広く認知浸透させた両モデル

2003年に発売された2代目、そして2009年に発売された3代目も、プリウスのコンセプトの根底にあるのは先進的なファミリーセダンであり、それは初代から一貫している。2代目ではボディが5ドアハッチバックとなり、3代目では海外におけるさらなる販売拡大を目指して国際サイズとするためボディがより拡大するなどパッケージングは移り変わっているが、基本的なコンセプトやポジショニングは初代から変ることなく受け継いでいるのである。

現在発売している4代目でも、その方向性は変わらない。プリウスはハイブリッドカー人気の高まりとともに日本はもとより世界中で販売を拡大し、日本においてはかつての『カローラ』のような定番商品になったことを多くの人が実感しているだろう。

トヨタ プリウストヨタ プリウス

インサイトはモデルチェンジでコンセプトが変化しているのが興味深いところ。2009年に登場した2代目は、5人乗りの5ドアハッチバックとなり、ボディサイズも拡大して実用性が大幅に高まった。いっぽうで価格はベーシックモデルで180万円(税抜)からと初代に対して引き下げを実施。実用性を犠牲にしてまでストイックに燃費を極めたスペシャルなモデルから、普通の人が普通に買って乗ることのできるクルマへとガラリとキャラクターを転換させたのだ。

初代はクルマ好きにとってはきわめて興味深いモデルだったが、はっきりいって一般の人が気軽に手を出せる存在ではなかった。しかし2代目なら誰にでも安心して薦められるクルマとなり、ハイブリッドカーが一般的にブレイクする波と重なったタイミングだったことも後押ししてヒット作となった。言うなれば”ハイブリッド”の大衆化を果たしたのだ。

新型インサイトはどう変わった?

そんなインサイトが、もうすぐ復活することになった。年内の発売が宣言されている新型インサイト(3代目)は、ひとまわり大きな4ドアセダン(全長4675×全幅1820mm)となって2代目より上級のポジションへ移行。ホンダによると「シビックとアコードの中間に位置するセダン」とのこと。世代ごとにボディタイプやポジションが変化するという“インサイトの法則”は新型でもしっかり守られているというわけだ。

その結果、室内はより広くなって快適性もアップしていることだろう。特に後席の広さは歴代インサイトにおいて最大となり、サルーンとしての魅力は高まった。同時に、室内の仕立てなどプレミアム感が増しているのもニュースだ。

搭載するハイブリッドシステムはホンダ独自であり多くの車種に展開している2モーターの「SPORT HYBRID i-MMD」だが、アコードやステップワゴンなど現在発売している同システム搭載車と違ってエンジン排気量が2.0Lではなく1.5Lなのが興味深いところ。しかしこの変更は燃費やコストを重視したというわけではなく、より高効率な走りを求めての進化のようだ。同システムは低中車速域においては基本的にエンジンが発電装置に徹してモーターだけで動力を生み出すが、その際の伸びやかな加速感の高さはいつ乗っても気持ちよさを実感できるもの。新型インサイトは燃費だけでなく加速性能を重視した味付けで、Cセグメントとしてはトップ領域の加速性能に仕立てているというから楽しみである。

つまり、新型インサイトは名前とホンダを代表するハイブリッドカーであるという立ち位置以外は、車体サイズやポジショニングからハイブリッドシステムまでガラリと生まれ変わったということだ。もっと上級で快適に、そして走りも楽しく。そんな新型インサイトの世界が味わえるのが、とても待ち遠しい。

ホンダ・インサイトEX・ブラックスタイルホンダ・インサイトEX・ブラックスタイル

《工藤貴宏》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. トヨタの顧客は1億5000万台…バリューチェーンで財務基盤強化
  2. ついにハイブリッド化! 新型トヨタ『ランドクルーザー300』の発表にSNSでは「バク売れの予感」など話題に
  3. 【スズキ ソリオ 新型試乗】乗り心地と静粛性はクラストップ、だが「損をしている」と思うのは…中村孝仁
  4. 日産 リーフ 新型をライバルと比較…アリア、テスラ、bZ4Xと何が違う?
  5. 15歳から運転できる「小さいオペル」に興味アリ!「通勤用にこういうのでいいんだよ」など注目集まる
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  3. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  4. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る