鼻をほじっていた自分を叱りつけたい…岩貞るみこ【平成企画】

原稿用紙イメージ (AC)
原稿用紙イメージ (AC)全 3 枚

原稿用紙に鉛筆で書いたものをFAXで送る

物書きしている人の全員が思っているのは、原稿のやりとりの変化でしょうね。私がこの仕事をはじめたときは、原稿用紙に鉛筆で書いたものをFAXで送るという作業だったもの。写真のわきにつけるキャプションは、キャプション用の原稿用紙が別にあり、どこの編集部でも出版社名や雑誌名を入れ込んだ原稿用紙、作っていましたよね。

それがだんだん、ワープロ→プリントアウト→FAXに。私がフリーランスになったときに購入した留守番電話付きFAXは、おそらく日本初の個人向け製品だと思うけれど、お値段なんと25万円! なのに超低性能! もちろん当時はショルダーフォン(携帯の前の「しもしも~?」のやつ)など買えないので、留守電=仕事依頼なので、留守番電話が低性能っぷりを発揮して録音が途中で切れていると倒れそうになったもんです。
FAXイメージ (AC)FAXイメージ (AC)

原稿料がFAX代に消えてしまう

FAXの低性能ぶりといえば、1995~1997のイタリア留学時代です。これまた、インターネットなど普及していない時代なので、日本との連絡は10円玉(のように公衆電話で使う小銭)を何枚も握りしめて電話ボックスに行くか、郵便局で一枚送るのに1500円もかかるFAXかしかなくて、現代の常時接続タダSkypeは夢のような世界です。

そのFAX。少しはイタリアでも仕事をしていたので、このままでは原稿料がFAX代に消えてしまうと思い、アパートに電話回線導入&FAX機器購入を決行。これで電話とFAXは自由にできるようになったものの、一度あったのは、日本から送られてきた3枚モノのFAXがなぜか4枚だったこと。よく見ると、日本語のFAXのあいだに(そう、最初とか、最後ではなく、あいだ!)、イタリア語のビジネスレターらしき一枚が入り込んでいたんですよ。私のFAXは感熱紙のロールペーパーだったので、四枚分、一枚にぺろーんとFAXから吐き出されてきて、うーん、このイタリア語のFAXの送り主と受け取り主の友好関係が続いていますようにと、祈るしかなかったことを思い出します。

勉強したって、大人になったら使わないんだしさー

さて、平成の30年間のあいだに、自動車業界も変わり、モータージャーナリストとしてやることも大きく変わったように思います。

私がこの仕事を始めた昭和から平成に移る時期は、パワステが女性には重いだの、ルームミラーは助手席ではなく運転席側のサンバイザーにつけろだのと言っていればよかったけれど(あれ? 今も同じか)、衝突安全性を語るようになれば、物理の法則が必要になり、環境を議論するときは化学の知識がいるようになり、ぎゃー! と叫びまくりです。できることなら、高校生のころ物理の授業を聞きながら「こんなもの勉強したって、大人になったら使わないんだしさー」と鼻をほじっていた自分を叱りつけたい。
内閣府SIP-adus『市民ダイアログ』に参加する筆者。左列向かって左端内閣府SIP-adus『市民ダイアログ』に参加する筆者。左列向かって左端

さらに、最近ではコネクテッドで電波だし、自動運転で刑法だの民法だのって、もう無理です! あのさー、私が中学生だったころ、男子がトランジスタラジオ作っているときに、うちら、オムレツ作っていたんですよ? 文部科学省には、時代の流れを読めなかったことについて、猛省をうながしたい(当時の自分の向上心のなさについてはこの際、ふれないでおこう)。だから今、生徒や学生の人には、ほんとに言いたい。勉強できる時期は、すごく恵まれている時間。どんな科目も絶対、大人になって役に立つ可能性があるんだから、とりあえず勉強しとけと。

平成30年間を振り返りながら、人生振り返ってしまった。ええ、いまの私、毎日すごい勢いで死にゆく脳細胞と闘っています。この向上心が、10代のころにあれば、どれだけ人生が違っていたことか。

次の年号がなにになるかわからないけれど、次の年号が終わるときに再びこうして振り返りの原稿依頼をもらったときに、もっと前向きな原稿が書けるようにがんばろうと思います(生きて仕事していることはもちろん、原稿依頼がくると信じている)。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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