BMWデザインセミナー…3シリーズ のデザインは難しい

BMWデザインディレクターの永島譲二氏
BMWデザインディレクターの永島譲二氏全 8 枚

ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン)は、BMWデザイン部門の永島譲二氏を招き、最新のBMWデザインについてセミナーを開催。来年早々ワールドプレミアする『3シリーズ』も取り上げられ、その特徴について語られた。

【画像全8枚】

ヘッドライトにオマージュを

「3シリーズは難しい」と冒頭から永島氏はいう。「3シリーズは主力になるクルマであるとともに、注目度も大きいので売れないといけない。そういう意味でデザイナーとしても非常に難しいクルマ」とのことだ。また、「3シリーズは主力車種でBMWの家賃と電気代を払うクルマといわれていた。要するに売れなければ困る。そういうプレッシャーもあるクルマだ」という。

フロントは、「キドニーグリルの左右の頂点が上の方に位置しており、その頂点からヘッドライトが伸びている。そして四角い形が2回繰り返される」とキドニーグリルとヘッドライトの関係を述べる。同時に説明された『Z4』や『8シリーズ』のヘッドランプはキドニーグリルの左右の頂点よりも上に位置するという違いがある。これは、スポーツモデルとセダンとの違いを意味し、スポーツタイプはより幅広感と低重心を強調しているのだ。

また3シリーズではヘッドライトの下にボディカラーが入っているところも特徴だ。この由来について永島氏は、「90年代のE46のヘッドライトの下側に、波打っているような形があり、それをイメージしたものだ」という。「3シリーズはかなりアイコニックなクルマで、例えばポルシェ『911』などまでにはいかないまでも、何代も重ねてきた3シリーズというイメージが強いので、そのオマージュ的にフロントにE46のときのモチーフを取り入れたのだ」と説明した。

もうひとつ最近の特徴として横から見たときにキドニーグリルが逆スラントになっていることが挙げられる。「シャークノーズといって少し下を向いた形で、古いBMWだとかなりこれの傾向が強く、『2002』などもそうだった」と述べた。

大きく見せない工夫

「3シリーズを含む他のクルマも同様だが、デザイナーの悩みはモデルチェンジのたびに寸法が大きくなってしまうことだ」と永島氏。「安全基準は毎年のように厳しくなることから、それに対処するため」とその理由を話す。

また、「人間が大きくなることも挙げられる」という。「ドイツの工業規格が定めたマネキンがあり、そのマネキンの大きさでクルマの室内の寸法を決めるのだが、それがだんだん大きくなるので、それに合わせて徐々にボディも大きくなる」とその理由を語る。

その結果、「新型3シリーズは少し前の『5シリーズ』とほぼ同じくらいの全長になっているのだ」とし、デザイナーとしては、「いかにコンパクトに見せるかということが開発のネックになってくる」と述べる。

そこで3シリーズの場合には「リアの面が後ろからサイドに向けて周り込むようにした。そうすると斜め前から見ると全長が短く見えるのだ」と説明する。

もうひとつサイドの特徴として、ジッケラインがなくなったことが大きなポイントだ。ジッケラインとは、「フロントフェンダーからドアハンドルを通過しリアフェンダーに抜けていくシャープなラインで、その上の面の部分をシュピーゲルといっている。シュピーゲルとはミラーの意味で、ここに顔が映るのでそう呼んでおり、これが常套的なアーキテクチャだった」という。

しかし、新型3シリーズでは、「ジッケラインの代わりにこれまでよりも上にキャラクターラインを走らせ、そして、ボディの中央に太いボーンラインを強く入れた。これにより、ドアハンドル周りが光を受けて、その下側が影になることでボディを薄く(=車高を低く)見せるという効果を狙っている」という。そのうえで、「リアドアからリアフェンダーに向けて非常に強いフレアを作り出し、さらにリアフェンダーを張り出させて、リアホイールを強調している」と説明。これは後輪駆動を強調するという意味がある。

また、ボディを薄く見せるという意味合いについて永島氏は、「どうしても全長も長くなり、全高も高くなっているので、薄く見せる必要が出てくるのだ」という

また、今後としても、「電化などで(床下に)バッテリーを搭載するようになるので、さらに全高は高くなることを常に考えなければいけない。この場合にもボーンラインによって光を受けるところと影になるところを強調して、ボディを薄く見せることができるのだ」と述べるとともに、ジッケラインを廃したことについては、「どのクラスでも使ったので、少し変化をつけたい、新鮮味というところもある」とのことだった。

日本市場で幅が決まる

ここで永島氏は面白い例を挙げる。「どのクルマにおいても線ではなく面を強調したい、それが基本だ。しかし、4ドアの実用車というのはサイズ的な余裕があまりない。これは室内寸法を広くとる必要があるものの、全幅は決まっているからだ」という。なぜ決まっているのか。それは、「日本のガレージの大きさでBMWの全幅は決まっている。そのために広くはなかなかできないのだ」と明かす。その結果、「ドアの厚みがどうしても薄くなってしまい、面を強調したいのだが、その面が薄くなってしまうのだ」と説明。一方クーペモデルなどは、その縛りが弱まり、また、「シートを寄せたりすることもできるので、面を強調できるのだ。デザイナーの意図としては面を強調したいが、比較をするとどうしても『8シリーズ』などの方が豊かな面を伝えられるだろう」と説明した。

空気抵抗係数と燃費の関係

実はこの3シリーズの空気抵抗係数は0.24と非常に良い数値を出している。永島氏は、「8シリーズは0.33で、3シリーズの方がはるかに良い。一般のイメージではスポーツカーの方が空気抵抗が少ないというイメージがあると思う。しかし、実際には空力への要求は大衆車ほど厳しく、その理由は燃費が問題になるからだ」とし、かなりのこだわりでデザインされたことをうかがわせた。

SUVの可能性

さて、今回のプレゼンテーションの終わりに、SUVの今後のデザインについて問われた永島氏は、「現在BMWのおよそ36%がSUVで、その比率はどんどん増えている一方、セダンは世界的にもどんどん縮小傾向だ」と現状を語る。

永島氏は、「セダンといっても色々あるようにも思うが、実はシルエットを比べたら大体一緒。例えばメルセデス『Cクラス』と3シリーズをシルエット同士で比べたら、どこかが30mm違っていたら大変な違いに感じるだろう。そのぐらい重なるものだ」と明かす。

しかし、「SUVとはまだまだどんな形でもできる。つまり『Gクラス』のような平面だけで作ったようなミリタリー調のものから、ものすごく流麗なSUVもあり得るのだ。つまり、セダンは歴史上かなり形が決まってしまっているのに対し、SUVはまだまだ色々な形があり得るということ。そういう意味で僕は将来的にSUVがこれから台数的も増え、デザイン的なチャレンジも、むしろそちらの方でできるのではないかと思っている。これはBMWだけではなくて一般的にということでもある」とし、今後のSUVのデザイン上での可能性を示唆した。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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