ダウンサイジングの時代に13リットルにこだわるボルボ FH…重量物輸送には必要

大型トラックは輸入車

クラス初のセミオートマチックトランスミッション

超低速での走行が可能なクローラーギア

ボルボダイナミックステアリングを装備

エンジンの静粛性とI-シフトのスムースなギアチェンジ

ボルボFH・FMX新型発表試乗会
ボルボFH・FMX新型発表試乗会全 23 枚

29日、ボルボトラックは、改良新型の大型トラックの発表にともなう試乗走行会を開催した。発表されたトラックはセミトラクタータイプのボルボ『FH』2種と構内専用車ボルボ『FMX』2種だ。試乗会には、運送会社などトラックユーザー企業が招待された。

【画像全23枚】

日本のトラック業界も、環境規制やコストニーズなどからダウンサイジングの流れがある。国内で大型トラックに分類されるものでも、エンジン排気量が10リットル以下のものが新型車では増えている。エンジンの性能向上や電子制御技術で小型化も可能になり、鋼材の軽量化などは、燃費と積載量の面でメリットがある。

しかし、その一方で、大型重機の輸送、建築物、鋼材など重量物の輸送、山岳地帯の輸送において、大トルクのニーズは存在する。この分野では、UDトラックスが11リットルのエンジン(『クオン』に搭載)を展開しているが、ボルボやスカニアなど輸入車に頼らざるをえない状況もある。

今回発表された改良新型のFH(6×4タイプ)に搭載されるD13K型エンジンは6気筒、総排気量12.777リットル、最高出力540PS、最大トルク2,600kgmと他の大型トラックのスペックを超える。FHの4×2セミトラクターとFMXは同じエンジンだが460PS/2,300kgmとなるが、それでもトルクは国産同クラストラックより大きい。

D13K型エンジンはEuro6対応とのことで、ハードウェアそのままで国内の法規、環境性能規定を満たしている。ただし、AdBlue(尿素)切れのときの制御の規則がEUと日本で異なるため、ソフトウェアは国内仕様となっている。AdBlueがなくなると、EUではトルク制限をかけて走行可能だが、日本は走行そのものが制限される。

セミオートマチックトランスミッションである「I-シフト」にも改良がくわえられた。まず全体のけん引容量がアップし、GCW(連結車両総重量)は100トンまでOKとなった。従来はこのクラスになるとマニュアルトランスミッションしか設定がなかったが、この容量アップにともない、マニュアルトランスミッションの設定をなくすことができた。

ボルボのI-シフトは静穏性や操作性にすぐれ、変速ショックも少ないセミオートマチックトランスミッションだ。超重量物輸送でも高齢者や女性ドライバーの活用が広がる。

オプションでデュアルクラッチの設定も追加された。I-シフトは前進12段、後進4段のギアがあるが、偶数段、奇数段で別々のクラッチを配置し、シフトの切り替えをよりスムースにできる。シフトチェンジがスムースといのは、乗り心地や静粛性に寄与するだけでなく、変速時のトルクロスも少ない。

また、クローラーギアのオプション設定もある。クローラーギアはI-シフトのインプット側に別のギアボックスをかませることで、1速よりさらに低いギアが3段追加される。切り替えはレバーを使った手動になるが、600回転で0.8km/hといった超低速での走行が可能になる。重量物の運搬では、坂道発進が難しい。また、半クラッチやセミオートマチックトランスミッションでは、厳しい数センチ単位の移動が必要なことがある。このような場合にクローラーギアは威力を発揮する。資料によればGCW115トンの牽引車が15%勾配で坂道発進をするときのクラッチにかかる負荷は、クローラーギアなしの48%で済むという。

新型FHには、VDS(ボルボダイナミックステアリング)が装備された。VDSが国内向け車両に展開されるのはこれが始めただ。VDSは、構造としては電子制御されたパワーステアリングだが、ステアリングシャフトとギアボックスのセンサーがタイヤからの路面の凹凸を検知し、ステアリングの逆位相で制御する機能も持っている。車速に応じたステアリングアシストと、タイヤからの入力吸収機能で、より安定した運転が可能になる。

エアコン用に電動コンプレッサーも追加された。荷物の積み下ろしや仮眠のとき、エンジンを切っても電動コンプレッサーがキャブ内の温度を保ってくれる(I-パーク・クール)。電気ヒーターはすでに搭載されているので、夏冬とわずサービスエリア等の仮眠でエンジンを止めることができる。エンジンを切っても6時間前後(使用条件による)は稼働できるそうだ。温度を下げるには容量が不足しているが、仮眠中の温度と湿度を保つことは可能だ。

新しいFH、FMXの主な変更点は以上だ。次にテストコースでの試乗体験も行われた。試乗コースは、VDSの機能を体感するバンプを設置したコースと、オーバルコースが用意された。オーバルコースでは、ブレーキやI-シフトの加速、減速でのシフトチェンジのスムースさを試すようになっている。

VDSは、ハンドルを指で押さえる程度でも、バンプにハンドルを取られることがない。凹凸を乗り越えている感覚はあるのだが、ステアリングががたがた動くような感触はない。I-シフトは、デュアルクラッチにより本当に変速ショックがなくなった。インジケーターでは、シフトアップ、シフトダウンがされているのだが、加速感はほぼリニアで、シフトポジションの数字だけが変わっていくようなイメージだ。

テストコースはフラットなので坂道でのトルクなどはわからないが、平地での加速感は余裕を感じる。またエンジンとシフトは電子制御されているので、アクセルを多少ラフに操作してもギクシャクすることはない。

参加者も普段から重量物を運んでいる業者が多かった。多くの参加者が述べていたのは、エンジンの静粛性とI-シフトのスムースなギアチェンジだ。ある参加者は、大型クレーンなど100トンクラスのけん引をやっているので、トルクに余裕があるのはうれしいと語る。すでに2台注文したという参加者もいた。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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