【MaaS】自動車を取り込むモビリティの概念、最初は気まぐれ?…森口将之

ヘルシンキ市内 (c) Getty Images
ヘルシンキ市内 (c) Getty Images全 5 枚

ヘルシンキ都市圏の再開発が発端

最近我が国でもしばしば聞くようになったMaaSという言葉。モビリティ・アズ・ア・サービスの略だが、漠然とした表現で実態が掴みきれないという人もいるだろう。そもそもサービスとしてのモビリティなら、既存の鉄道やバス、タクシーもそうである。しかしMaaSと表記すると、それは少し違う意味になる。

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MaaS発祥の地は北欧フィンランドだ。筆者は今年9月、知人の大学教授らとともにフィンランドの首都ヘルシンキに行き、交通通信省とヘルシンキ市役所、その名もMaaSグローバルという会社を訪ねた。その結果、他の多くの人よりも少しだけ、MaaSとは何か、について明確な答えができるかもしれない。

ヘルシンキの人口は約63万人。フィンランド第2の都市であるエスポーや国際空港があるヴァンターなど周辺都市を含めた都市圏人口は約144万人に達する(いずれも2016年1月現在)。ヘルシンキ市だけでも国の人口の1割以上、都市圏人口では25%以上に達する。国の高齢化率が20%であることを含め、日本に通じる部分がある。

ICTを活用して移動手段をシームレスにつなぐ

しかしヘルシンキ市はさらなる成長を目指し、市の郊外にある港湾や鉄道の操車場など4か所で再開発を行っている。再開発地域と市の中心部は、鉄道や路面電車、バスなどで結ばれている。しかし日本の地方の公共交通同様、本数が少ない、乗り換えがあるなどの不満が寄せられていた。

だからといってこの再開発地域に住み働く人の多くがマイカー移動すると、交通渋滞などさまざまな問題が起こることは容易に想像できた。そこでICTを駆使することで、公共交通にマイカー並みの利便性を持たせられないかという研究が始まった。

この研究は2000年代中盤に始まり、2014年のITS会議で概要が発表された。この時使われた言葉がMaaSだった。マイカー以外のすべての移動手段をひとつのサービスとして捉え、ICTを活用してシームレスにつなぐという「概念」だった。MaaSグローバルのホームページMaaSグローバルのホームページ

あらゆるモビリティサービスを定額で利用できるアプリ

2016年にMaaSグローバルが開発・導入したWhimというスマートフォンのアプリが、その具現化と言われている。

日本語に訳すと「気まぐれ」「思いつき」という意味のこのWhim、目的地までの経路を案内するだけでなく、運賃は事前に一括決済し、定額乗り放題のプランも用意した。しかも鉄道やバスだけでなく、タクシーや自転車シェア、カーシェア、レンタカーなど、あらゆるモビリティサービスを使って案内を行う。

それまでも我が国のジョルダン乗換案内やナビタイムなど、経路探索を行うアプリはあった。ウーバーに代表されるライドシェアは事前決済も実用化しており、近年は我が国のタクシーでも同様のサービス始めた。しかし定額制というのはモビリティシーンでは例がない。Whimの革新性はここにあったと言える。

そのMaaS、日本では鉄道事業者だけでなく、自動車業界でも話題になることが多い。前者ではJR東日本と東急電鉄が2019年に伊豆で「観光型MaaS」の実証実験を行うと発表しており、後者ではMaaSと称していないものの、トヨタ自動車が西日本鉄道と組んで福岡市でマルチモーダルアプリ「my route」の実証実験を11月から始めた。WhimアプリWhimアプリ

人とクルマの付き合い方が多様化、MaaSに取り込まれる

マイカー以外と定義されるMaaSに、なぜ自動車業界が注目しているのか。それはやはり、マイカー対抗という立ち位置が大きいだろう。

マイカーとは自動車を作って売るというビジネススタイルに基づく。しかしこのスタイルは、地球環境悪化などさまざまな問題の要因になったことも事実である。一方でカーシェアやライドシェアなどの登場で、人とクルマの付き合い方は多様化している。それらがMaaSに取り込まれつつある。

たしかにMaaSが一般的になればマイカー需要は減っていくかもしれないけれど、それを阻止しようとMaaSに対抗するのではなく、カーシェアやライドシェア、タクシーによって関わりを持ち、アプリも自ら開発することで、競争から共存へシフトしていくのではないかと見ている。

ではユーザーはMaaSとどう付き合うべきか。ひとりひとりがMaaS的、つまり多種多様なモビリティをシームレスにつなぎ合わせる考えを持つことが主流になりそうだ。マイカーの出番は今より少なくなる可能性が高そうだが、裏返して言えばマイカーは趣味的要素が強い乗り物になっていくかもしれない。

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。また自動車以外の交通事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《森口将之》

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