【プジョー 308ディーゼル 3500km試乗】東京~鹿児島も無給油で行けそうな燃費性能[後編]

プジョー308アリュール BlueHDi。島根の江津にて。
プジョー308アリュール BlueHDi。島根の江津にて。全 31 枚

1.6リットルターボと6速ATの組み合わせ

プジョーのCセグメントコンパクトクラス『308』の1.6リットルターボディーゼルで3500kmほどツーリングを行ってみた。前編ではシャシーのフィール、および安全装備について述べた。後編ではまずパワートレインのパフォーマンスから入ろうと思う。

【画像全31枚】

今回ドライブした308 Allure(アリュール)BlueHDiの1.6リットルターボディーゼルエンジンは欧州排ガス規制がユーロ5だった時代から改良を重ねて使われてきたもので、現在は尿素SCRによって排出ガス浄化がなされている。本国ではすでに1.5リットル130psターボディーゼル+8速ATの新パワートレインがデビューずみだ。

だが、6速ATと組み合わされたこの古いターボディーゼルのパフォーマンスも、なかなかどうして素晴らしいものだった。実は今回のドライブにおいて、ハードウェア面で最も好感が持てた部分である。同じエンジンを積むシトロエン『C4』を2年ほど前にテストドライブし、本サイトで900km試乗記をお届けしたときも、予想を大きく上回る活発さに驚いたのだが、その印象のままという感じであった。

良かった点として印象に強く残ったのは、尿素SCR方式であることも手伝ってか、スロットルレスポンスと回転上がり感が優れていたこと。まず、スロットルを踏んでから駆動力が増すまでのタイムラグが非常に小さい。そのパワーの立ち上がりもいきなりドーンでもなければもっさりでもなく、ふわっと即座に立ち上がるという感じであった。

パワーが立ち上がってから回転が上昇していくときのパワーの湧き上がり方がいいのはもうひとつの美点。低速域で駆動力がぐわっと盛り上がった後、だらだらと回転上昇するようなディーゼルフィールではなく、4000rpmくらいまで回転上昇に合わせてパワーが増え、車速が伸びやかに積み増されていくような伸びやかな加速感を提供した。

アイシン製6速ATもすでに使用実績の長いユニットだが、ロックアップ領域が広く、エンジンの切れ味を生かすセッティングで好感が持てた。フィールが良いのはロングツーリング時で、Dレンジに任せたドライブでのシフトプログラムは適切、マニュアルモードによる手動変速でも操作に対する反応は十分に早かった。ただし、いったんロックアップするとよほどのことがない限りガッチリ締結したままというC4ほどではなく、アクセル開度が大きくなるといったんロックアップをリリースした。

このエンジンフィールと変速機の応答性の良さは、308の運転感覚をスポーティなものにした。エンジンパワー自体は120psにとどまるため、絶対的な速さは177psの2リットルターボディーゼルを積む308GTに大敗するであろうが、遅いという感じは全然なかった。追い越しに躊躇ようなことはまったくなく、山岳路における加減速のリズミカルさも十分に素晴らしかった。世界の先進国と比較して、とりわけ一般道の制限速度がブッチギリに遅い日本では、1.6リットルで何の不足があろうかというのが正直な思いだった。

ロングランで活きる燃費性能

続いて燃費情報だが、ロングランでは十分に良い数値であった。JC08モード燃費は21km/リットルにすぎないが、その数値を下回ったのは大半が短距離の市街地走行であった鹿児島での1区間のみで、あとは常時、それより良いスコアで推移した。

東京を満タンで出発した後、最初に給油したのは1043km地点の島根県浜田市。過去のドライブ経験で、そこに比較的軽油価格が穏やかな給油所があるのを知っていたからだ。オンボード燃費計の数値は23.2km/リットル、給油量は45.2リットルで、実測燃費は23.1km/リットルであった。ちなみに給油時点では燃料警告灯は未点灯。配管を含まない公称タンク容量だけで52リットルはあり、計器上の航続残表示もちょっと頑張れば下関くらいまでは十分に行けるくらいの数値だったことを考え合わせると、エコランをやらないロングラン時のワンタンク航続距離は1200kmくらいが目安になりそうであった。

次の給油地は浜田から560km走行地点の鹿児島で給油量は23.6リットルで実測燃費23.7km/リットル(燃費計表示23.8km/リットル)。鹿児島市街地のチョイ乗りが7割、高速と郊外路が3割の比率であった鹿児島エリア328kmは一転して燃費ががた落ちし、26.5リットル給油で12.4km/リットル(同12.5km/リットル)。

帰路、鹿児島から南九州自動車道~九州自動車道で熊本北部に向かい、植木インターで下りて後、国道3号線小栗峠経由で福岡南部の広川に達した267km区間は、モノは試しでスポーツモードに入れっぱなしで走ってみた。

欧州車のスポーツモードといえばいきなりクルマのボルテージが急上昇するものが多く、ターボディーゼル車であってもアイドリングストップはなくなり、アイドリング回転数は上昇、クルーズ時も低いギアでエンジン回転数を高い状態に保ち、いつでも臨戦態勢――という感じのものが多い。山岳地帯では制限速度100km/hの一般道ワインディングロードが結構あるので、それもまた実用なのだ。

その点、308のスポーツモードはちゃんとアイドリングストップが効く。中高回転域を多用するというあたりは欧州車らしいが、あまりにもったいないようなときはマニュアルシフトでシフトアップしてやれば、スロットルを深く踏み込むまではその段を保持した。スロットルレスポンスが鋭く気持ちよいという点は、もちろんスポーツモードがいちばんだ。

結果、267kmを走って給油量は11.8リットル。燃費は22.6km/リットル(同23.2km/リットル)であった。もちろん区間ごとに走行条件は違うため単純比較はできないが、走り方から勘案しても、低ギア段を多用しているわりには燃費は大して落ちないという印象であった。

東京~鹿児島までも無給油で行けそう

福岡北部からはエコモードを試してみた。瀬戸内海の島から海を見たりしながら大阪、三重、愛知と進み、渥美半島の伊良湖岬に寄り道の後に浜松で給油。1044km走って給油量は45.4リットル、燃費は23km/リットル(同23.2km/リットル)。使い方にもよるのであろうが、単純にエコモードにしたからといって、大きな効果が得られるわけではなさそうだった。

浜松から沼津の間はエコランにチャレンジしてみた。往路と違って高速は使わず、磐田バイパスに始まり、掛川、日坂、島田金谷、藤枝、静清、由比など、時折市街地を挟みながら100kmあまりにわたって断続的に延びる自動車専用道路群を経由した。エアコンON、エコモードON、マニュアルシフト。

これらのうち、袋井バイパスから藤枝バイパスまでは約35kmにわたって追い越しポイントが1か所もない片側1車線(ちなみに下り線には1か所だけある)で、前にオーバーゲージカーゴやホイールクレーン、過積載気味のトラックなど足の遅いクルマがいると後方が数珠繋ぎになり、ドライバーをイラつかせることで知られている。エコランのさいにはその速度低下はむしろ好都合と考えていたのだが、エコランアタックのときに限って前に遅いクルマがなく、速度を上げて走りたいトラックに煽られる始末。後方をイラつかせながらのエコランはやらない主義なので、どこにいるともわからない先行車に追いつくまで速度を上げ、その後は流れと同じペースで走った。

ところが308の場合、速度が高いことが燃費低下にあまり結びつかなかった。走行抵抗は確実に増えるのだが、夜間のバイパスの流れに乗る速度域だと6速が使えるからだ。袋井の市街路を越えた19km走行地点で33.3km/リットルだった燃費計値は金谷、藤枝などの山越えのさいに一旦30km/リットルラインを割ったが、その後の緩く長い下り坂などで一気に取り返し、静清バイパス終点が近づいてきた頃には35km/リットルラインが見えてきていた。

富士宮の市街地などでの燃料消費を抑えることができれば30km/リットルラインクリアなど余裕。大勝利確実じゃないかと!!前祝い気分でいたのだが、何とこの日は静清バイパスの路線延長工事で由比バイパス西端までが1車線規制となっており、ほんの数kmの通過に30分近くかかる大渋滞。いくらアイドリングストップ付きディーゼルとはいえ、シャクトリムシ走行の連続に対しては無力で、燃費を大幅に落としてしまう。こんなシーンではさすがにストロングハイブリッド最強である。

一気にやる気をなくしてしまったこともあってその後、落ち込んだ燃費を取り返すことができず、124km走行後に沼津に着いたときの燃費計値は27.7km/リットルにとどまった。このエコラン区間を含む浜松から茅ヶ崎までの217km区間の燃費は25.2km(表示25.6km/リットル)。エコランアタックには失敗したが、ディーゼルと元来相性が良くないATであることを考えればまあよしと思える水準。ここまでやらなくとも、ぶっ飛ばさないで走れば東京を出発後、鹿児島は無理でも熊本くらいまでは十分に無給油で到達できそうだった。

ところで308のターボディーゼルは尿素SCRという、尿素還元剤「アドブルー」を使って有害物質であるNOx(窒素酸化物)を分解する排出ガス浄化システムを使っており、これが切れると走行不能になる。インパネにアドブルータンクメーターはないため、今回のドライブでは何リットル使ったかわからないが、308の場合、おおむね1200kmで1リットルというのが消費量の目安とのこと。

今回のドライブではちょうど3リットルほど使った計算になる。そのアドブルーをドライブ途中、大型車も立ち寄れるような規模の大きいガソリンスタンドでたまたま見かけた。価格は10リットルで約1200円ほどで、今日においては入手性は悪くなさそうだった。

リラックスできる室内、ただ遮音性にはもう一工夫

次にロングツーリング時の居住感。過ごす時間の割合が断然高かったドライバーズシートは、タイトすぎずルーズすぎずで、リラックスできる形状。208と同様、脇から上のホールドが弱いため横G耐性は高くないが、座面のサイドサポートはしっかりしており、爽快に流す程度であれば問題はない。

長時間走行時の疲労耐性はトップランナーに比べるとやや落ちるが不満を感じるほどでもない。シートの身体への当たりが柔らかであるため、超長距離でなければむしろ好ましく感じられるかもしれない。右ハンドル化にともなう弱点はペダルレイアウトがかなり左寄りであること。ターゲットはあくまで左ハンドル市場という仕立てのようで、このへんはグローバル設計を意識したゴルフとは根本的に異なる部分だ。

リアシートは短時間乗っただけだが、ライバルと比べても断然奥行き豊かなラゲッジルームにスペースを食われたとみえて、Cセグメントとしてはニールームがやや狭い。ただし、リアシートバックの背もたれ角が寝すぎていないため、着座姿勢としては足が前にだらしなく投げ出されるような感じになりにくく、ちゃんと座れば長距離でも受忍限度内には収まりそうに感じられた。

インテリアのウィークポイントは収納スペースの少なさ。ドアポケットとグローブボックスを除くと常時使えそうなのは運転席・助手席間のコンソールボックスくらいなのだが、今回乗った車両はそのコンソールボックスにETCカードの読み取り機器が実装されており、使えなかった。救いはドアポケットのサイズが巨大であることで、とりあえず何でもそこに放り込んでおくという使い方をするのであれば問題はない。それで足りなければ車検証や取扱説明書をグローブボックスではなくラゲッジルームに入れておき、グローブボックスを物入れとして活用すればいいだろう。

居住感に関わる項目でひとつ気になったのは、エンジンルームからの遮音性の低さ。アイドリング時、および中低速走行時はディーゼルエンジンのノイズが、今どきのディーゼル車としてはちょっと珍しいくらい大きな音量で侵入してきた。

面白いことに、どうもステアリングコラム下のほうから響いているようだと走行中に左足の甲で内装材の大穴をちょっとふさいでみたら、途端に騒音レベルが激減した。何か部品を付け忘れていたのではないかとプジョージャポンのスタッフにきいてみたが、借りた状態が正しいのだという。

コストダウンでこうなった可能性があるとのことだが、これはいくら何でもつまらない取りこぼしだ。足の甲で穴を覆うだけで効果があるのだから、その気になればオーディオチューンを行うさいなどに使うシンサレートか何かを買ってDIYで対策をすれば、一気に静かになるだろう。

「カジュアルプレミアム」への挑戦を感じるデザイン

デザイン考。308はエキセントリックなデザインエレメントの少ない、きわめてオーソドックスなフォルムを持っている。最近はコンピュータで空力設計をかなりのレベルまでシミュレーションする技術が進んでおり、その影響でシルエットはどのメーカーも同じようにならざるを得ない。308もしかりである。

そのなかで“ちょっといいな”と思ったのはボディカラーの調色である。今回乗った個体は赤塗装であった。欧州車の赤と言えば、同じフランスのルノーが作出した、有色のクリアコートを使って色味に深みを出したという「ルージュフラム(炎の赤)」がなかなかインパクトのある色であった。プジョーの「アルティメット・レッド」はそれより少し明度が高い感じでハイキーな印象を与えるが、景色の中に置いてみると、空の青や夕日の赤など外部の色をかなり美しく映し込むほうであった。他の色も魅力的なものが多く、このこだわりぶりはフランス車の面目躍如といったところだ。

もう一点、フロントグリルは一見目立たないが、クローム光沢仕上げは非常に美しいものであった。プジョーはノンプレミアムだが、このところ、カジュアルプレミアム路線を出そうというトライが時折垣間見られる。こういうジュエリーなイメージをたたえるワンポイントを作るというのは、そのトライとしては常套手段。あとはクルマの中身をそのイメージと合うよう、どれだけ上げていけるかが勝負であろう。

小排気量ディーゼルが選べる貴重な存在

308アリュール BlueHDiはツーリング好きの欧州車ファンにとっては、ライフスタイルへの適合性が高いモデルのひとつと言っていい仕上がりを持っていた。とくに日本市場においては、ノンプレミアムCセグメントハッチバックでターボディーゼルを選べる数少ないモデルのひとつとして貴重な存在と言えよう。希望小売価格299万9000円と、ディーゼルながら300万円を切るのも美味しいポイントか。

ちなみにプジョーの公式サイトを見ると、15万円高で9スピーカーの上級オーディオ、グラストップ、17インチホイールが付く特別仕様車があった。とくにグラストップはヨーロッパっぽい雰囲気が倍増されるので、なかなか美味しいのではないかと思われた。

日本でのライバルはCセグメントモデル全般だが、ディーゼルエンジン搭載のライバルとなるとマツダ『アクセラスポーツ 15XD』くらい。価格と安全装備はアクセラスポーツが、ラゲッジルームを含んだトータルパッケージングでは308が優位か。

欧州車ではフォルクスワーゲンがゴルフにターボディーゼルを積むといい競合関係になりそうだが、未確認情報によればゴルフディーゼルを出すとしても1.6リットルではなく2リットルになりそう。将来的には欧州に投入済みの1.5リットル130psターボ+8ATの投入があるかもしれないが、現状でも性能面で不満はなく、当面、小排気量ディーゼルが選べる貴重な存在であり続けるであろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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